出会い
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春、アメリアは屋敷の裏手の川沿いで珍しい花を見つけた。可愛らしい薄紫の小さな花が咲いていたのだ。屋敷にも花はたくさん植えてあったが見たことのない花だった。侍女が一緒に来ていたのだが水が飲みたいと言って屋敷に取りに行かせたので、側には誰も付いていなかった。
後で調べたら菫という花だった。後で庭師にでも取って来て貰えば良いものをアメリアは自分で取ろうとした。
小さな花だったが案外根を張っていて持って帰るには穴を掘る必要があった。
小さなスコップで少しずつ掘っていき手のひらに乗せたと思った瞬間強風が吹いた。七歳のアメリアはバランスを崩し川に落ちてしまった。川はそんなに深さはなかったが、びっくりしたのと水の冷たさに驚いてアメリアは溺れかけた。
その時川に入って助けてくれたのが見知らぬ男の子だった。その子にとっては足首辺りまでしかない深さだったので余裕で助けることができ幸運だった。
水かさが増している川だったらとても子どもの自分では助けられなかっただろうなと後で安堵した。
女の子はびしょ濡れで大泣きしていた。両腕を掴んで引き寄せたので自分も濡れてしまったが、取り敢えずハンカチを出して顔を拭いてあげるとびっくりして泣き止んだ。
女の子の侍女と自分の護衛が急いでやってくるのが見え男の子は安心した。
真っ青な顔の侍女が
「お嬢様に何かあれば生きてはいられませんでした。本当に良かったです。こんなに濡れてしまって、急いで御屋敷に帰りましょう。そちらのお坊ちゃまがお助けくださったのですね。何と言ってお礼を申しあげたらいいやら、本当に有難うございます。お二人ともこのままでは風邪を引きますので急ぎましょう」
溺れそうになったくせに手にはしっかり花が握られているのを見て男の子は可笑しくなってしまった。
吃驚して動けない女の子を護衛が抱っこして帰ることになった。
屋敷ではタオルで体を拭かれたが風邪をひくといけないとお風呂の用意が素早く整えられた。
女の子の名前はアメリアといった。男の子はバスローブのまま暖かい暖炉のある応接室に通された。
母親だろう
「この度は娘をお助けくださりありがとうございました。どちらのご子息かお名前を教えていただいてもよろしいですか?」
と聞かれたので
「ロバート・レンブラントと言います。僕の服はどうなっているのでしょうか?」
「急いで乾かさせているところです。レンブラント公爵令息様に助けていただけて大変有難かったですわ。助けが遅ければいくら水かさがないといいましても、死んでいたかもしれませんもの。娘はちょっと目を離すとお転婆で困っておりますの。よく言い聞かせておきましたのでどうかお許しくださいませ。
令息様に何かあったらどうやってお詫びをしたらいいのか分からないところでした」
話しているうちにお茶とお菓子が運ばれてきた。味わっている所にさっきの女の子が侍女に付き添われ、うなだれて部屋に入ってきた。
金色の髪は耳の横でうさぎみたいに結ばれていて、ピンクの可愛らしいワンピースに着替えさせられていた。
「さっきはたすけていただいてありがとうございました。アメリア・スタンレイともうします」
「あの花が欲しかったんだね、庭に植えようと思ったの?」
「はい、みたことがなかったのでおにわにうえたらかわいかなと、ついむちゅうにになってしまいました。ごめいわくをおかけしてごめんなさい」
「強風が吹いたからね、川の側は危ないから気をつけてね」
「これからはおとなにたのもうとおもいます。おようふくをぬらしてしまい、もうしわけありませんでした」
「濡れたくらいどうってことはないよ。川に落ちると命を落とすことがあるから気をつけてね」
「はい、きをつけます。おにいちゃまのおなまえをおききしてもいいですか?」
「ロバート・レンブラントだよ」
「レンブラント公爵令息様。このお礼は後ほどきちんとさせていただきます。娘の命の恩人です。何とお礼を申し上げて良いものやら。御屋敷の方へ急いで新しいお着替えを取りにやらせましたのでもう少し待ってやってくださるとありがたいです」
「ちょうど散歩をしていたのです。目の前で溺れている人を放ってはおけませんから。それに水の深さも僕の足首辺りで良かったです。後ろの方に護衛がいましたのでいざとなったら助けてくれると思っていましたので、お気になさらず」
夫人はなんて聡明な令息かしらと感心してしまった。確か令息は次男だったはず、良ければ婿に来てもらいたいと考えた。なので
「アメリア貴方のお部屋で本でも読んでいただいたら良いんじゃないかしら。濡れていたお洋服も乾いたようですし、私達は退出いたしますのでここで着替えていただければと思います。汚れてはいないようでしたが、一度川の水で濡れてしまいました。後で買ってお返ししたいと思います。申し訳ないことでございますがレンブラント公爵令息様宜しいでしょうか」
と言った。
「乾かしてくださっただけで助かりました。買って返すなどとお気を使われないでください。君のお部屋に行っても良いのかな?」
「どうぞごあんないします」
女の子の可愛らしい部屋には熊やうさぎのぬいぐるみが並べてあったり白い机やクローゼットがバランス良く配置されていた。
「女の子の部屋って初めて入ったけど可愛いんだね。でも落ち着くよ、本が多いせいかな。僕の部屋はシンプルだ。ベッドと机と本棚があるんだ。へえー花の本がこんなに沢山、外国語で書いてある。読めるの?」
「えがかかれているのでせつめいぐらいはよめるようになりました」
「もっと普通に話してよ、友達になりたいな」
「あのおおきなおやしきがおにいちゃまのいえなの?」
「母上が病気がちでね、ここのいい空気だったら治るかもしれないって王都の偉いお医者様が言ってくださったので来たんだよ。たまに診察にも来てくださるんだ」
「はやくよくなられるといいですね」
「ありがとう、そうなると良いなと思っているよ」
楽しく話をしている内にロバートの靴と洋服が届けられ着替えて帰る事になった。
「帰る前にアメリアの花畑を見たいな」
とロバートが言うので案内をすることになった。
アメリアの小さな花畑は野に咲く可愛らしい花やお気に入りの草がメインだ。そこにはたんぽぽや白詰草、鈴蘭やデイジーが綺麗に植えられていた。
「ここはわたしのかだんなの。さっきのおはなもここにうえようとおもって、やっととれたとゆだんしてかわにおちてしまいました。おにいちゃまにたすけていただけてよかった。ありがとうございます」
「もうたくさんありがとうを言われたから気にしなくていいよ、友達だろう」
「このへんには子どもがいないのでおにいちゃまにおともだちになってもらえるとうれしいです」
あの時の侍女は目を離した責任を取って辞めようとしたが、アメリアが自分の我儘のせいだからと泣いて頼んだのでそのままアメリア付きになった。
アメリアより八歳年上の子爵家の娘だった。行儀見習いで奉公に来ていたらしいがお嬢様をお守りすると考えを改めたらしい。一生付いて行きますと言われアメリアはもしかしたら悪いことをしたのではないかと、母にこっそり相談した。
母は笑って良いふうに持っていくから心配しない様にアメリアに言った。
その日の夜アメリアは熱を出した。
遂行したつもりで投稿しているのですが思うように書けていないところがあり、手直しをしています。申し訳ありません。