第22話「ゴー・トゥ・ヘル」
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とてもなく高い高層ビルの上階の個室に、レビンの捕獲を命じている中年男性がいた。
そして、手元の資料3枚を眺めていた。
資料を握る手は、血管が浮き出ている。
「キエラという・・、「信代会」の小娘まで・・、消えた・・」
と、男は近くの側近の黒服を睨みつける様に言った。
その眼光に、黒服は怯えている。
資料には、キエラの情報が書かれてある。
もう一枚には、豪の顔写真のある情報。
そして、最後の一枚は九乃助の情報のある資料。
レビン捕獲を失敗して、姿を消した二人の資料を顔つきを鋭くして、男は目を通していた。
「おい・・」
「はっ、はい!!」
中年男性は、黒服に電話を持ってこさせた。
「どちらに、お掛けになるのですか・・?」
と、黒服は聞いた。
「「信代会」に、娘の仕事放棄の責任を取ってもらう・・」
中年の男は、受話器を握る。
そして、「信代会」の電話番号を押した。
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ガタンゴトン・・と、電車の音が聞こえる。
午後3時の夏の日差しは、一層に強くなっていた。
こないだ悲惨なカラオケ大会になった市内の隣の駅は、帰省ラッシュも収まって、利用する人は多くは無い。
その駅の改札口で、竹刀入れを肩にかけた剣道着を着た長髪の男が居た。
男は切符を自動改札機に入れ、ホームに入った。
駅の階段を降りるその姿は、剣道の練習か、試合の帰りに見えた。
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男の目の前に、電車が停止した。
ドアが開くと、男は電車に入った。
「・・」
車両内は、空調が効いている。
時間帯のせいか、人は居なかった。
あたりは、シーンとしている。
そして、剣道着の男は、竹刀入れを肩から下ろした。
竹刀入れからは、男は木刀を出した。
その木刀は、色が黒く、特殊な物であった。
そして、キラリと光った。
「へぇ・・、本当に、そのカッコで来るんだ・・」
と、剣道着の男の左側から足音が近づいてきた。
「ナイフの次は、木刀ですか」
と、近づいてきた足音の方から声がした。
すると、紙飛行機が飛んできた。
紙飛行機は、剣道着の男の足元に落ちた。
「・・」
「その紙飛行機は、お前さんの字だろ」
と、剣道着の男に近づいた者は言った。
静かに、男はその紙飛行機を拾う。
そして、紙飛行機を元の紙に戻した。
紙は、ファックス用紙。
そして、その紙には、達筆でこう書かれた。
『明日、午後3時、○○線の電車に来い。レビン・ハチコの居場所を吐いてもらう。私は袴を着て待つ』
この文を書いたのは、剣道着の男であった。
そして、このファックスを受け取り、今、男の近くに居るのは九乃助。
「・・」
剣道着の男は、九乃助の方を向いた。
男は、左手に木刀を構えていた。
「電車ん中で、やろうてのか・・」
と言いながら、九乃助は右手を吊り革に置いた。
「もちろん・・」
と言って、男は言った。
それを聞いて、九乃助はこの車両に人が乗ってないか再確認した。
「貴様・・、信代会か・・」
「・・」
と、九乃助は聞いた。
「もちろんだ・・」
「・・」
男は、信代会だと答え時に、九乃助の顔は曇った。
その瞬間、剣道着の男は左手の木刀を動かした。
ブン!!
左手に握られた木刀は、右手で鞘から抜くように弧を描いて左手から出現した。
その左手から抜いた木刀の速さは、半端ではなかった。
木刀は、吊り革を握った右腕でがら空きの右腹に目掛けて放たれた。
男は、剣道経験者。
そのせいあっての木刀の速さは、肉眼では見えなかった。
それに、木刀は竹刀より空気の抵抗がない。
だから、振りやすかった。
以上のことがあって、九乃助のがら空きの右腹に木刀が迫る。
「・・!」
男は、木刀に手ごたえを感じた。
妙だ。
木刀が動かせない。
しかも、感触が違う。
木刀は、九乃助の右腹に・・。
「俺の中学の先生の方が、早かったぞ・・」
男は、目を疑った。
九乃助の右腕は、吊り革に。
だが、左手は振った木刀を握っていた。
あの早さでの木刀をキャッチされた。
当然、右腹には当たっていない。
「くっ!」
男は動じた。
だが、木刀は動かない。
「ちなみに、俺、中学時代・・、剣道部・・」
九乃助は、そんなことを言いながら、木刀を握る手に力を込めた。
メキメキと、木刀から音がする。
まるで、枯れ枝を折るようにして、九乃助の左手に力が入った。
「ふん!」
ベキ!と音を立てて、木刀が折れた。
「貴様ぁああ!!」
剣道着の男が、激昂して木刀を手から離した。
そして、九乃助に殴りかかっていた。
だが・・。
「ぐぉ!!」
男は自分の拳が届く前に、腹を蹴られた。
その蹴りは、いつもより勢いがある。
そして、勢いで後ろに吹っ飛んだ。
車両のドアに背中を激突。
「くぅ・・」
男は、ドアにもたれた。
蹴られた腹の激痛が凄かった。
もうまともには、戦えないのは目に見えていた。
九乃助は、男の近くに迫った。
「おい・・、他にも信代会は攻めて来るのか・・?」
と、九乃助は男に聞いた。
眼光を鋭くして。
男は腹を蹴られて、呼吸が乱れていた。
「ああ・・、貴様だけじゃなく・・、裏切り者にもな・・」
それは、キエラか、豪のことであった。
男は、弱々しい。
ガタンゴトンと、電車はまだ動いている。
そろそろ駅に近づく。
「焼野原・・」
男は、言葉切れ切れに声を出した。
電車にブレーキが掛かった。
慣性の力が、二人の体にのしかかる。
「レビンという小娘を明け渡した方が、楽だぞ・・」
その男は言った。
電車が駅に到着。
そして、ドアが開いた。
九乃助は、男に背を向けてドアの方に歩み寄った。
「レビンを渡すくらいなら、信代会やら、黒服やら、追ってくる奴らをブッ潰した方が楽だ・・」
顔だけ、振り返って男を九乃助は睨みつけた。
その眼光の鋭さと、気迫が男を襲う。
「ひっ!!」
その顔つきに、男は恐怖した。
ガタン!!
電車のドアが閉まった。
閉まったと同時に、九乃助の姿は消えた。
ガタンゴトン・・と、電車の音が聞こえる。
また、電車は時間通りに動き始めた。
時間通りに動いてるだけあって、乗っている人間のことは考えていなかった。
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作者ページのメッセージの返信の機能が、ちょっと出来ないため、この場を借りて、私的な返信です。
このような使い方ではないでしょうがお許しを・・。
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8月10日メッセージの返信
「どうも、自分の作品をここまで評価していただき、本当にありがとうございます。
作品を書くに当たって、とても励みになっています。
「フリーナイン」は、他の作家様の作品に比べると、特徴が薄く、自分の文章力と発想の未熟さで際立たない作品です。
しかし、このように支持されて、本当に嬉しく思います。
期待を裏切らぬように、作品共々、精進していきますので、今後ともよろしくお願いします。
では、長くなりましたが、以上です。
本当に、ありがとうございました。」