姉御肌
「ちょっと酷いんじゃない? ユースケ君」
気色ばんだ口振りの女性の声でびくりとする。
「……大石さん、済みませんでした」
振返り慇懃に頭を下げると、大石景子プロデューサーは微笑を浮かべて腕組をして立っていた。
「希ちゃんからの電話やメールも、私からの電話やメールも無視してさ。ギャラはちゃんと払ってるのに」
そういえば大石さんからも電話が掛かって来てたしメールもバンバン送られていたっけ。
「ユースケさん、有給じゃなかったんすか?」
「ナリ君、今は有給の話は良いから……」
訥弁。悪い嘘は所詮バレる。
「何が有給よ。ナリ君、ユースケ君は2回も会議をサボったんだよ。しかも希ちゃんに一方的にメールで「番組を降りる」ってだけ送信してね」
「マジっすか!?」
またあからさまに驚愕するナリ君。目には「あり得ねえ」という言葉が裏打ちされている。
「下平が事務所にまで来て説得されて、自分の我がままだったって気付かされました」
「我がままにも程があるんじゃない? 私が希ちゃんに頼んで<レッドマウンテン>に行って貰ったのよ。ユースケ君は作家のキーパーソンなんだから辞めて貰っちゃ困る。番組はまだ始まったばかりなんだから、心機一転頑張って行こう!」
「はい……済みませんでした」
「そうだったんすか。なら一緒に頑張りましょうよ、ユースケさん!」
大石さんは咎めはしたけど憤慨はしていない。だが、
「本当に済みませんでした」
こういう時の男は駄目だ。女は仁王立ち、男はペコペコ。情けないがこの構図になってしまう訳でして……。
大石景子プロデューサー。こうと決めたら決然とした態度で突進み、現場では常にアットホームな雰囲気作りを心掛けてくれる人。オレ達スタッフにとっては姉御肌な人だ。




