表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/16

アメリアとロバート

読んでくださってありがとうございます。


 熱は三日間下がらなかった。大急ぎで呼ばれたお医者様は風邪でしょうと言い、苦い薬を処方されて帰られた。

付きっきりで面倒を見てくれたのはあの日、目を離してしまい今は専属メイドになったヘレンだった。


お母様やお父様は一日に二回様子を見に来てくださった。真っ赤な顔をして苦しそうなアメリアにお母様が

「代わってあげたいわ」

と言って冷たいタオルを額に当ててくださっていたとヘレンに後で聞いた。



ロバート様もお見舞いに来てくださったらしく可愛らしいマーガレットの花束が部屋に飾られていた。メッセージカードに早く良くなりますようにと書かれていた。初めてもらったカードはアメリアの宝物になり、白いマーガレットは押し花になって長くアメリアを楽しませてくれた。



一週間してやっとベッドから降りることを許されたアメリアはお見舞いのお礼をロバートにしたいと思った。

「ヘレン、おみまいのおれいをしたいのだけどなにがいいとおもう?」


「この前が初めてお会いになったばかりですよね、ロバート様のお好みもわかりませんし奥様にお願いをされて有名なお菓子屋さんのクッキーなどはいかがっでしょうか」


「そうね、そうする。おかあさまにおねがいしてくるわ」


「お嬢様、身だしなみを整えますからお座りくださいませ」


「は~い、いっしゅうかんぶりにベッドから出られてうれしいわ」


「お嬢様に何かあれば死んでお詫びをしなくてはと思っておりました。無茶はおやめくださいね」


「わかったわ、おとなしくはならないとおもうけど、かんがえてからこうどうするわ。めいわくをかけてはいけないものね」



両親がお茶を楽しんでいるところへ飛びついて行ったアメリアは母にぎゅうっと抱きついた。

「お父様にもしておくれ」

二人にぎゅうっと抱きしめられたアメリアは幸せで顔が緩みっぱなしだった。


「おかあさまロバートさまにいただいたおみまいのおかえしがしたいのだけどなにがいいかしら」


「家からはちゃんと新しい洋服もお返しするようになっているし、ご挨拶に伺ったけどアメリアからもしたほうが良いわね。良く気がついたわ。今評判のお菓子屋さんのクッキーが良いかしらね。買っておくから先触れを出して伺うようにしたら良いわ」


「おかあさまはきてくださらないの」


「ここのところ、どうしても外せない約束があるの。侍女と護衛は付けるわよ。初めての一人でのお出かけだけどできるかしら」


「まかせておかあさま、ちゃんとできるわ」


「頼もしいわね」



勿論護衛は見えない様に数人は付ける予定だ。アメリアお嬢様の初めてのお出かけなのだ。馬車でわずか十五分だといっても万全の態勢が取られた。途中に歩いている村人も護衛が扮していたし、道端で話をしている御婦人も屋敷のメイドが変装していた。専属メイドの他に戦えるメイドも付けられていた。



馬車が走り出したと思ったらレンブラント公爵家の別荘が見えて来た。別荘と言ってもかなり大きい。スタンレイ伯爵家の半分はあるかもしれない。


門の前でアメリアの護衛が門番に話を通している。直ぐに門が開き玄関からロバートが出てきた。シャツとスラックスというスタイルなのに高貴さのオーラが半端ない。金髪が風にサラサラと吹かれ髪型が崩れても美貌に変わりがない。絵本から出て来た王子様のようだった。



馬車の側に来てエスコートをしてくれた。アメリアは自分はこんなところに来て大丈夫だったのかと帰りたくなったが、何のために来たのかを思い出し

「こんにちは、このまえはおみまいをいただきありがとうございました」

といった。


「ようこそ。今日は庭にお茶の用意がしてあるんだ。君が花が好きだから外のほうが落ち着くかと思ったんだ」


「ありがとうございます。これはおみまいのおれいです」


「今評判の店のクッキーかな、一緒に食べようか」


「わたしもいただいてもいいのですか?」


「もちろんだよ、お茶の用意をさせるから待ってね」



東屋にお茶の用意がしてあった。

ロバートはお持たせのクッキーだけではなく小さく作られたケーキやチョコレートも並べさせていた。テーブルの上はお菓子の甘い香りが漂っていた。



「わあおいしそう」

見るからに嬉しそうな顔をしていたのでロバートは目の前の可愛い女の子から目が離せなくなった。


二人は花やお菓子の話をしながらお茶を楽しんだ。

「君は小さな雑草の様な花が好きなんだよね」


「はい、ばらのようなきれいなはなもすきなんですけど、ちいさな花はながだいすきなの」


「もうあぶない所に行っては駄目だよ。僕も薬草に興味があってね色々勉強しているところなんだ」


「しょくぶつにきょうみがあるところがにてますね」


「そうだね、僕のお母様は身体が弱くて空気のいい田舎ならゆっくり静養が出来るかもしれないと此方へ来たのはこの前話したよね。それで薬草の知識で病気の役に立ちたいと思っているんだ」


「わたしのおはなずきとはすこししちがうわね。おにいちゃまはやさしいのね、きっとおかあさまのぐあいははよくなられるわ。ここはきこうもおんだんでしょくぶつもよくそだつから。きっといいやくそうができるわ」


「そう言って貰えると元気が出るよ。図書室に花の本があるんだ、良かったら見る?」


「はい、ぜひ。いえにもあるんだけど、なんかいもみてしまったのでちがうほんもみたいなとおもっていたのでうれしいです」


「アメリアちゃんは、ずいぶんしっかりしてるんだね。七歳だったよね」


「まわりがおとなばかりだったので、おかしいですか?

ぜんぜんしっかりしていません。かわにおちるくらいですもの」


「それはそうか、これからは僕が友達になるから子供らしく話そうね」


「おともだちなんですね、うれしいです」




二人は顔を見合わせて思わず笑いあった。






大人ばかりの田舎で初めての友だちになった二人です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ