前世の私達
読んでくださっている皆様、ありがとうございます。感謝しています。
アメリアの前世は重病で余命一年と医師から宣告された女子高生だった。柏木奈々という名前だった。生まれつき病弱だったが高校生活を送るくらいの体力はあると思って生きてきた。でも授業を受けている途中で倒れてしまい救急車で運ばれ入院することになってしまった。
精密検査の結果の後の余命宣告だった。十代の女の子に余命宣告って酷すぎないかこの先生と思ったが、何かの間違いではと両親が言ってくれた。
しかしレントゲンを見せられCTスキャンの映像に影が映っていた。
余命を宣告されたあとはあんまりだと思ったが泣くだけ泣いて諦めたり、もしかしたら何かの間違いではと思う気持ちが交互にやってきてとても辛かった。高校と病院を交代で行き来した。入退院の繰り返しだった。
そんなある日病院の庭を散歩していた時に会ったのが健斗だった。松葉杖をつきながらゆっくり歩いている姿に、思わず羨ましいなと声が出ていたのだとその場で文句を言われた。
「怪我をしているのに何が羨ましいんだ」
「怪我は治るよね、・・・」
「何かの病気なのか?」
「ごめんなさい、何でも無い」
「通院か?俺サッカー部でさ、この間試合に出たんだけど相手のチームの奴に蹴られて転んで骨折して面白くなかったけど、君と知り合えたから良いことにするよ」
健斗は白い歯を見せてニコっと笑った。
「何それ、変な人、私は柏木奈々、高校一年あんまり行けてないけどね」
「俺は澤崎健斗高校二年だ」
健斗は格好良い男の子だった。きっとモテるんだろうな。青春してるんだ。羨ましい。
「君が思っているほどモテないよ、青春もしてない。汗臭いだけだよ」
「人の心が読めるの?」
「声に出てた。部のやつにお前モテるんだろう、いいなって言われるけど、そいつのほうがモテてるからって言い返してる」
「彼女とかもいないの?」
「まだいない、これから君と付き合うと初めての彼女が出来る」
「私なんてやめたほうが良いよ、病気ばかりしていつまで生きられるかわからないもの」
「そんな事言うなよ、諦めたら負けだっていつも監督に言われてるんだ」
この時私は悪魔のささやきに負けたのだと思う。付き合ったら健斗が辛くなるのに、馬鹿だ私は。
人生の最後に恋がしてみたくなったのだ。こんな健康そうなイケメンと。
自分の我儘で人を振り回すなんて罪悪感で潰れそうだけど神様にお願いしたら許してもらえるだろうか。半年だけ恋人になりたいと思った。
なるべく健斗を傷つけない終わり方をしたい。残り一年の内半年を恋のために使いたくなった。
あれから手を繫いでデートもしたし、桜の下で額にキスもしてもらった。同じカップでアイスクリームの食べさせっこもした。夏のお祭りの花火も浴衣を着て見ることが出来た。不思議と健斗と会うときは具合が悪くならなかった。
冬になり初雪が降る頃にはもうアメリカへ行くふりをして別れているはずだったのに、私は危篤になってしまった。綺麗に消えるはずだったのに私の馬鹿・・・
「好きだよ健斗幸せになってね」もう見えなくなったはずの目に健斗が見えたような気がした。
アメリアは嫌にクリアな夢を見たなと思いながら目を覚ました。いつの間にか研究室の机で眠っていたらしい。
あれが前世だとしたらあのまま自分は死んだのだろう。そしてこの世界に生まれ変わった。健斗は初恋の人だった。もっと青春を楽しみたかったが恋をさせてくれた神様に感謝をしなくてはと思う。
この世界に転生していたら嬉しいがそんなに上手くいくとは思えなかった。
健斗が幸せならそれでいいと思うだけに留めた。
◇◇◇
病院の庭で偶然会った奈々はとても可愛い女の子だった。黒髪はストレートでサラサラしてる。肌は透き通るように白い。手も足も細くて目が大きくて日本人形のようだった。俺の高校にはこんな可愛い子はいない。一目惚れだった。
でも病気で彼女とは長く付き合えないらしい。重病で半年したらアメリカに治療に行くと言う。彼女が僕の前からいなくなるのが辛すぎる。絶対諦めないと決めた。
俺は医大を目指すことにした。サッカー選手になるのが夢だったけど今から必死で勉強すれば望みは叶うかもしれない。地頭は悪くはない、やる気が無かっただけだ。アメリカから帰った奈々と生きていきたいと何もわかっていない俺は思ってしまった。
時間がないのでオンラインで医大受験専門の講義を受けることにした。マンツーマンなので無駄がないし、教え方が上手な先生だった。土日に二時間ほどデートを入れた。サッカー部は辞めた。少しでも顔を見て一緒にいる時間を楽しみたかった。パソコンで顔を見て話が出来るようにしたし、会った時は写真を取りまくった。勉強と彼女で俺の人生は変わった。
アメリカで病気の治療が上手くいかなかったら俺はどうするのだろう。考えても仕方のないことは考えないことにしよう。彼女の支えになりたくて医学部を目指している。それだけが真実だ。
それは冬の寒い雪の日だった。
急に奈々が入院した。大分悪いみたいだ。薄っすらと目を開けて「健斗好きだよ」
と言った。この前までカフェに行ったりできていたのに信じられない。
「俺も奈々が好きだから元気になれ。勉強頑張っているぞ」
と言ったら笑った気がした。小さな手を握った。冷たい手だった。
おばさんは泣くのを我慢している。
「今度生まれる時は健康な体で健斗に会いたい。わがままに付き合ってくれてありがとう、会えてよかった。お母さんありがとう、お父さんもありがとう」
目が見えなくなったのかまだ来ていないおじさんにも挨拶をしていた。虫の息だと言うのに気を使うやつだ。
なんとなくこうなる覚悟はしていたが、俺は目の前が真っ暗になった。
これからどうやって生きていけばいいのか分からなくなった。
◇◇◇
アメリアは前世持ちでした。今世は優れた薬師として生まれ変わりました。健斗もこの世界に生まれ変わっているといいですね。前世の健斗のその後はまた出てきますので安心してください。
引き続き読んでいただけると嬉しいです。




