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アウトオブあーかい部! 60話 密会

ここは県内でも有名な部活動強豪校、私立池図女学院。


そんな学院の会議室、現場……いや、部室棟の片隅で日々事件は起こる。



3度の飯より官能小説!池図女学院1年、赤井ひいろ!


趣味はケータイ小説、特筆事項特になし!

同じく1年、青野あさぎ!


面白そうだからなんとなく加入!同じく1年、黄山きはだ!


独り身万歳!自由を謳歌!養護教諭2年生(?)、白久澄河(しろひさすみか)



そんなうら若き乙女の干物4人は、今日も活動実績(アーカイブ)を作るべく、部室に集い小説投稿サイトという名の電子の海へ日常を垂れ流すのであった……。

池図女学院部室棟、あーかい部部室。


……ではなく、とある墓地へときはだは足を運んでいた。




「雨、降りそうだなぁ。」




現在朝の5時30分。日曜日の空は曇天だった。




「……。」




こんな時間に墓地に来る人なんて他にいないだろうと思いつつ、周りを見渡して自分以外に人影がないか確認すると、




「……あ。」




遠目にポツリと、見慣れた背格好の人影を1つ発見した。




「今日も来てる……♪」




きはだは持って来ていた花を目の前の墓標に置くと、




「また後でね♪」




人影のもとへと早足で歩き出した。




「早いねぇ……モーラさん。」


「そっちもね。」




人影はモーラだった。




「親はいないんじゃなかったの?」


「う〜ん、




モーラは『白久家之墓』の墓石に刻まれた名前を一つ一つ指差して確認すると、




「うん!まだいないみたいだね。」


「うわぁ悪趣味。」


「いっつブラックジョーク!なんてね。」


「そんなに親御さん嫌いなの?」


「『元』親。こっちに帰って来てから定期的に生存確認するくらいにはね?」


「……綺麗なお花だね。まるで()みたてみたい。」


「残念でした。それはおばあちゃんのだよ……♪」


「『元』じゃないんだ?」


「……意地悪。」


「とっくに知ってるでしょ?」




きはだは目を瞑って墓石に手を合わせた。




「……ありがとう。」




続けてモーラも、きはだに倣って手を合わせた。






「……さて!じゃあ次、行こっか。」


「うん。」




きはだとモーラはもう一つの墓へと歩き出した。




「モーラさんって律儀だよね。」


「そう?」


「顔も見たことない人のお墓参りに何度も付き合うなんて。」


「その言葉、そっくりそのまま刺さってるぞ〜?」


「フフ。姉妹喧嘩ってそうやるの?」


「こっちはプロだぞ?」


「……だってさ。妬けちゃうよね、




2人は『黄山家之墓』と掘られた墓石の前で足を止めた。




「……琥珀(こはく) ♪」


「いや〜着いた着いた。」


「ちょっとしか歩いてないでしょ……。」


「そうだったそうだった。じゃあ……、」




モーラは目を瞑って手を合わせた。




「……。」




続けてきはだも、モーラに倣って手を合わせた。




「……お姉ちゃんね?お守り貰ったんだ、『安産祈願』のやつ。」


「私があげたんだよ〜?」


「ほんと、迷惑だよね。」


「それ渡した人の前で言う……!?」


「受け取ったのはあさぎちゃんからだからいいの。」


「へ〜いへいっ。」


「わたしに子どもが産まれたら、一緒にお焚き上げするんだって。……煙たかったらごめんね?」


「お、約束守る気なんだ?」


「うん。で、いつかお空の神様(クソったれ)を中指で突っついてやるんだ。『お前に守れなかった約束、わたしは守ったぞ!』って♪」


「うわぁ悪趣味。」


「……これはジョークにしないよ。」


「だってさ琥珀ちゃん。せいぜい応援してやんな?」




モーラはしゃがんで、同意を求めるかのように、墓石に掘られた『黄山琥珀』の文字に語りかけた。




「……綺麗なお花でしょ?()みたてだよ?」


「……見ればわかるよ。」


「……ん?」




墓地の舗装されて乾いた地面が点々と塗れていくのにきはだは気づいた。




「雨……。」


「うわやっば、傘持って




モーラが狼狽えていると、濡れていく地面を見下ろすモーラの影がさらに大きな丸い影に覆われた。




「傘くらい持っとかないと、風邪ひいちゃうよ?」


「いやぁかたじけない……///」


「じゃあ、そろそろ行くね?」




モーラは立ち上がってきはだの傘を持った。




「またね〜琥珀ちゃん。」




2人は墓地を後にし、同じ電車に乗車した。




「なんでついてくるのぉ?」


「帰り道が同じなの!」


「知ってるよぉ。」


「もう何回目かもわかんないくらいご一緒してるもんね〜。」




まだ7時前、日曜の早朝の電車に揺られるものは2人の他にいなかった。




「いやぁ〜、まっさかきはだが『お姉ちゃん』だったとはびっくりだわ〜。」


「もう何回もお話ししてるくせに。……みんなには秘密だよぉ?」


「言ったら?」


「『日曜の早朝にお墓で面白いものが見られるよ〜?』って白ちゃんにPINEする。」


「すみませんでした。」


「まあまあ、仲良くやって行こぉ?」


「……ですな。」


「そういえば、モーラさんはなんで名前変えたんだっけ?」


「……もしかして怒ってる?」


「むしろ感謝してるよぉ?愛しの『琥珀』を名のる不届きものが1人減って。」


「うわぁ悪辣……。」


「いっつブラックジョーク!なんてね。」


「笑えんわっ!」


「ま、名前なんて自由だけどさぁ、家族から逃げ回ってる人が決まった時間に墓参りなんて危険じゃない?」


「そんなんノープロブレムよ。」


「余裕だねぇ……。『元』親御さんに出会(でくわ)したら、とか考えないのぉ?」


「そんときゃ私の逃げ足が火を吹くよ。」


「自信あるんだねぇ。」


「そりゃそうよ!伊達に世界中のお巡りさんと追いかけっこして生還してないもん♪」


「モーラさんって指名手配犯……?」


「いやいやめっそうもございやせん、私はただのアジア人。地元人よりもちょ〜っとだけお巡りさんに好かれる不審者ってだけだよ。」


「日本のお巡りさんも大好きそうだもんねぇ。」


「こっちではまだ絡まれてないからね!?」




誰も乗車してこないのをいいことに2人で談笑していると、電車のアナウンスが目的地への到着を知らせた。




「おっと。もうバイバイの時間かぁ。」


「え?朝ごはん食べてかないの?」


「行くぅ〜♪」




2人の密会はもうちょっと続いた。

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