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第十話

「かっ要くーん…どっどっどーしよう!」

「何が?」

「何がって…」

「行こうぜ。遅れる」

「要くん…君…本当に変わったね」

 目を丸くしながら鳶沢が言ったので、俺は笑い出すのを堪えながら歩き続ける。

「ところで、あいつは誰」

「ああ…彼は箱柳はこやなぎ しゅう。君のお母さんが付き合うようにって、言ってた一人かな」

「あんなのと?」

俺の言葉にとうとう蔦沢は笑い出す。一頻ひとしきり笑った後、涙を指で拭きつつ何とか笑いを治めた。

「う、うん。箱柳君のお父さんが代議士だから」

「何だか俺のお袋もヘンなこと言うよなぁ。あれが上流階級の人間か?」

「箱柳君のお父さんは立派な人だよ?」

「親の背中を見て育たなかったんだなぁ……あ! もしかしてさ、あいつの母親も俺のお袋みたいな奴なんじゃないの?」

 蔦沢は苦笑いして、答えなかった。

「ま、いっか。で、この話の流れから行くと、俺はいじめられるのかな?」

随分(ずいぶん)…うれしそうに言うね」

 俺の満面の笑みを見て、蔦沢は不思議そうに目を瞬かせる。

「ほら、校舎裏に来いとかさ。あると思う?」

「さ、さぁ…分からないけど…」

 呼び出された時のことを考えてにんまりと笑ってしまう。

 楽しみ楽しみ。

「何だか…要くんワイルドになったね…」

「ワイルドぉ? ふーん…これでワイルドって事は要は相当おとなしい奴なんだな…」

「え?」

「あ! いいや何でもない…急ごうぜ」

 もうそろそろ学校に着くはずだったから、ちょっとワクワクして急いだ。

 急な坂が終わって、緩やかな坂に変わる。それを登って(緩やかっていうのが意外と辛い)ようやく校門に着いた。

「鳶沢。鞄、サンキューな。もういいよ」

「あ、うん」

 鳶沢から鞄を受け取って学校敷地に一歩足を踏み入れた途端に、ものすごい重力のようなものを感じて、俺はその場に(ひざ)をついた。

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