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薬師アメリア

読んでいただけて嬉しいです。ありがとうございます。

 アメリアは順調に研究をしていた。警備と営業はギルが責任者で、経理と薬の流通はサンデー商会の薬部門が行ってくれていた。もちろん経理にはきちんと目を通していた。各国の王族が高い薬を買ってくれていた。街に卸しているのは材料は安いが質のいい薬だ。平民にも買える薬をという当初の目的は果たされていた。



ある日レンブラント公爵家から販売の責任者に会いたいと連絡が入った。貴族からの要請を無下にするわけにいかないギルは公爵家に会いに行くことにした。

その前にアメリアに相談をした。

製造者に会わせてくれと言われたらどうするのか対策が必要だったためだ。



レンブラント公爵家と聞いたアメリアはロバートの事を思い出した。連絡が途切れてから何年も会っていない。最後に手紙を出したのは数年も前だ。いつしか返事も来なくなって自分のことは忘れられたと思っていた。きっと秀れた薬のことでも聞きたいのだろう。ロバートなら誘拐とか関係ないだろう。もしも聞かれたら正直に話していいとギルに告げた。



しかし心配性なギルはアメリアの技術を王宮に取られる危険性のことを考えて、よく吟味して返事をすると言った。

「任せるわ、ギルのおかげでここまでのブランドになったんですもの。私は自由に薬が作れればそれで構わないの」

「任せておけよ、悪いようにはしないさ。アメリアの安全が第一だ」



ギルは正装で公爵家を訪れた。出迎えたのは家令だった。応接室に案内され、お茶を出されながら待っていると知性的な若い男性が入って来た。


「お呼びだてして申し訳ない。ロバート、レンブランドだ」


「サンデー商会のギルと申します」


「座ってくれたまえ、今日来てもらったのは君のところが扱っている最高級な薬についてだ。というかその作り手について聞きたいと思ってね。アメリアという若い女性ではないだろうか。彼女とは幼なじみだったが事情があって離れ離れになってしまった。屋敷に寄ったが管財人がいるだけだった。アメリアは元気でいるのだろうか?」


「元気でいますよ。公爵令息様は医学のために留学されたと聞いております。いつしか連絡が取れなくなったので、友達ではなくなったのだと思ったと言っていました」


「彼女にそう思われたのは自業自得だ。医者の道は厳しかった。毎日朝早くから夜遅くまで患者が来るんだ。師匠について勉強しても足りなくて睡眠時間が短くなって手紙を書く余裕すら無くしてしまった。唯一の癒しだったのだが。薬はアメリアが作っているんだね、危害を加えようとか王宮に告げ口しようとか思ってはいないんだ。彼女が元気でさえいてくれればそれでいい。一度でいいから彼女と話がしたいんだが都合を聞いてみてくれないだろうか」



商売柄人をみる目のあるギルは嘘は言っていないと理解した。しかし個人的にアメリア狙いなのではと危機感を抱いた。


「では彼女の意向を聞いて返事を差し上げます。宜しいでしょうか?ではこれで失礼いたします」


公爵家の雰囲気は上品で落ち着いていた。

アメリアに会ってどうしたいのだろう、公爵家に取り込みたいのだろうか。医者だと言っていたし専属の薬師を抱えるのは利益が大きいだろう。

十年会っていない彼女に興味を持たれたか。

しかし彼女の薬は高位貴族の専属にすべきではない。



ギルはモヤモヤとしたこの感情が何かは分かっていたが、伝えるタイミングは計りたいと思っていた。思ったよりも早くなりそうだと覚悟を決めた。



公爵家から帰るとアメリアに会いに行った。メイドにお茶を頼んで喉を潤すと

「公爵令息様がアメリアに会いたいそうだ」

「直球ね、お医者様だから興味があるのかしら」


手紙のことは言ってやらなくても良いと判断した。そんなに親切な男ではない。

「薬について聞きたいのね、公爵家の専属にはならないから安心して。今のままのほうが自由に作れて良いし、ギルとサラには恩を感じているの。大変な時に側にいて背中を押してくれ守ってくれた。今の私があるのはギルとサラのおかげだもの」


「僕たちだって十分に儲けさせて貰ってる。アメリアが恩を感じる必要はない」


「公爵家からの招待ですもの行かないわけにはいかないわね」


「アメリアを磨き上げて驚かせてやろう、サラが張り切るよ。招待に応じる返事を出さないといけないね」


「私が書くわ。今更どんな顔をして会わないといけないのか憂鬱だわ。二週間くらい先だと予定が空くかしら」


「これから毎日お手入れだよお嬢様」


「昔の話よ、忘れたわ」


「何もしなくても可愛いんだ。磨けば更に綺麗になるよ。サンデー商会の広告塔として頑張ろう。見せたくはないけど」


「広告塔はサラがいるわ。私は裏で研究しているのが合っているの」


ギルの最後の方の言葉が聞こえなかったアメリアは憂鬱そうな顔になった。

あの令息にこの顔を見せてやりたいとギルは唇の端を上げた。


アメリアを磨くためにサラは大喜びで準備を整えた。サンデー商会にはエステ部門もありプロを使って毎日磨き上げられたアメリアは驚くばかりに綺麗になった。


アイボリーのデイドレスにダイヤの小さめなイヤリングとネックレスを合わせた。侍女に扮したサラと付き添いのギルが商会の代表として付いていく事になった。



訪問当日になった。アメリアの仕上がりは完璧だった。普段の何倍も綺麗になっていると自分でも思えた。令嬢時代を思い出し少しだけセンチメンタルな気持ちになった。「お父様お母様頑張るから見ていてね」と心のなかで祈りを捧げた。



ギルとサラも

「アメリアって本当に綺麗。良く似合ってる。たまにはそういう。格好もいいわね。ギルどこかの誰かに取られないように頑張らないと」


「アメリア綺麗だよ、佇まいが貴族令嬢って感じだ」


「元貴族令嬢よ。今は研究者だから」


「じゃあ行こうか」


アメリアは長年会っていなかった幼馴染と会うために前を向いた。

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