ライバル登場
読んでいただきありがとうございます。最後の方にライバル?が登場します。
新居が完成した。元々あった屋敷の外壁を綺麗に塗り直したりそれぞれの私室と夫婦の寝室等内部も綺麗にしたので、時間がかかってしまったのだ。ロバートが使用人を吟味し手配をした。公爵家ゆかりの者ばかりなので信用が置ける。
侍女長はロバートの乳母だった侍女が抜擢された。家令は本宅の家令の息子でロバートも幼馴染のような関係だ。婚姻と同時に公爵家が持っていた伯爵になることが決まっていた。医者であることを考慮して領地はない。
料理長も公爵家にいたシェフから選んだ。専属の侍女は以前から仕えているミズリーとマギーだ。
この屋敷から研究室に通うことになっている。今日はアメリアに屋敷を見てもらう日だ。気に入らない所があれば変更させる事も頭に入れてある。
ロバートはアメリアを馬車に乗せ颯爽と新居に案内した。
玄関前に使用人がきちんと並んで出迎えた。全員で十六人なので伯爵家としては規模が小さい方だ。
アメリアの印象を良くするために要塞で着飾らせて来た。貴族のあり方を思い出したアメリアに否やはなかった。使用人に舐められては女主人は務まらないのだから。
と言っても威張り散らす気は毛頭なかったので一人ずつに丁寧に声をかけた。
名前も全員覚えて来た。笑顔を絶やさずロバートのエスコートを受けながら屋敷を見て回った。
内壁はクリーム色で統一されていた。アメリアの私室は薄い桃色の壁紙だった。家具も可愛らしく上品に纏められていた。ロバートの私室は水色の壁紙が使われていた。机とベッドが置いてあった。夫婦の寝室は大きなベッドがその存在を知らしめるように置かれていた。
多分王宮でも使われている高価な物だろう。初夜の事を思うと恥ずかしくなったアメリアだった。
「皆、これからよろしくね」
「はい、奥様、こちらこそよろしくお願いいたします」
奥様と呼ばれてまたまた緊張してしまったアメリアだった。そんな愛しい女性を蕩けるような顔で見ているのがロバートだ。使用人が伯爵家の未来は安泰だと確信した瞬間だった。
「アメリア、どこか変えて欲しいところはない?」
「ないわ、完璧よ。外に植物を植える場所もあるのよね」
「専用の畑も作らせてある。サンルームのようなところも作ったよ」
「素敵だわ、これから見に行きましょう、ね」
上目遣いで見てくるアメリアが可愛すぎる。抱きしめたい。キスしたい。帰りに食事のために高級ホテルを予約してある。
最後までするつもりはないけど、もういい大人だよね僕たち。初めては最高級ホテルが良いよなと煩悩と戦うロバートだった。
アメリアは外の畑とサンルームが気に入ったようでご機嫌だった。薬草は自分で育てる気満々だ。防犯に更に気合を入れないととロバートは気を引き締めた。
下心満載のロバートは帰りに最高級ホテルのレストランでの食事を提案した。
「これから食事に行かないか?予約してあるんだ。たまにはお洒落な場所で食事をするのも楽しいと思うんだよね」
「そうね、予約してあるなら行くわ」
にっこり笑ったアメリアが可愛すぎる。着飾らせた甲斐があった。いつもの格好も勿論可愛いけど、ドレスってふるいつきたくなる魅力があるんだね。綺麗な肌がよくわかるよ。女神のようだ。
使用人達は初めて目にする坊っちゃんのデレデレぶりに目を開いて固まっていた。長年外国に行っていて最近帰って来られたのであまり見かけてはいないが、お屋敷におられる時にはもっとクールな感じだったと思う。
それがこのデレデレっぷりだ。覚悟をしておかないと、砂糖を吐きそうだと一同が確信した。
ロバートは予約してあったレストランにアメリアをエスコートした。
食事を楽しんだ後さあこれから部屋に入ろうという時に声をかけられた。
「ロバート、久しぶりね。会いたかったわ。あなたに助けてほしいの」
あざとさ丸出しの女性が声をかけてきた。
こいつ誰?ああ隣国の公爵令嬢か、確か医学学院にいたような気がする。そんなに話したことはなかったはずだが。何故呼び捨てに?アメリアが真っ青な顔をしてるじゃないか。せっかくいい雰囲気になっていたのに、なんてことをしてくれたんだ。 一瞬で周りの空気が下がった。
「見覚えもないのにいきなり名前呼びなど失礼すぎる。名前を呼ぶ許可を出した覚えはありませんが」
「私よメイフェア・サラウンド。貴方と学院で一緒だったわ。宿直も一緒にしたじゃないの」
「隣国の方でしたか、あの頃は忙しすぎたので同級生の顔も覚えていないんですよ。婚約者と一緒なので失礼します。行こう」
急いでそれだけ言うと取ってあったスイートルームにアメリアを連れて行った。
誤解をしないようにアメリアに話をしなくてはいけない。
「アメリア、さっきの女性とは何でもないからね。向こうが言っていた通り同じ学院にいたかもしれないけど話もしたこともないし親しかったこともないから」
「宿直を一緒にしたって言われてた」
「実習が一緒になったことがあったかもしれないけど覚えていない。母に誓って君に疚しいことは何もない。信じて」
「おばさまに誓って。ないの?」
力なく青ざめたアメリアが消えそうでロバートは思わず抱きしめてキスをした。
「ない。何もない。疚しいことは何もない」
「でもロバート助けてって言ってた」
「助けない、助けたいのはアメリアだけだ」
「本当に?」
「本当だ、愛しているのはアメリア、君だけだ」
アメリアはロバートに抱きしめられて冷たくなった体温が戻ってくるのを感じていた。これが嫉妬、初めてのどろっとした感覚が全身を支配していたのが静かに消えていった。ロバートなんて気安く呼ばないで。触らないで、近寄らないでと思っていた想いが抱きしめられてキスをされ何処かに溶けていった。
深くなっていくキスはアメリアの心と身体を溶かしていった。
ロバートは地位のあるイケメンなので狙われたのでしょう。気になると思われたらブックマークを付けていただけると嬉しいです。