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第9話「もう泣かないで」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「逃げた、娘の行方は・・」


中年の男が、高いビルの窓から夜景を眺めながら電話に向かって言った。


「フリーナインとかいう、チンピラの事務所です・・」

「わかっているなら、すぐ行動を取れ・・」


プチン・・。


電話は切れた。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「お前という娘は、自分の立場が解っていないのか!!!」


「まったく、あなたって娘は・・」


「あの家の子なのに、なんて出来が悪いんでしょうか・・」

「将来、あの子がお家を継げるのでしょうかね・・」


もう嫌だ・・。

そんなこと言われるの・・。


だから逃げたんだ・・。

家から・・。

国から・・。

日本へ・・。


でも、追いかけてくる・・。

怖い・・。

怖い・・。

助けて・・。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「っ!!」


夏場で暑くて寝苦しかったので、タオルケットに変えて眠っていたレビンが急に目を覚ました。

汗でダラダラだった。

時間は、日曜の朝の6時。

いつも、この時間で悪夢で目が覚めていた。


また、あの夢かと思いつつ、レビンはベッドから立ち上がった。

窓を見てみると、ちょうど朝日が昇っていた。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


汗だらけで、気持ち悪かったのでシャワーを浴びた。

冷水の冷たさで、悪夢の後味が頭から離れて行った。


フリーナインの事務所に来てから、3日に一回のペースで悪夢を見ていた。

そして、そのことを忘れようとして朝は、シャワーを浴びていた。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「あっ!」


事務所に行くと、九乃助が、朝6時にも関わらず起きて新聞を読んでいた。

片手には、わざわざ買い置きしてるマックス・コーヒー。


「珍しいですね・・、この時間帯に起きてるの・・」

「悪いかよ・・」


と、返された。

よく見ると、どこか落ち着きのない様子の九乃助であった。


なにか、いいことがあったのだろうか・・。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


1時間して、身支度を終えた九乃助は無言で外に出て行った。

様子がおかしかった。


珍しく鼻歌を吹かしながら、上機嫌であった。

しかも、軽くステップをしながら。


未だに、レビンは九乃助のことを掴めてはいなかった。

性格というか、キャラクターが解らなかった。


ただ解ってるのは、女性不信であること・・。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


しばらくして、昼すぎであった。


ブォン!ブォン!!


と、しばらくして事務所の外で車のエンジンの音がした。

窓から覗くと、黒いベンツだった。

そして、事務所の前で車が止まった。


カチャッ・・


車のドアが開くと、そこから黒服の男が数人出てきた。


「はっ!まさか、追っ手・・」


直感的にレビンは、自分の追っ手と気づいた。

そして、黒服数人は事務所の中へと来る。

レビンは、どこか隠れる場所を探した。

隠れても、無駄だと解ってはいた。

階段からは、数人の足音が迫って来る。

連れ去られる・・。

と、レビンは覚悟した。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


ブロオオオオーーーーーン!!!!


と、ベンツはマフラーを鳴らした。


「・・」


レビンは、ベンツの中にいた。

周りには、黒服数人。

ちょうど、首都高速に入った。

道路には、ベンツと後ろに白い車や、トラック軍団であった。


サングラスをかけた黒服一人が口を開いた。


「手間を掛けさせるのも、いいかげんにして下さい・・。お嬢様・・」

「よくも、こんな白昼堂々と・・」

「焼野原 九乃助の様子を疑ったら、ちょうどいい頃合いだったので・・」


と、黒服とレビンは会話をした。

レビンは、うな垂れていた。

また、悪夢が現実になると思っていた。

そう考えると、涙がレビンの目から出てきた。


頭には、九乃助の顔が浮かんだ。

九乃助(+純太)には、一応、家に泊めさせてもらったり、優しくしてもらった。

数日間だけだったが、自分の辛い現実から逃げられた。

だから、彼女はせめて別れを言いたかった。

と後悔の念で一杯だった。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


グォオオオオオオオーーーーン!!!


ベンツのスピードが上がった。

妙に、ドライバーが慌てていた。


「どうした?」


黒服の一人が言った。


「さっきから、白い車が後ろから離れないぞ・・」


ドライバーがそう言ったので、後ろを見てみると白い車がいた。

首都高速に入る前から、引っ付いていたのだった。

加速して付いて行く。

しかも、白い車の方が早い。

なのに、引っ付いてくる。


妙だと思ったドライバーは、ベンツを一旦、休憩所に走らせた。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


駐車場に置かれたベンツから、数人の黒服が出てきた。

レビンは、車の中に座らされていた。


キキィ!!


と後ろに、さっきから付いて来る白い車も駐車場で止まっていた。

車は、旧車両の「CR−X」

製造会社独自のエンジンのせいか、それとも、ターボのせいなのか速かった。

ドアが開いた。


黒服は身構えた。


ポイ!!


「!?」


人が出てくると思ったら、布袋3つ投げてきた。

それに、黒服が気をとれた瞬間。


パパパパパァーーーン!!!!!


「うわああああ!!!!!!」


布袋から、大量のロケット花火、ねずみ花火が飛び出してきた。

更には、煙球。

市販の物だったが、量がすざましくCR−Xとベンツが煙で見えなくなった。


「なんだ、これは!!!」

「あの車の主をやれ!!!」


黒服の視界は遮られていた。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


あっという間だった。

花火で視界を遮られCR−Xに気をとられた瞬間に、ベンツにいたレビンは連れ去られた。

しかも、CR−Xは煙と共に消えていた。

犯人は、CR−Xのドライバーであるのは間違いなかった。

その証拠に、ベンツには置き手紙が残っていた。


『舐めるな by フリーナイン』


黒服は、この置手紙を破り捨てた。

駐車場の周りには、さっきの騒ぎで警察が来ていたのでベンツもこの場から去った。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


白いCR−Xが、首都高を戻っるように走っていた。

運転していたのと、レビンを連れ去ったのも、もちろん九乃助であった。

中古だが車の納車があったので、今日は機嫌が良かったのであった。

そして、事務所に戻ったタイミングと、レビンがベンツに乗らされたタイミングが合っていた。

だから、追って、レビンを奪い返せた。


「うぅ・・」


助手席には、レビンは泣きながら座っていた。

九乃助は、その様子を見てハンドルを握っていた。


「泣くな!!うるせぇ!!あと、助けたのは依頼だからだぞ!!」


と、言ってやった。


「助・・、けて・・、くれ、あり・・、がとう・・」


泣きながらだったんで、聞き取りづらい声だった。

精一杯の感謝だった。


「だから、女は・・」


がばっ!


レビンが歓喜あまって、運転中の九乃助に抱きついてきた。

ハンドルがすごい乱れた。


「うぉあ!!バカ!!抱きつくな!!こら!!あと、てめーには、この車もう乗せねぇからな!!!」


と、ハンドル体制を戻しながら事務所に帰って行った。

ちなみ、CR−Xはシビックの代打で購入したのだった。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

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