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掌編小説集

自殺のやり方

掲載日:2026/02/02

 

 自殺した人に、自殺のやり方を聞きたいと思ってしまう。

 でも本当は、手順なんてどうでもいいのだと、書き出しの一行目で気づく。


 知りたいのは角度でも順番でもなく、

 最後に何を見て、何を考え、

 どの時点で人生そのものが意味を失ったのかという、そこだけで、

 でも意味が消えるとか、感情が爆発するとか、そんな言葉にすると、もう違う。


 実際はもっと汚くて、順番もなくて、

 途中で何度も逆流するみたいに、

 どうでもいい、と思った直後に、

 どうでもよくない、が殴り返して、

 何も感じない、と思った次の瞬間に胸が焼けるほど恥ずかしくなるみたいに、

 空っぽと過剰が同じ場所で同時に起きるような、

 静かでもない、

 激しくもない、

 世界が噛み合わなくて、

 騒がしくて、

 ただ、うるさいような、


 意味が消えたと思ったら、今度は意味が多すぎて、肺が詰まって、

 空気はあるはずなのに、吸おうとすると途中で止まって、

 空白か過剰か、どちらかに振り切れてほしいのに、 残るのは中途半端な圧だけで、

 だから、もう死んだ人を呼び出して、聞いてみたくなる。

 どうやったのかじゃなくて、

 この詰まりが、どこで決定的になったのかを。

 なにを考えて、どこで戻れなくなったのかを。


 きっとあなたは、ぐちゃぐちゃのまま、途中で切れて、

 矛盾したまま、感情が濁ったまま苦しんで、

 言葉にした瞬間に壊れて、整理された瞬間に死ねなくなって。


 僕はもうすぐ死ねる気がする。と思うけれど、

 その「もうすぐ」は、刃物でも、薬でも、崖でもなくて、

 文章の端に浮かぶ、雑な仮定にすぎないのもわかってる。


 本当に死ねる瞬間は、こんなふうに言葉が溢れてこない。

 肺が詰まるほど考えて、圧が逃げ場を失うほど感じて、

 それでもまだ、行を足してしまっている時点で、決定は起きていない。


「そんなんじゃ死ねないよ?」


 その通りだと思う。

 死ぬ人は、ここまで言葉をこねない。

 ここまで迷わない。ここまで、自分の感触を確かめ続けない。


 死ぬ人はここまで言葉が残らないから死ねるんだと思う。


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― 新着の感想 ―
こんにちは やっぱり、死にたいとか消えてしまいたいとか考えたり発言している人って死ねないし、死のうと思った瞬間、本能がストップをかけるし理性があったっりしても、感情が一ミリでも入る隙間があったらもう無…
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