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ロバート・レンブラント

読んでくださってありがとうございます。

 ロバートは母親を亡くした後も母国に残らず、隣国で医学の勉強をすることに決めていた。母親のような重病の患者を治したいと思ったからだ。

葬式の時に駆けつけてくれたアメリアの顔を見たら、一瞬あの長閑な田舎に一緒に帰りたくなってしまった。


あそこには母の思い出があり匂いがある。アメリアとの楽しい思い出も沢山あった。十四才のロバートは唇を噛み締め勉学を選んだ。



アメリアとの文通は楽しみだった。心の潤いだった。返事はできるだけ書くようにしていたが、勉強に追われ返事が遅れてしまうようになった。実際に病院に行き実習することになったのだ。朝早くから夜遅くまで患者は途絶えることがなく若いロバートも寮の部屋に帰ると泥のように眠るだけになっていった。



アメリアの泣き顔が夢に出てきた時は後ろめたさで思わずペンを取ったが、今更何を書けばいいのかわからず結局出せないままだった。

この時のことをロバートは何度も後悔することになった。



◇◇◇


六年経ちもう卒業という時に疫病が流行ったのだ。師匠と尊敬していた医師と一緒に治療にあたった。治療しても治療しても疫病は蔓延し死者がたくさん出た。人から人に移ると分かった時点で国と国の人の出入りが止められた。交易も禁止された。


アメリアは大丈夫だろうかと気をもんでも情報が入ってくるわけもなかった。


三年ほど経ちようやく疫病が収まり始めた。国に帰って家族の様子を確かめる為に辞職をしたいと病院長に願いを出していたが、希望が通ったのは一年後だった。沢山人が亡くなり医師も不足をしていた。


◇◇◇


母の葬儀を除き十年間母国に帰っていなかった。

母国発の優良な薬が入り始めたが、その製作者がまさかアメリアだとはこの時のロバートには想像もつかなかった。


家族とアメリアの元気な姿を確認したい、一番の願いはそれだけだった。

薬は母国のサンデー商会から売られていた。医師として帰ったら販売元を訪れてみたいと思っていた。




こうして母国へ帰ったロバートは一番にアメリアの住んでいた町へ行った。

アメリアの屋敷には見知らぬ人間しかいなかった。

「以前ここに住んでいたスタンレイ伯爵家の皆様の事をご存知ありませんか?」


「見も知らない人に言うわけにいきませんよ」


「そこの先に別荘を持っているレンブラント公爵家の者です。以前親しくしていただいたので懐かしくて寄ってみたのですが、ご存知ないでしょうか?」


「公爵家の方でしたか。私は国から派遣された管財人です。伯爵御夫妻は先の疫病で亡くなられました。令嬢が一人残されたので爵位を返上されて今はここにはおられませんよ」



ロバートはアメリアの境遇を聞いて真っ青になった。母の葬儀に駆けつけてくれて、背中を擦ってくれた優しいアメリアに何もしてあげられなかった。きっと無事で生きていると思いたい。あんなに優しくしてもらったのに何も返す事が出来なかった自分が情けなくて拳を握りしめた。



取り敢えず自分の別荘に帰って家族のことを確認しなくてはと踵を返した。

幸い家族は王都にいてロバートの帰りを待っているということだったので、急いで王都に向かうことにした。


ロバートは次男だったが兄が先の疫病の後遺症で脚が悪くなったらしい。

兄を支えなくてはいけないと今後のことを考え始めた。


しかし一番心配なのはアメリアの行方だった。地元の学院を卒業して薬学の勉強をしたいと手紙に書かれていた。真面目だったから優秀な薬師になっているだろう。


だが親御さんが亡くなっている。王宮にでも勤めているのだろうか。まずはそこから探してみよう。ロバートは落ち着かない心を何とか冷静に保とうとした。



王都の公爵家に帰り父と兄に帰還の報告をした。無事だったことを喜び長い間の不在を詫びた。

「父上、兄上長い間好きな勉強をさせていただきありがとうございました。兄上の脚は私に診させてください。執務の手伝いもさせていただきます」


「お前は母上の看病について行ってくれた。感謝している」


「兄上の脚は残念ですが、被害が最小限で済んで良かったです。父上、スタンレイ伯爵夫妻が亡くなられたそうですね。ご令嬢のことはご存知ありませんか?」


「爵位を王家に返上し薬師として生きているらしい。色々心配で探させているが若い令嬢のことだ、下手に動くと面倒事が起きるかもしれないと姿を隠しているのかもしれない」


「何かあって隠れていると?」


「街で小さな薬屋をやっていたようなのだが、安くて良い薬だったために他から狙われていた可能性が高い」


「命の危険を感じて姿を隠しているのでしょうか?」


「その可能性が高い」


「一体どこに行ってしまったのでしょうか、明日その薬屋に行ってみます」


「優秀な店員がいて難しい。外国からも狙われていたようだから」


「母国から高いのですが凄く良い薬が入って来るようになりました。貴重で王族くらいしか買えません。作り手が少ないらしいので幻の薬と言われているのです。あれがあったら母上の病気も治っていたかもしれないと思いました」


「ではやはり令嬢の姿が消えた事と関係があるのだろう」


「アメリア嬢が作っていると思われますか?」


「その可能性が高い」


ロバートは彼女が危険から身を守りたいのと、自由に薬を作りたいので姿を消しているのだろうと考えた。

その一方でどこかの国に囚われていないといいがと心配も首をもたげてきた。

どうか無事でいてくれと心から願った。


ようやくロバートがアメリアのいなくなったことに気が付きました。大勢の敵かもしれない人から隠れているアメリアですが、ロバートと無事に再会が出来るのか楽しみにしていてください。


誤字報告ありがとうございました。訂正しました。


名前を間違えて書いている所がありました。申し訳ありません。訂正しました。

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