結婚式とお披露目
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結婚式のドレスはサラと義姉が張りきって繊細な真っ白な総レースでアメリアの美しさを女神のように輝かせた。ロバートの衣装も白のタキシードでアメリアはかっこいい新郎に心を鷲掴みにされていた。お互いが見つめ合い時が止まった。やっとロバートが
『綺麗過ぎて言葉が出なかった』
『かっこ良くて目が離せないわ』
と砂糖を吐いている二人を付き添っていたサラが式場に押し込んた。
結婚式は公爵家から公爵と義兄夫婦、アメリア側はサラとギルに見守られ無事に終わった。
この後は公爵家主催の夜会が待っていた。そこで次男の結婚発表が行われる事になっている。
ドレスはロバートの瞳の色の空のような青でアメリアのほっそりとしたスタイルを生かすデザインになっている。青いシルクでスカートの裾部分がペプラムのように広がりグラデーションで段々白くなるようになっていた。
イヤリングとネックレスと指輪はブルーダイヤモンドでロバートの色を全身に纏っている。勿論ロバートがプレゼントしてくれたものだ。
あまりにロバートの色を纏っているので恥ずかしくなってしまったアメリアだったが、サラと義姉が「とても綺麗、これくらい見せつけておかないと駄目なのよ」
と言うのでそんなものかなと思ってしまった。その上ロバートの喜び方が半端なかった。
「アメリアなんて綺麗なんだ。僕の色のドレス良くにあっているよ。これからは青のドレスが増えるね」
と手放しで褒めてくれた。
そういうロバートは白の正装でアメリア瞳の色の金色が襟と袖口に刺繍が施されていた。格好良くなりすぎていて
「ロバートとても素敵」と褒めるのがやっとだった。
公爵が次男夫婦だと二人を紹介して嫡男夫婦の後でダンスを踊った。
二人で公式の場で踊るのは初めてだったがリードがとても上手で踊りやすかった。
「小さい頃以来なのに身体がステップを覚えているものね」
「あれから誰とも踊らなかったの?」
「田舎の学院にいた頃は授業で色々な子と踊ったわ。授業バンザイね」
「あの頃をやり直したい、そいつらが羨ましい」
「自分が隣国に行ったくせに何を言っているのかしら」
アメリアはサラのお陰で心の整理が出来ていた。
三曲続けて踊り周りにアピールが出来た。
二人は公爵とともに主要な貴族に挨拶をして回った。
ロバートは給仕がワインを手渡してきたのでありがたく飲み干した。勿論アメリアは口をつけただけだ。あまりお酒は得意ではなかった。
ロバートが兄夫婦に呼ばれていると聞いたのはその後だった。
客間が用意されておりその一つで待っていると言われたのだ。
兄なら自分の部屋か執務室に呼び出すはずだ。
罠だとわかっていてわざと乗った。
杜撰な計画に飽きれたが、全ての部屋の鍵を持っているロバートは騙されたふりをして付いて行くことにした。
アメリアはミズリーに任せてある。心配そうな顔の妻に悪い顔を見せてロバートは囮になった。
部屋に入ったとたんに外から鍵が掛けられた。窓際に隣国にいるはずのメイフェアが立っていた。
「さて、どうしてこんなところにいるのかな。修道院に入っていると聞いていたが」
「貴方の事が忘れられなくて逃げて来たの。修道院なんてつまらないの、貴方の顔が見られないんですもの」
「新婚でそのパーティーが今日だ。変なことは言わないでくれ。徹底的に潰さないと分かって貰えないようだ。
それにただ贅沢がしたいだけだろう、死別したご主人からもお金が入ったはずだ。足りなければ金持ちの後妻になれば良かったものを」
「遺産なんて僅かだったわ、すぐになくなった。年寄りなんて嫌、貴方が良いの。ここで私がドレスを引き裂いて叫べば言いわけは出来ないのよ。
貴方は責任を取って私を娶るしかなくなるの。結婚したばかりの奥様は傷つくでしょうね。私のほうが爵位が高いから正妻が私、あちらが第二夫人かしら」
「馬鹿馬鹿しい、最初から杜撰な計画だったのに騙されるとでも思っている所がお粗末だ。此処は私の屋敷だ。全て録画させてある。陛下に届けることにするよ」
「そんな、薬も入れたし私の魅力でなびかないなんて」
「薬なんて直ぐに気がつく。毒の見分け方は必須科目だっただろう、忘れたのか。覚える気もなかったか。魅力なんて何処にある、気持ちが悪い。卑怯な性格に誰も惚れるわけがない。影、護衛を呼んでこいつをつまみ出せ。いや地下牢に閉じ込めておけ」
そう言うとさっさと鍵を開け出て行った。行く先はアメリアのところだ。
「ロバート大丈夫だった?」
「どこから入って来たのか尋問しなくてはいけないが、祝いの席をぶち壊してくれたんだ。今度こそ容赦はしない。手引した者も紛れ込んでいる。徹底的に調べなくてはいけないので、サラと一緒に要塞の方へ帰っていてくれないか。済み次第直ぐに帰るから」
「わかったわ、気を付けて。待ってるから必ず帰ってきてね」
「今夜からアメリアを愛し尽くすつもりだったのに邪魔ばかりする」
私怨が大いにあるロバートは持てる力を使って隣国に圧力をかけ、サラウンド公爵家を潰すために動き出した。
まずは陛下に録画した物を見てもらった。呆れた陛下に好きにすると良いと許可を頂いた。その上でエリクサーの輸出をサンデー商会に言って止めてもらった。医者の情報網を使い他の輸出先の目星は付けてあった。商会に迷惑はかけられない。
こうして録画を持ち数人の護衛騎士とともに隣国に乗り込んだ。万が一連絡が取れなくなった時のために非常手段の小型通信機も密かに持っていた。相手は父である。公爵家の騎士を動かすにも影を動かすのも父に権限があるからだ。
謁見の申し込みをしてから一週間後に拝謁が許された。
雅やかな応接室に通された。外国の賓客が通される部屋だろうと思われた。護衛二人が後ろに控えている。
陛下が護衛を従えて入って来られた。
「面を上げよ、ロバート、レンブラント医師」
「お懐かしいです、陛下。その後お身体の調子はいかがですか」
「その節は大変世話になった。お陰でこの通り元気にしておる。ところでそなたの国の良質な薬がこの頃輸入できなくなったと聞いたのだが、理由を知らぬか」
「それにはまずこちらの記録画像をご覧くださいませ」
「何とこれは、許しがたいことだ。しかも修道院から逃げ出すとは」
「私の妻は陛下が欲されている薬の製作者でございます。この様な仕打ちをされて、輸出など出来るはずもございません。先の騒ぎの時もきつい処罰を願ったはずでしたが、お聞き入れは無理だったようで失望いたしました」
陛下の後ろの近衛が刀に手をかけたが陛下自身が止めた。
「私の判断で迷惑をかけた。幻の薬と呼ばれるエリクサーを作れる者がそなたの奥方だったとは素晴らしいことだ。私欲だけで仲を引き裂こうなどと汚らわしい。厳正に対処すると約束しよう。一族郎党潰すと約束しよう。違法薬物等、怪しい取引をしているのではないかとこちらでも調べていたところだ。この間は蜥蜴の尻尾切りで目を瞑ったが今度はそうはさせぬ。任せておいてくれ」
「あの女はどういたしましょう、何度も迷惑をかけられました」
「連座で処刑にする」
「ではお任せいたします。薬の再輸出は全部綺麗に片付きましたら商会に連絡をさせます。今までのような数ではなくなるかと思いますが」
「ああ、仕方がないね。がっかりさせたこちらが悪い」
こうして隣国に巻き込まれたロバート誘惑事件は幕を閉じた。
ロバート、相変わらず狙われていますね。でも自分で何とかする事が出来る頼りがいのある男になりました。
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