ぎばさ
秋田の人間なので、どうしてもまず秋田となると上の方にギバさんが出てきます。柳葉敏郎さんの事です。人によっては佐々木希なのかもしれませんし、藤あや子って言う人もいるかもしれません。まあ、色々とあると思います。調べたらもっと出てくるだろうし、あ、この人も秋田なんだって言う人もいるんだろうなと思います。でも、とりあえず私は柳葉敏郎さんの事が思い浮かびます。
踊る大捜査線の印象が強いのです。室井さんの印象がどうしても強くあるのです。映画版の第一弾の時とかの印象が強くあるんです。ほじなしがって言ったでしょ。ほじなし。って。
あと、私の一番好きな世にも奇妙な物語の話は、奇数という柳葉敏郎さんの出てた話です。その話は私のイメージの中で、五話中の三つ目の話です。もしかしたら違うかも知れません。調べてみたら、四つ中の三つ目の話の可能性もあります。でも私のイメージの中では、五話中の三つ目の話です。五話中の三つ目。一番印象に残らない話みたいな所にあるイメージです。
でも、今でも覚えてます。
あの話のなんか不思議な感じ。
子供の頃に見た時は当然、意味が分かりませんでした。どうしてここで終わってしまうんだ。と思いました。不可解でした。でも、未だに覚えています。その時の世にもの他の話は一切覚えていません。でも、その話は覚えています。
一生覚えていれたらいいなと思います。
それにおもひでぽろぽろも好きですし。
あと、乱歩Rの白髪鬼のギバさんも良かったよねえ。首絞めてる時のあの狂気の顔。乱歩Rなんかどっかのサブスクで観れないのかなあ。
とにかくそう言う諸々が好きで、柳葉敏郎さんの事を思い出します。そしてそれを思い出すと、ギバちゃんというあの方の愛称みたいなのも思い出します。でも、正直、秋田人の私(世代的なものもあるかもしれない)からしてみると、それは軽すぎる様な気がします。ウィキには他に、ジョニーとか、柳葉リーダーとか、書いてありますけども、どうもピンときません。やっぱりギバちゃんが一番近いです。しかしそれだと軽いので、ギバさんとなります。それで私の中ではギバさんとなっています。
しかし、そうして考えているうちに、己の心の中を吐露しているうちに、他の物まで呼び起こす事があります。まるで儀式の様に、何かを捧げて代わりのものを呼び起こすみたいにです。それに話し出すと、こうして書き出したりすると、これまた他の記憶が呼び起こされるんです。一つを引っ張り上げたら、それの近くにあったものも、一緒に釣り上げられたみたいにです。
そうして色々な事が蘇ると、時々ゲロ吐きそうになることがあります。子供の頃の事を思い出したり、嫌な記憶までついてくる事があるからです。花粉症になっていない人の許容量ってよく、コップから水があふれ出るみたいなイメージが採用されてますけど、あんな感じで。
突然、
ぶわあと。
あふれ出るみたいに。
ギバさんに伴って思い出すのは、ぎばさの事です。ギバさんと字面、語感が似てるからです。
秋田にはぎばさという名称の海藻があります。死んだ父が好きでした。味噌汁に入れて食べるとおいしいらしいです。余所では、これをアカモクという名で呼んでいるらしいです。
子供の頃、偏食が激しかった私は、この不可思議な食べ物を食べることが出来ませんでした。ギバサが出てきて、父がこれを味噌汁に入れて食べているのを見るのもちょっと怖いくらいの感じがありました。
で、
んで、
今年のなろうの夏ホのテーマは、噂です。
「うわさなあ」
噂の事を考えているうちに、脳内に浮気という言葉が出てきました。うわさとうわきって似てるなあ。って思いました。それから、
うわさ→うわき→うきわ→うらわ。
とこれとこれも似てるなあ。と思考が流れました。そして、浦和の後、不意に、
『ぎばさ』
が、出てきました。
ぎばさ。秋田に住んでいた頃にあったなあ。ぎばさ。父親が好きだったなあ。ぎばさ。私は食べた事ないなあ。ぎばさ。ぎばさってギバさんに似てるなあ。
ぎばさ。
「ぎばさなあ」
せっかくだから、ぎばさの話も書けたらいいなあ。
うわさ、うわき、うきわ、うらわ、のあと位にぎばさだったら、別に違和感もないかなあ。
なろうのあらすじの所、Xで表示される所には、
「うわさとぎばさって似てるなと思って書きました」
って書けばいいかなあ。
ぎばさ。
ぎばさなあ。
ぎばさと噂の話なあ。
でもなあ、
食べた事ないんだよなあ。
ぎばさの事を考えるとギバさんの事ばっかり頭に出て来るなあ。
ギバさんはちょっといいですから、今ぎばさなんで。
ぎばさ。
そもそもぎばさがどういうものなのか、私は一切知らないなあ。父が好きだったって言うだけだ。味噌汁に入れて食べてたのを気持ち悪いものを見るみたいに見てた。
それしかない。
私の中に。
ぎばさの事って。
調べてみよう。
ぎばさの事。
そうして私はGoogleにぎばさと入れたのです。検索したのです。
すると、ぎばさが余所ではアカモクと呼ばれているというのがまず出てきました。ぎばさというのはある一定の地域での呼び名の様でした。
そうなんだ。知らなかったなあ。
アカモク。
その他にも、美味しい食べ方などが出てきました。
そしてその何ページ目かに。
ある話が出てきたのです。
秋田県のぎばさについての話。
『秋田県沖では本来、ぎばさ(アカモク)は育成しないのです。秋田の海の環境に適応しないからです。しかし、秋田県北部の柳葉という氏をもつ一族が十年に一度、ある冬の時期にその身を海に捧げることによりぎばさの育成が可能となっているのです』
という。
余りにも荒唐無稽な話。
現代社会とは思えない程の、
その話。
これを書いた人はどういうつもりでこれを書いたのだろう。全然わからない。なんだこれ。
そこから更に掘っていくと、その話は5ちゃんねるなどでも、まことしやかに囁かれており、ある界隈では噂になっているのだという。
うわさ。
噂に。
いやいや、
そんな訳ないだろう。そんな今時、人身御供だなんて。
そう思うと同時に。
私は秋田の県南の生まれなのですが、県北ではそんな事があるのかと、色々あるんだなあ。と。そう思う自分もいて。
それに伴って、
アカモク。
ある記憶が、
赤モク。
ある昔の記憶が蘇った。
就職で千葉に行った際、その職場で、同期の一人にこう言われた。
「東北の人間は雪が降って、家から出れなくなると、暇だから冬場は〇ックスばっかりするんだろ」
って。
そんな訳ないだろうと、その時の私は言った。
でも、
正直、私は秋田の、東北の全部を知ってるわけじゃないから。
むしろ、
何も知らないから。
ただ、
そこで生まれただけだから。
だから、
その時、そう言われて、否定はしたけど、
心に迷いがあった。
そんな訳、無いだろって言った。でも、その心には迷いがあった。
赤モク……。
赤木?
そいつからしてみたら、ちょっとした軽口程度の事だったんだろうと思う。あるいは最初だから、入って間もないから、マウントを取りたかったのかもしれない。自分を優位な立場にしておきたかったのかもしれない。私は愚図でのろまで、馬鹿みたいだったから、
だから、
アカギ。
ああ、
赤城だ。
そういう対象になりやすかったのかもしれない。
赤城って氏だった。
ただ、後々その本人に聞いてみたら、そいつは群馬の出身だった。
群馬じゃん。お前。
赤城もさあ。
群馬で赤城なんて由緒正しいそうだよなあ。
雪降るだろ。群馬も。
あのときの口ぶりは雪降らない地域の人間の口ぶりだった。例えば、まあ、関西方面とかの。
「東北の人間は雪が降って、家から出れなくなると、暇だから冬場は〇ックスばっかりするんだろ」
お前には不釣り合いだな。
お前、
あいつには、
あいつ。あの野郎。群馬だって雪降るだろう。それなのに。
そう考えているうちに憎しみが湧いた。その、そいつに。赤城に。
殺す。
耐えがたいほどの憎しみが湧いた。
殺そう。
殺す。
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す。
「東北の人間は雪が降って、家から出れなくなると、暇だから冬場は〇ックスばっかりするんだろ」
そんなんじゃない。そんな事ない。知らないくせに。何も知らないくせに。
例えば、
秋田の県北の人間は、柳葉って氏の由緒正しい一族は、ぎばさの為に自らの身を捧げている。だから、そんな事ない。
何も知らないくせに何も知らないくせに何も知らないくせに何も知らないくせに何も知らないくせに何も知らないくせに。
あの野郎。くそ野郎。あの糞野郎。
殺してやりたい。
殺してやる。
ネットで調べるとそいつは本名でフェイスブックをやっており、自撮りなんかも上げていた。スノボの写真とかを上げている。
そこからXに飛ぶと、そこにも何枚も写真が上がっていた。それらを見る限り奴は未だに千葉に住んでいるらしかった。
船橋だ。
船橋駅の写真がある。
殺してやろうと思った。
殺さなきゃいけないと思った。
着替えて家を出た。途中、100円ショップで包丁を買った。それからホームセンターに行って、金づちを買った。
あの侮りを撤回させないといけないと思った。
あと、誰も褒めてくれないんだろうなとも思った。でも、仕方ないと思った。それでも頑張らないといけない。頑張らないといけない。頑張ろう。そう思った。
心の中にいるイマジナリー乱歩R白髪鬼を出して。
頑張ろう。
記憶なんて、大抵ろくでもないものだと思います。それに、それを思い出すことも。