表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/56

第十一話

「だっ大丈夫? 要くん!」

「何だ…これ」

「ど、どうしたの? 誰か呼んでこようか?」

 立ち上がれない。立ち上がれないどころか、このままだと地面に突っ伏してしまいそうな感じ。

 ヤバイ。

 かなりヤバイ。

「こんなところで、何やってんの?」

 後ろから声がかけられたが、振り返られないし声も出なかった。

「あっ、八潮路(やしおじ)くん」

「あれ? もしかして船迫(ふなさこ)?」

 八潮路と呼ばれたそいつは、おれの右腕を(つか)まえて引っ張りながら立ち上がらせてくれる。有難い。

 ふっと身体が軽くなって、俺は振り返った。

「サンキュー。助かった」

「ん…」

 かなり驚いた様子で、そいつが俺を見つめてるのに気づいたのか、鳶沢(とびさわ)(あわ)てた様に(しゃべ)りだした。

「あ、あのね。要くん記憶喪失なんだって、ほら何週間か入院してたでしょう? それで、えっと」

「記憶喪失?」

「うん、まあね。ところで名前教えてもらえる? 全然覚えてないもんで」

「オレは八潮路やしおじ都雅とが。同じクラス」

 そう言って右手を出してきた。握手(あくしゅ)を交わして俺は八潮路を見上げた。

 俺よりかなり背が高い。

 髪が要や鳶沢と違って染められていて、ミルクティーの様な色だった。

 鳶沢と見比べると、ものすごく正反対な感じ。

 鳶沢は随分と可愛いイメージだし真面目っぽい。それに対して、八潮路はずっと大人っぽいけど、何ていうか上手くつかめない感じ。どちらかといえば硬派に近いかな。でもトゲトゲしていなくて飄々(ひょうひょう)としている。

 やっぱり制服は着崩してるし、何となく昔の自分を思い出して親近感が湧いた。

「そっか、んじゃ友達になってくれない? どうせ前の友達覚えて無いし」

「友達…」

 鳶沢が今まで以上に目をまん丸にして、口を大きくあんぐりと開けた。

「か、要くん……ぼ、僕びっくり…」

「あ?」

 鳶沢の方に顔を向けると、目を瞬かせている。

 顔の向きを元に戻すと、八潮路は考え込むようにして、眉を寄せていた。

「オレでいいのかな? 知らないだろうから言っておくけど、オレは結構アウトローでアウトサイダーなわけで」

 腕を組みながら八潮路はそう言って、俺の答えを待っていた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ