つまらぬ拘りで降板
エンドロールの構成の欄に「中山裕介」の名前はあった。そして忘れられない声のナレーションの欄には、やはり、「早稲田望」という名前……。オレにとっては因縁の相手。見ただけ、聞いただけで虫唾が走る。
「初回にしては、中々面白いコンテンツだったと思うよ。まだ楽観視しちゃ駄目だろうけど、「コケる」心配はいらないんじゃない?」
「そうですかねえ……」
私は彼の顔をじっと見ているけど、彼はテレビを観たまままた座って伸びをしている。こいつ、ガチで降板を考えてるんじゃ……正当な理由もなく降板されたんじゃ、他の作家にもうちの事務所にも悪影響だし、冗談じゃない。
「社長」
「何?」
「この番組の構成、ちょっと再考させて貰っても良いですか」
やっぱりそんな事を口に出しやがった。
「好きにすれば。その代り、スクールの講師に出て」
「好きにすれば」っか。見限られたか? でも「その代わり」……そういやうちの事務所、一階のフロアで放送作家養成スクールも経営してるんだったな。オレは作家の仕事で多忙な為、一回も講師として出た事はない。
番組を降板させるのは許可するけど、後進の指導に当たれ……いや、陣内美貴という人は降板させる気ゼロだな。そういう性質の人じゃないから。社長を見縊ってはならぬ。
それに、仕事を途中で投出すのは放送作家である前に「社会人失格」だという事は自覚している。これでも。
だが、オレの中で『高ネオ STREET』へのボルテージは下がった。やさぐれた作家がいては他のスタッフにも却って迷惑だ。
そう思い、オレは一瞬の思念だけで、「本当に申し訳ないんだけど、今回の新番は降りたい」と下平希プロデューサー殿にメールを送った。
直後から下平からは返信がバンバン届き、スマートフォンのバイブは止まらなかったが、翻意を翻させようとする内容だという事は予測が着くので、既読スルーにしていた。内容も、
『なんでそんなこと急に言い出すんだよ!』
とか案の定の内容だったし。




