第11話「朝が来るたび」
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夏の日差しが、アスファルトを突き刺していた。
建物の多い東京近くのS県の気温は、上昇するばかりであった。
しかも、湿度も高い。
体の体温の調整もままならないこの頃。
最低でもエアコンで除湿しないと危険な日和に、フリーナイン事務所は最悪の事態が起きていた。
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事務所には、熱気と湿気が充満していた。
エアコンでの空調も除湿もされていなかった。
「畜生!!」
九乃助は、椅子に座って机を叩いた。
全身からは、汗が滝のように流れていた。
彼は、パンツだけであった。
「あっつ・・」
ソファーに横たわるレビンも、汗を流しながら団扇を必死に仰いでいた。
しかも、彼女は恥じらいもなく下着姿だった。
それを気にしないのは、九乃助が女性不信だからである。
だが、年頃の少女を下着姿までに至らせるのに理由があった。
エアコンが壊れたのであった。
どうやっても、始動しないし、冷房も出来ない。
電気屋さんに修理を頼んでも、最低でも2日ぐらいはかかると言われた。
だから、今日、彼らは少しでも涼しい思いをする努力をしていたのだった。
だが、夏の日差しは手加減しなかった。
窓を開けても、熱気が差し込んでくるだけ。
窓を閉めたら、蒸し焼きになってしまう状態である。
九乃助は、氷袋で頭を冷やした。
足には、バケツに大量の氷と冷水が入っていた。
「なんて・・、気持ちがいいんだ・・」
まさに、至福の時であった。
・・・30分後・・
氷が解け、いつしか冷水がお湯になっていた。
「WRYYYYYY−−−−!!!」
バケツを投げた。
お湯となった水が、綺麗に飛び散った。
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下着姿のレビンが立ち上がった。
立ち上がると、汗が落ちた。
「どこ行くんだ・・、てめ・・」
「シャワー室です・・。あそこで、冷水浴びてきます・・」
「なにっ!」
と、レビンはシャワールームに向かった。
だが九乃助が、急に立ち上がってシャワー室の前まで走った。
そして、レビンがシャワー室に入るのを拒んだ。
「なにするんですか・・、シャワー浴びるだけです・・」
「俺が、先に浴びる・・」
「はぁ!待ってください!だったら、私の後でして下さい!それと、なんで、私が立ち上がってからなんですか!!」
と、九乃助はレビンのシャワーを横取りしようとし始めた。
暑さでイライラしてたせいか、レビンが珍しく怒り気味であった。
「急に、冷水浴びたくなったんだよ!!こら!!」
エゴ丸出しで、九乃助は論した。
その言葉に、レビンは反抗し始めた。
「エゴですよ、それは!!無理矢理でも、入ります!!」
と、九乃助の体を退けようとし始めた。
「うるせー!!俺の後に入れ!!」
その場を退かない様に、九乃助は力を入れた。
レビンの手には、更に力が入ったが、彼女の力では九乃助は退かせなかった。
「貴様、俺のシビック壊したくせに偉そうだぞ!!」
「っ!!」
レビンは、力を入れるのをやめた。
シビックのサイドブレーキを引かなかったこと罪悪感が残っていたのだった。
彼女はシャワーを浴びるのを諦めた。
「俺の勝ちだ・・」
と、シャワー室に九乃助は向かった。
これで、やっと冷水を浴びられると思った。
その時に、レビンが一言言い放った。
「一緒に入っていいですか・・?」
九乃助のドアノブを持つ手が止まった。
まるで、漫画や深夜帯のアニメのような一言を言い放った。
そんな恥ずかしいことを言った彼女の顔は照れていた。
「いやだよ、バカ。シビック壊したくせに」
その一言で、レビンの照れた顔は青く染まった。
シャワー室のドアが閉まった。
半ば本気で言ってしまった自分の痛さを、レビンは痛感した。
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夕方、少し涼しくなった時間帯であった。
さすがに、二人は下着姿をやめていた。
窓を開ければ、夏の匂いがした。
窓の外は、街中ではあるが、どこか風景になっていた。
「明日には、エアコンが戻ってくるといいですね」
と、レビンが窓から外を眺めて言った。
そう言われて、九乃助は椅子から立ち上がった。
「2日かかるんだぞ・・。戻るわけあるか・・。冷やし中華でも食い行くか・・」
と、しぶしぶ夕食にレビンを誘った。
「はい!」
それに対して、断るなど思わずにレビンは窓を閉めた。
「九乃助さんが、誘うなんて珍しいー。女性不信のくせにー」
「じゃあ、来んな」
「行きます!」
そんなやり取りが、ありつつも二人は事務所を後にした。
九乃助はレビンに対して、どこか丸くなっていた。
あまり、女性のことになると思い出す血まみれの自分を思い出さなくなっていた。
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事務所に戻ると、熱気にまみれていた。
涼しくなったと油断した隙に、サウナになっていた。
「・・」
「・・」
二人は、言葉が出なかった。
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