表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/56

第一話

この作品はフィクションです。

フワフワと浮いていた。

 それ以外に形容する言葉は無く。

 空を見上げると星が広がり、眼下(がんか)に見えるのは家々の明かり。

 真上から見ると、町ってこんな風に見えるのか…何て考えていた。

 こんなに高いところにいるのに、星にはやっぱり手が届かない。

「そりゃ、そうだ」

 声にだして俺は少し笑った。

 ロマンチックな事を考えてどうするってんだ。

 季節は冬のはずなのに実際、寒さは感じない。息を吐いてみても白くならなかった。

「夢か…はたまた、幽体離脱(ゆうたいりだつ)か?」

「ほぼ正解」

 耳元で声がして、俺は反射的に振り向いた。

「やぁ」

 そこには黒いながらも光っている猫がいた。

「現在、お前さんは(おのれ)の意志に反し(たましい)となって体外離脱中(たいがいりだつちゅう)。元に戻りたかったら、おいらに付いて来て」

「付いて行きたいのは山々だけど、フワフワして思うように動かないんだけどね」

「えぇ? 仕方ないなぁ…」

 黒猫は人間くさくため息をつくと、俺の服の(えり)をくわえて引っ張った。

「魂でも服着てんだ…」

 俺のつぶやきに、黒猫は一旦引っ張るのを止めて咥えていた襟を離す。

「変なとこに気付く奴だなぁ。魂っていっても色々種類があんのさ。体外離脱する魂ってのは大抵服着てるよ。もちろん、お前さんが裸を想像すれば裸になるかも…、でも今はやめておくれよ? 髪の毛引っ張られたくなかったら」

「それは…嫌だな…」

 想像しそうになって、慌ててバタバタと体を動かした。危ない危ない。

 黒猫は再び襟を咥えて、俺の身体を下へ下へと引っ張っていった。

「レスキュー隊に助けられた人の気分」

「何言ってんだ。ほら、着いたよ」

 俺の身体はまだフワフワと浮いていたが、辺りを見回すとそこは公園だった。

 すべり台なんかはあるけど、ジャングルジムがない。

「ご苦労様、助かったよ」

 もう一人の声がして、浮いたままの俺は顔を動かしてその声の主を見た。

「空を飛ぶのは好きじゃないのに、ごめんね」

青空あおぞらが飛べないんじゃ仕方ないよ」

 青空?

 俺が首を傾げると、黒猫に話し掛けていた黒い服を着た少年が慌てたように、俺の胸元に銀色のシールを貼り付ける。その途端に俺は地面に落ちた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ