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第16話「義兄弟の契り」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


九乃助は、依頼でとある豪邸の外の草むしりをしていた。

その豪邸の面積は広く、その庭も広かった。

日差しが暑い中、九乃助は腰を痛めながら草むしりを終えた。


「ご苦労様です」


と、豪邸の主が庭に来た。

九乃助は、日焼けした肌が痛くて仕方なかった。

そして、主から依頼料を受け取った。


「じゃあ、帰りますんで・・」

「あっ、ちょっと待って」


豪邸の主が、帰り足を止めた。

すると、執事らしき男が発泡スチロールの箱を持ってきた。


「これも受け取ってくださいな」


と、発泡スチロールを受け取った。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


帰宅後、現在の事務所のアパートの九乃助の部屋に、純太とレビン、旧友の武田、豪がいた。

発泡スチロールの中には、たくさんの蟹が入ってた。

テーブルの上に置かれているのは、最高級のタラバガニであった。

それを見て、彼らは驚いた。


「うほっ!!」

「美味しそうー」

「これは、いい酒のつまみだな」


純太、レビン、武田は喜んでいた。


「これも、俺の仕事っぷりのおかげよ・・」


と、九乃助は微笑んだ。

ちなみに、呼んでもいない武田がいるのが気になった。

純太、レビンも思った。

武田は、もう勝手にビールの缶を開けていた。

うわぁ、しばらく、こいつ作中に出るなと3人は思った。

豪の方は、不自然なく部屋にいた。

彼は、九乃助に呼ばれてきた。

レビンの方も来ていいと言ったので、来たのであった。

ここに居ていいのかと思いつつ、彼は居た。


「どうぞ」

「あっ・・、どうも」


と、豪はレビンからビールの缶を受け取った。

こないだまで、捕獲しようと思っていた女の子が近くに居るのだから、少し複雑な気持ちであった。

だが、それ以上に写真で見るより可愛かったので、視線がいろいろな方向に指していた。


「よし、今日は飲むぞ!!」


と、武田が叫んだ。

そうして、武田はさり気なくレビンのコップにビールを注いだ。


「あっ、私、未成年なんで」


と言って、レビンは自分のコップを退けた。


「いいよ、大丈夫だよー。「※よい子のみなさんは、真似しないで下さい」って書いておけば、大丈夫だよー」

「なに言ってるんですか・・」


※よい子のみなさんは、真似しないで下さい。お酒は二十歳から。

一応、書いておいた。


そして、武田の席の隣は、右はレビン、左は純太であった。

武田は、ツンツン!と左の純太の足を突付いた。

純太は、突付かれた足元を見ると、メモの切れ端が置かれてあった。

メモを足元で開いた。

そこには・・。


『レビンちゃんを酔わせるぞ・・。手伝ってくれ・・』


と書かれてあった。

純太は、武田の耳元に顔を近づけた。

九乃助、豪、レビンはもうカニを食べていた。


「(武田さん・・、酔わすって・・)」

「(決まってるだろ・・)」


と、二人でボソボソ話をし始めた。


「(まさか、あんた・・)」

「(手伝ってくれるな?上木 純太君・・)」

「(もちろんです・・。入院生活と、しばらくの出番なし具合で・・、ストレス溜まってたんで・・)」


ここに、義兄弟の契りが結ばれた。

二人の欲望丸出しの作戦が、密かに実行されていた。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


レビンは、コップに注がれたビールを少しだけ口に含んだ。

そして、苦い顔をした。


「駄目だ・・、飲めないです・・」

「無理して、飲まなくてもいいぞ」


と、カニをくわえながら九乃助が言った。

これを聞いた純太は、焦った。

そして、また耳元でのボソボソ話が始まった。


「(やばいっすよ!武田さん!!)」


だが、武田は冷静だった。

目も落ち着いていた。


「(まぁ、見ておれ・・)」


と言って、武田はテーブルの上に、ジュースに近い味付けのチュウハイを出した。

そして、チュウハイをレビンの前に置いた。


「レビンちゃん、これは飲みやすいよー」

「はぁ・・」


と、チュウハイをレビンは受け取った。

それを見て、武田、純太は微笑を浮かべていた。


「レビン、酒飲めねーって言ってるだろうが。無理に飲ませんなや」


と、両手にカニの足を持った九乃助が釘を刺した。

余計なこと言いやがって!!と、武田と純太は顔に青筋を立てた。

そう言われたレビンは、チュウハイを置いた。

これを見て、武田、純太はテレパシーに近い状態でコンタクトを取った。


「(あの九乃助のやろう!!)」

「(武田さん、どうします!!!)」

「(畜生、ピンチだ!!)」


と、思ってたその時。


「別に、チュウハイなら飲みやすいし、キツくないから大丈夫じゃないですか?」


まるで、フォローを入れるように豪が言った。

九乃助は、カニの甲羅を啜っていた。


「合わなかったら、飲まなきゃいいでしょう」

「そうか・・」


九乃助は、飲ませないという意見を丸めた。

レビンも、そう言われて、チュウハイを一口だけ口に含んだ。


「あっ、美味しいです」


と言って、二口目も口に入れた。

どうやら、口に合ったみたいであった。


「(なんと!)」

「(武田さん!!やりましたよ!)」

「(まるで、一流、セリAの選手のようなフォローだ!!)」


それを見た武田、純太は、あまりのナイス・フォローぶりに、豪に感謝した。

純太の隣は、豪だったので耳元に声を掛けた。


「(すまない・・)」


彼の方も、ボソボソ声で返事を返した。


「(気にするな・・。俺も、あなた方と同じ考えだ・・)」


なんと、豪も同じ考えを持っていた。

それを聞いた武田と純太は、心強い味方を得たと喜んだ。

こうして、3人は義兄弟の契りを再び、交わした。

豪というアキバ趣味の男を味方につけて。


こうして、3人は、どんどんチュウハイをレビンに進めた。

九乃助の方は、カニに夢中になっていた。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


レビンは、あまり酒に馴れてなかったせいで、チュウハイ一缶で赤くなってきた。

これを見て、3人はあまりの計画の順調さに喜んだ。

九乃助の方は、カニの甲羅に日本酒を入れて飲んだせいで酔い潰れて眠り込んでいた。

まさしく、この3人には、今までに類を見ない完璧な状況であった。


「くぅ・・」


とうとうレビンは、赤くなって眠り込んだ。

畳の床に、横になってしまった。


「(やっ!)」

「(っつ!)」

「(たぁ!!!!!!)」


武田と、純太は心の中で踊り狂って喜んでいた。

起こさないようにするために、小声で二人は喜びを分かち合った。

だが協力者のはずである豪は、何故か、少しテーションが下がり気味だった。

それをよそに、武田と純太は盛り上がった。


「(武田さん・・)」

「(なんだね・・、純太君)」

「(これからを、なにを・・)」

「(道徳と、この作品は非R指定上のため、触るだけで終わろう)」

「(きゃー、武田さん、ストレートすぎー!)」

「(ん・・!)」


武田は、豪のテーションの低さに気づいた。


「(どうした、篤元殿・・)」

「(あのさ・・、なんか、空しくないですか・・)」

「・・」

「・・」


それを聞いた瞬間、二人は黙り込んだ。

これは、いざ欲しい物を買おうとした時に、本当に買っていいのかな・・?と思う心理である。

基本的に小心者の豪には、こんなことしていいのか?という現実への帰還が起きて来た。

その態度に、武田は切れた。


「馬鹿ヤロウ!!!!!」

「ひっ!!」


大声で、武田は叫んだ。

そして、二人の目の前に、急に立ち上がって演説を始めた。


「ここまで来て、なにを弱気になってるんだ!!」

「いやだって・・」


その気迫に、豪は足が震えた。

更には、純太まで素に戻り始めていた。


「貴様ら!!それでも、日本人か!!俺は一人でも揉むからな!!いいな!!」


いつの間にか、触るから、揉むに変わっていた。

豪と、純太は素でドン引きしていた。

もう目が据わっていた。

しかし、武田はとんでもない誤算をした。


「なにを、揉むって・・?」

「それは、決まってるだろ!!おっ・・、っ・・!?」


高校時代から、聞き慣れた声が背中の方から聞こえた。

その声は、純太でも、豪でも、レビンでもない。


ざわ・・

ざわ・・


武田の背中に、今までにない悪寒が走った。

さっきの大声が、酔いつぶれていた主人公・九乃助の目が覚めさせたのだった。

もう武田の汗は、止まらなかった。

見る見る血の気が引いていた。



バゴッ!!


「ぎゃああああああああああああーーーーーーーー!!!!!!!!!!」


まるで、なにかが凹む鈍い音がしてから、市内に響くほどの武田の絶叫が聞こえた。

その絶叫が気にならずに、レビンは、すやすやと眠り込んでいた。

彼女が眠っている部屋は、地獄絵図と化していた。

だけど、それに気づかずに眠っていた。

その寝顔は、汚れを知らない無邪気な寝顔だった。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

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