そういう態度が一番傷つくんですよ!う〜もう限界かもっっ!
私が足早に荒野の入口に建てられた簡素な事務所に入った。
事務所といっても、掘立小屋だ。
一応屋根があって、壁があって、事務机と簡易の椅子が数個あるだけの物である。
そこに入ると、すでに先客がいた。
相手は顔を泥だらけにした私を見てぎょっとしたように目を剥いたが、それ以上何も言わなかった。
この現場の実質的な指導者である彼は、リーダーと呼ばれていた。
薄茶色の髪と淡いヘーゼルの瞳。
面長な顔は凛と引き締まっていて、鋭い刃を思わせる男前だ。
元々、土木関係の仕事を生業にしていたので、他の者よりも知識も経験もあって、ついでに兄貴肌なのか、この現場で中心的な立場に立っている。
この無口なリーダーにはもう慣れっこだ。
いつも厳つい顔つきで何か言いたそうにこちらを見つめてくるだけ。
まあ、ここにいる人は誰もが彼と同じ態度を取る。
中には露骨に態度に表わしてくる人もいる。
その人達に比べたら、彼はまだマシだ。
元々寡黙な人なのだから。
それでも彼の考えていることは分かる。
どうせ、『女なんかに現場を仕切られたくない』とか思っているのだ。
仕切りたくて仕切ってんじゃないわよ、と言いたいが、それが言えたらこんなに苦労はしない。
「ど、どうかされました?ラズロさん」
気まずさに思わず声をかけたが、彼はいや…と言葉を濁し、私を避けるように事務所を出ていった。
ドアが閉まった瞬間、全身の力が抜け、思わず床に座り込んでしまった。
「もう……何なのよ」
ここの人達に認められたくて頑張っているつもりなのに、自分ばかりが空回りする。
感情が溢れそうになる。
「泣いちゃダメよ、エリオルノ。泣いたらお化粧、落ちちゃうでしょ」
自分を奮い立たせようと笑ってみたが、乾燥した泥の所為か顔が強張って動かない。
運命は本当に意地悪だ。
私をこんな辺境に追いやるだけじゃ飽き足らず、もっと私を孤独に追いこもうとする。
もう演じることが限界だった。
「……もう、ダメかも」
うるっと目頭が熱くなった時――。
体が深く沈んだ。
感覚的な現象ではなく、言葉通り体が地面に向かって落ちていく。
ズンッと体に響く重低音に押し付けられたかのようだ。
ズドォォォォォォォオオオォォォォォォォォォンンンンンン――――――――――。
遅れて聞こえたのは、この世が崩壊したかのような音だった。
その後に細かな震動が響く。
「な、なに?」
何が起きたのか。
私は不安に胸を締め付けられながら、外の様子を窺うように窓の外を見た。
そこには常とは変わらない殺風景が続いている。
「私の思いすごしかしら?それともただの眩暈?」
そんな幻覚を感じるほど、体も限界に近付いているのかな。
自分を取り繕うのも、この広い荒野で屈強な男達が対峙しているのも、もう限界なのは分かっている。
次に口を開けば泣き言しか出てこない気がして、私はぎゅっと唇を噛んだ。
その時、バンっと勢いよく扉が開いた。
「おーちゃん!!大変!!」




