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第17話「銀色の夢、紡ぐ雨の調べ(前編)」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「おい、姉ちゃん!!」


ここは、フリーナイン事務所のある都心近くのS県の某市内。

深夜には治安が悪くなることで有名であった。

不良などの高校生やチンピラがうろついていて危険であった。

今日も、午前12時頃に、街中の不良が街中を牛耳っていた。

この不良の3人のターゲットになったのは、夏らしいミニスカートと、長めのコートを着た綺麗な金髪の長髪を後ろに三つ網にしてる綺麗な少女であった。

化粧のCMモデルのように、どこか、気品の高さと美しさだった。


「おい、ちょっと遊ばないか・・」

「へへ・・」


欲望だらけの彼らは、道を歩く彼女を建物の壁際に近づけた。

だが、その彼女の目は怯えるどころか、据わっていた。

そして、どこか冷たかった。

そして、彼女はコートの内ポケットに手をやった。


「おい、警察でも呼ぶってか?」

「無駄だぜ」


彼女の行動を見て、不良がそう言った。

携帯を取るように見えたらしい。

彼らは、だんだんと彼女に近づいて行った。


その時。


「ぐはっ!!」


不良の一人が、激痛の声を上げた。

その声を聞いて、他の二人が後ろを振り返った。

声を上げた不良は、前かがみに倒れていた。


「なにやってんだ、ガキが」


振り返った先には、九乃助が居た。

不良二人は、仲間をやられたので殴りかかってきた。

九乃助は、両腕をポケットから出した。


「おら!!」


九乃助の拳が前に出て、一人を吹っ飛ばした。

そして、その隣にいた者には裏拳を撃ち込めた。

一気に、3人の不良は倒れた。


「・・」


その鮮やかな屠り方を見ても、被害者の彼女は眉ひとつ動かさなかった。

まったく持って、リアクションを取らなかった。


「大丈夫か・・」


女性が苦手な九乃助だが、声をかけた。

だが、まったく声を出さなかったし、頷きもしなかった。


「ここ危険だからな、さっさと帰りな・・」


そう言って、九乃助は去った。


「・・」


彼女は九乃助が去った後、コートに再び、手をやった。

コートの内ポケットから、写真を一枚取り出した。

その写真には、九乃助の顔写真が出てきた。


「焼野原 九乃助・・。フリーナイン代表・・、別名「関東圏の悪夢」・・。噂通りの喧嘩っぷり・・」


そして、その写真を切り裂いて手から離した。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


ここは、高速道の橋の下。

夜なだけあって、車のマフラー音が響いていた。

そんな場所の近くを、九乃助は歩いていた。

ここは、アパートの帰り道には入らないのだが歩いていた。


「・・」


そして、さっきから、後ろに違和感を感じていた。

ムズムズすると言うか、なんと言うか。


「おい、こら・・、俺のストーカーか・・」


と言って、九乃助は歩を止めた。

だが、辺りはマフラーの音しか聞こえない。

そして、九乃助は振り返った。


「!!」


グサッ!!


九乃助が振り返った瞬間、飛んできた何かを手を開いて止めた。

だが、その飛んでくる何かはナイフであった。

それが、手のひらに突き刺さった。


「ぐっ!!」


予想だにしないナイフで、九乃助は動揺した。

手からは、血が出てきた。


「なんの真似だ!!こら!!」


ナイフが、飛んできた方向に向かって叫んだ。

すると、そこから足音が聞こえてきた。

さっきから、背中に感じていた感覚が近づいてくるのが解った。


「・・!!」


橋の影から出てきたのは、さっきのコートを着た少女であった。

手には、小さなナイフを持っていた。

ナイフを投げたのは、彼女であった。

そして、彼女の目は、また据わっていた。


「おめー、映画か、漫画の見すぎでねぇーか!!」


九乃助は、彼女に向かって叫んだ。

すると、彼女は少し反応した。


「レビン・ハチコの捕獲で雇われた・・」

「はぁ!!」


いきなり、そんなことを彼女は言い始めた。

篤元豪と同じように、彼女もあの黒服の集団に雇われていると見た。


「フリーナイン、焼野原 九乃助が邪魔だから殺さない程度に居場所を吐かせろと言われた・・」

「また、レビンの捕獲かい・・。しかも、本格的にヤバイ女だな・・」


今まで、武器を使って来るのはいなかったので、向こうも本気になってきたと思った。


「居場所を言え・・」


そう言って、彼女はナイフをまた構えた。

ナイフを向けられた九乃助の目は冷静だった。

そして、手からナイフを抜いた。

ナイフが小さいのと、刺さったのが中指と人差し指の付け根の間だったので、大したことは無かった。


「その前に、名を名乗れ。無礼だぞ・・」


と言いながら、刺さったナイフを地面に落とした。


「私は、依頼者と親交のある「信代会しんよかい」の・・」

「!!」


「信代会」と単語を聞いて、九乃助は背筋に冷たいものを感じた。

急に、体中に電気が走った。


「キエラ・カトリだ・・」


と自己紹介をした彼女は、ナイフをまた投げてきた。

「信代会」という単語を聞いて驚いてたが、九乃助は体を横に倒して、飛んできたナイフを避けた。

ナイフは、橋の柱にぶつかった。


「信代会だと・・」


その言葉に、九乃助は驚ききっていた。

キエラのコートの裏側には、小型のナイフが多く収納されていた。

そして、そのコートからナイフを抜き取って投げつけてきた。

これを見て、九乃助は、また飛んできたナイフを飛び込み前転するようにかわして行った。


「だから、映画や漫画の見過ぎだって!!!(ジョジョのディオみてーに、ナイフ投げやがって!)」


彼女のコートを見て、そう言った。

とりあえず、彼女のナイフが尽きるまで避けるしかないと思った。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


夜景が綺麗な超高層ビルの上階。

そこは、ビップルームという言葉では足りないくらいの豪華さであった。

その個室で、受話器を握る中年男性が部下と話していた。


「「信代会」の協力を得ました・・」


受話器から、そう聞こえた。


「そうか・・、あのヤクザ組の代表には借りを作ってやったしな・・」


それを聞いた男性は、ワイングラスを揺らした。

うれしそうに、ワインを口に運んだ。


「キエラとかいう小娘が、焼野原に接近しているそうです」


受話器から、また声がした。


「ほう・・、確か、あの組の代表、香取の娘ではないか・・」


それを聞いた男は、さらに笑みを浮かべた。

だが、もうひとつ不安があった。

九乃助は喋られない位、痛めつけられていないかと・・。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「馬鹿か!!てめー!!」


キエラとかいうヤクザの娘は、まだ九乃助にナイフを投げつけていた。

それを、九乃助は避け続けていた。

大きく九乃助は、後ろに飛んだ。

だが、その時。


サッ!!


「なっ!!」


飛んできたナイフが浅くだが、右足のふくらはぎを切った。

それによって、九乃助はバランスを失った。


シュッ!!!


バランスが崩れた瞬間に、ナイフが飛んできた。


「うぉっ!」


体制が崩れたせいで、ナイフは、九乃助の顔面に接近してきた。

避けられそうになかった。


「ぐっ!」


ナイフは、九乃助の顔面に届いた。

そして、九乃助は倒れた。

ナイフが顔面に突き刺さったらしい。


「!」


それに、彼女は少し動揺した。

ナイフを投げた本人だが、そこまでやるのは想定外だったようだ。

だが、九乃助の顔にはナイフが・・。


「しまった・・」


そして、キエラは倒れた九乃助の方に向かった。

だが・・。


「あふねーにゃ、てめーー」

「なっ!!」


なにやら、気の抜けた声が聞こえた。

そして、九乃助は上体を両腕で起こした。

顔面に刺さったと思ったナイフは、九乃助が歯で噛まれていた。

飛んできた瞬間、口を開けて、歯でナイフを止めていた。

ナイフの勢いは、わざと倒れて、勢いを封じたのだった。

そして、ナイフを手で取った。


「バカな・・。歯で止めるなんて・・」


これには、彼女は大きく動揺した。


「動揺するくらいなら、ナイフなんざ投げてんじゃねぇ!!!ガキが!!!」


そう一喝して、九乃助は立ち上がった。

口から取ったナイフは、右手に握られていた。

そして、親指で、手品のスプーンのように円弧に曲げられていた。

キエラという少女は、動揺しはじめた。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

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