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第14話「君が辿り着ける時まで(前編)」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


夜景が綺麗な超高層ビルの上階。

そこは、ビップルームという言葉では足りないくらいの豪華さであった。

市民プールより大きなプールがビルの頂上にあり、個室には多くの美女がいた。

その個室で、受話器を握る中年男性が部下と話していた。


「フリーナインとかいう、チンピラの事務所は引っ越していました・・」

「なんだと・・」


以前、レビンの捕獲を支持した中年の男が、高いビルの窓から夜景を眺めながめていた。

電話を握る手は強かった。


「どうしましょう・・」


そんな弱々しい部下の声が、受話器から聞こえた。

中年の男は、情けなく感じて仕方なかった。


「・・私が、以前、頼んだ私立探偵の篤元豪はどうした」

「奴は、まったく動いていません・・」

「動かせ!!」


中年男性は、煮え切らない部下の態度に激怒して電話を切った。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


私立探偵、篤元 豪(19)の趣味は、アニメ鑑賞であった。

部屋には、アニメDVDと、フィギュア、ゲームソフトで一杯だった。

申しわけない程度に、部屋には筋トレ器具があった。

そして、本日も彼はアニメを見ようとしていた。

HDDで録画してあるのに、彼はリアルタイムで見るのであった。


「よし!」


АM1:30に彼はリモコンを握った。

その瞬間に携帯が鳴った。

だが、無視してアニメを観賞した。

アニメが終わる30分間、ずっと携帯が鳴っていた。


・・30分後・・


やっと、豪は電話に出た。

電話は、非通知だった。

アニメ見てる時間、ずっと雑音のように携帯が鳴ってたので機嫌悪そうに電話に出た。


「おい・・、篤元・・」

「あっ!!」


その声に、豪は背筋を立てた。

声の主は、以前、豪にレビンの捕獲を依頼した者、つまり、あの追っ手の黒服の軍団からだった。

近頃、レビン捕獲の依頼をしなかったので、それを示唆する電話だった

100万円もの大金を前払いされたので、豪は逆らえなかった。

そんなことで、本日、豪はレビン捕獲をすることになった。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


その豪の電話があった日の夕方。

いきなりだが、九乃助は市街の路地裏で、例の黒服に見つかった。

そして、九乃助は黒服に追いかけられていた。

黒服たちは、大人数で九乃助を捕獲しようとしていた。

九乃助を捕獲すれば、レビンの居所が解るからである。

しかも、自分たちの上司の怒りのピークが近かったために必死だった。


路地裏の廃墟に、九乃助を追い詰めた。


「観念するんだな・・、焼野原・・」


と、黒服の一人が廃墟の壁に背を付ける九乃助に迫った。

九乃助の方は、タバコを咥えていた。

随分と、大人数を前にしては余裕の姿であった。


「その人数だけで、この俺を相手にするってことに観念するわ」


と言って、タバコを地面に落として火を踏み消した。

その瞬間に、黒服の大人数が迫ってきた。

九乃助は、迫ってきた黒服の一人の顔面に拳を入れた。

そして、1秒もしないうちに、次の黒服の腹に膝を入れ、その隣にいた者には裏拳を撃ち込めた。

たった一人に、次々と黒服は倒れて行った。

九乃助の方は、一呼吸のうちに、自分の体の一部を武器にして相手を地面に倒しつけた。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


10分もしないうちに、黒服全員が地面に倒れていた。

人数は明らかに多かったが、九乃助は大した怪我もしないでいた。


「ペッ!」


口の中が途中で黒服に殴られたせいか、切れていた。

その血を、九乃助は吐いた。


「・・!」


急に、気配を感じた。

廃墟のビルの入り口から、足音が聞こえてきた。

その足音が、徐々に近づいてきた。


「へぇ・・、さすが「関東圏の悪夢」さんだ・・」


その声が聞こえた。

近づいてくる足音が消えた時に、入り口に、篤元豪の姿が見えた。

九乃助は、豪を目視した。

豪の姿は、上半身裸のボクサーパンツで、手にはテーピングが施されていた。

見て解るほど、彼は本気であった。


「何しに来た・・」

「見て解るだろ・・。こないだの仕返しだ・・」


と、豪はメンチを切った。


「こないだって、電車内(第8話)でのことか?」

「それは忘れろ・・」


あまり触れて欲しくない過去だった。

だんだん、豪は距離を詰めて来た。


「俺と戦え・・」


豪は、そう言った。

目的は、もちろんレビンの捕獲と、自分が駅裏で、九乃助に圧倒されたことへの復讐であった。

だから、今日は本気の姿であった。

高校で、ボクシング部であったが、全国大会の前で先輩と殴り合いの喧嘩を起こしてしまい退学された豪。

そんな彼は、そのことを晴らそうと揉め事を暴力で解決させる仕事を始めた。

だが、九乃助だけが、自分に汚点をつけたのであった。

その汚点を晴らすのが、今だった。


そして、彼は、今、九乃助に拳が届く距離まで間合いを詰めた。

九乃助は、無言で豪を睨みつけた。


「しゅっ!!」


豪の口から、息が吐き出された。

その瞬間、豪の左拳が飛んできた。


「・・!(速い!)」


九乃助は、驚いたが、顔に来る左拳を首を右に傾けて避けた。

だが、今度は右拳が飛んできた。

その速さに、九乃助は対応が遅れた。


バゴッ!!


豪の拳が、九乃助の右頬に入った。


「ぶっ!」


九乃助は、その威力で口から血を吹いた。

しかも、体が拳の方向に傾いた。

その隙を突いて、豪は膝を九乃助の腹に入れた。


「ぐっ!」


もの凄い低い声が、喉から出た。

豪は、その音を聞いて微笑んだ。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

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