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ショート×ショート 忘れた恋、覚えている想い

作者: NATA

 悪魔さん悪魔さん私の願いを叶えてください。

 深夜4時44分、私は鏡に向かって唱えた。すると、鏡に映る私が笑う。

「おやこんばんは。どのような願いを?」

 私は願った。

「先輩が好きなんだけど振り向いてもらえる魅力が欲しい」

 悪魔は少し考え出した後、

「それはよく図書室で話す先輩の事ですよね? 顔を良くすればよろしいでしょうか?」

「ええ、そういうこと」

「分かりました」

 そう言って悪魔はぶつぶつ唱えると「はーい終わり」と言う。

「本当に変わったの?」

「ええもちろん。ただ、綺麗になった分、他の男性からも声かけられるかもしれません」

「興味がないからいいわ」

「それとお代として貴方の才能を頂きますね」

「才能? 私にあるの?」

「本人が気付いていないだけで皆さん持っているものですよ」

 悪魔はそう言って鏡から消えた。後に映るのは無表情の私。鏡に映る私に笑顔を振りまく。可愛い。これならいける。私は確信した。

  次の日の放課後、私は図書室に向かった。

 いつも先輩と図書室で読書の感想会をした。先輩は話を聞いてくれた。いつもみたいに笑顔で話を聞いてくれた。しかもそれは最初だけで、段々と来なくなる。1ヶ月もすると来なくなった。

 おかしいと思い、先輩を呼び出した。

「なんで図書室に来ないんですか?」

 すると先輩は、

「昔は君の感想が面白くて、一緒に本を読むのが楽しかった。でも、最近はまるで自分が本を読めることを誇示しているみたいで……そんな話を聞いても、正直あまり楽しくなくなったんだ」

 知的で優しい先輩にここまできつく言われたことにショックで私は泣きたくなった。

 そして家に帰り、鏡の悪魔に文句を言った。

「どうして魅力的になったのに先輩は振り向いてくれないの?」

 悪魔は言った。

「それは貴方の才能に惚れていたんですよ」

「私には才能なんてないじゃない」

「いいえ、読んだものを面白く感動させるのも才能の一つです。よくレビューなどで良い感想があったら買ってしまうでしょ。あれと同じ。貴方の本の感想は先輩の心を動かしていたんです」

 私は愕然とした。私には才能なんてないと思っていた。だから綺麗になれば振り向いてもらえると思っていた。けれど、先輩は私の内面を気に入ってくれて、親しくしてくれていたんだ。

「それならその才能を返して」

「いいですよ。では、今度は恋心を頂きましょう」

 私は少し悩んだ。そうなると先輩への想いが消える。けれど。

「このまま嫌われるよりはいい」

 そう言って悪魔と承諾した。悪魔は何か呪文を唱えると先輩との楽しかった思い出は消えていく。好きだったものや嫌いなもの、そう言った事も消えていた。


 次の日、先輩と会う。

「昨日は言い過ぎた。ごめん。今日は図書室に行くよ」

 私は先輩のどこが好きになったのだろう? 思い出せないのに、心のどこかが温かい気がした。もう一度、先輩と本の話をしたい。

語彙力と表現力の訓練です。

感想頂けると幸いです。


お題

鏡(異世界)×取引

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