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深夜に書いたラブレター効果

作者: むっく

 ※著作人格権、著作財産権、二次著作権等すべての著作権を主張します。

この短編をモチーフにして、長編小説を書こうと思っているので、この短編に依拠したあらゆる作品・二次著作物・アイデアの盗用は禁止します。

『なんで天然水が 2 L パックで売られているか知ってる?』

『答えは、多量に水を飲んでしまうと死んでしまうからさ。』

『すべての食料品のパックの大きさは、一気に消費しても死なない量で決められるんだ。』

『でも、焼酎は 3 L パックのも売ってるよ。そんなの一気に飲んだら、即死だぜ?』

確かにそうだ。世の中はそんなに単純ではない。

『でも、ほらお酒は、大量に飲むと急性アルコール中毒になるって、毎年ニュースで流しているじゃない。危険性を十分に知らせておけば、大きなパックを販売してもよいルールになっているんだ。』

『例外があるなんてルールおかしいじゃん、そんなの嘘だよ。それより、おまえ馬鹿じゃないの?』



『昨日のお酒の話だけど、なんで昔、禁酒法があったか知ってる?』

『お酒を飲みすぎて、アルコール中毒になる人が、続出したからだろう。そんなのネットで調べれば書いてあるだろ。』

『いや、確かにそうなんだけど、本当のことは、どこを調べても書いていないんだ。僕たちの知っている歴史や常識の肝心な本当のことは、すべて隠されているんだ。』

『お前、馬鹿確定。幼稚園に行ってウンチでもしてろよ。』



『株式のチャートで、ボリンジャーバンドの 2 σ 内で株価が動く理由は、ボリンジャーバンドの理論が正しいのではなくて、皆が、ボリンジャーバンドの 2 σ を超えて株価が上昇したら売り浴びせるからだと思う・・・』



 僕の頭は、もうどこかおかしくなってしまったらしい。なんで、僕がそんなことを言い出すのか、みんな、不思議がっていた。あれは、ただ自慢したいからだという人もいれば、一種の病気だという人もいた。


 結局行きつけば、僕が科学者もどきをやっていた頃に辿り着く。今でこそ、科学にも方式論や定石があり、それに沿って行えばよい仕事であると思うようになったけれど、当時は何もわからず。常に What’s new ? を探していた。結局、What’s new ? を見つけることは出来なかったけれど、What’s new ? を探すための、What’s new ? はいくつか見つかった。

 例えば、実験棟の周りを 1 時間ぐらいかけて歩いてみたことがあった。椅子に座っていては思いつかなかったいくつかのましだと思えたアイデアが生まれた。でも、その方法は、後になって、国木田独歩と言う人が先に見つけていたことを知った。

 また、まともな、いやまともでないアイデアは、深夜に思いつくことが多かった。僕は、その効果を、深夜に書いたラブレターを翌日の朝に読んでみたら、とても読めたもんじゃない効果と名付けて、What’s new ? を探す方法論の一つに加えた。

 結局、数年間で、非常に多くのアイデアが思いついたが、実験をするとどれもうまくいかず、ろくでもないアイデアばかりであった。しかし、たまたまアイデア通りになることもあって、自分の推測が当たる確率をなんとなく体で覚えていった。

 また、沢山のアイデアを実証するためには、沢山の実験が必要だった。僕の頭の中は、実験失敗集で一杯になった。実験の失敗が沢山重なって、それからアイデアが生まれることもあった。そのようなアイデアも、実験をするとろくでもないアイデアであることがわかった。

 やがて、沢山の実験を行ううちに、どんなことをすれば、どんな失敗が起こるか、大体分かるようになってきた。分子が見えると笑う人もいたけれど、確かに見えると錯覚するぐらい、失敗の原因はわかった。

 話がそれてしまった。僕の推測が当たる確率は、実験量に比例し、推測が当たる確率は、ほぼ 0 % であったけれど、どうして失敗したかの理屈は、僕の頭の中で整理されていき、そのほとんどすべては、矛盾なく説明がついた。

 つまり、What’s new ? を見つける確率は、0 %であるけれど、失敗をうまく説明する確率は、ほぼ 100 %近くになった。失敗をうまく説明する確率が、ほぼ 100 %近くになったという実感(錯覚かもしれないが・・・)が僕のありもしない考えを本当だと信じるようになってしまった理由だと思う。

 でも、確かに経験的には、失敗の理由を見つける場合においては、僕の推測は、100 %矛盾無く説明ができた。


 ただ、その後、多量の実験を重ねて建てた場合の結果の推測が、専門外の研究テーマに変わった場合の結果の推測に、多大な影響を与えることがわかってきた。専門外の研究テーマに変わった時の推測は、実験が失敗する理由さえもわからなかった・・・


 結局、僕が力を発揮する局面は、多大な失敗をしなければ、やってこないことが、わかってきた。でも、そういえば、物理学者の小説で、検閲が厳しい部署から、郵便を出すコツは、沢山の失敗から見つけたと書いてあった・・・


 結局、人は同じことを見つける、自分の見つけるようなことは、人も見つける。となると、自分の思いついたアイデアは、人も思いつくことになる。そのようなアイデアなら、隠していても仕方がないと思うようになった。そのようなわけで、わけのわからないアイデアを、どんどん話してしまうということになってしまった。しかし、今、整理してみると、専門外の場合、アイデアが当たる確率は、失敗の理由も含めて、0 %であるので、僕はとてつもなく恥ずかしいことをしていたことになる。


 結局、専門外に関しては、当たる確率は、0 %なので、水のペットボトルが 2 L でなくてはならない推測が当たっている確率も 0 %であり、そんなことは、話すべきことではなかった。しかし、What’s new ? をめぐる経験があまりに長すぎた。

 専門の経験と専門外の経験のバランスが取れていないばかりに、見誤ってしまった。そんなことも、きっとどこかの書物に書いてあるのだろう。多くの人は、成功体験に引きずられたと評価するかもしれない。しかし、僕は経験のバランスの違いに引きずられたと考えている。

 となると、熟成して、急激に環境が変わり成長する時が一番失敗を起こしやすいことになる。熟成期の経験と急劇な成長期の経験のバランスがとれず、判断の誤りを招きやすいからである。しかし、この仮説も、専門外のために当たっている確率は 0 %なのであろう。


 このようなことを、意味のない言葉で長く薄めて、引き延ばして、わかりにくくして、意味ありげに書いてみようと思う。最後は、ノイローゼになって自殺することにしてしまおう。僕のこれまでの経験が失敗で終わっているし、もう成功に導く方法は、思いつく自信がない。もちろん自殺という表現は、やっぱり強い表現なので、表現のアンバランスが起きて・・・ と思ったが、やっぱり専門外の場合、推定が当たる確率は、0 %なので、とにかく、沢山書いてみよう。僕は、沢山の失敗からしか、成功したことがないのだから・・・ それに書くことは、一番のリハビリになるらしい。これは、多大な経験をした人の意見だから、100 %正しい意見であると思う。


 これまでに、沢山の失敗をして、沢山のことを知ったけれど、沢山の物も失った。もう、失敗をする季節は終わった。というより、もう終わりにしよう。沢山の失敗を経て知ったこと、失ったこと、それを小説で表現してみよう。 


 でも、やっぱり、ラブレター効果はあって、ろくでもないアイデアは夜に思いつき、朝に消えるのであろう・・・


続く・・・


 ※著作人格権、著作財産権、二次著作権等すべての著作権を主張します。


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