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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

呪い

作者: ぴかちゅう

 二〇〇四年、福岡県内にある遊園地のジェットコースターにて、一人の少女が死んだ。乗客二十四名を乗せたそれは勢いに任せて脱線し、血飛沫を吹かせながらその少女の首をふっ飛ばした。死んだのは彼女だけだった。小さな女の子を連れた親子のために、先頭の席を譲ってあげた優しい彼女は二列目に座っていた。

この世に因果応報も救いもないと悟ったのはその事件を知った二十一の時だった。


 誰の所有物にもなりたくなかった。ずっと一人で誰にも必要とされることなく生きていきたかった。だがそれと同時にそんな孤独な人生は寂しいものになるということも理解していたので、私は自分の人生に別の意味を見出すことにした。

 自分が生き続けていられるように、その意味付けだけを夢見ていた。それだけを真っ直ぐ見ていたつもりだった。



 だが本当は誰かに愛されたっかったのかもしれない。自分の中のそんな無意識な欲がこんな事態を招いてしまった。

 誰かに求められれば、その相手に求められるためだけに生きてしまう。そんな自分の性質を理解しているつもりだった。その人の所有物足らんとする為だけに、自分をも蔑ろにしてしまう。それが二十三歳の私だった。



 禁酒を決意したのは二日前にもかかわらず、襲いくる憂鬱さに勝てず結局こうなってしまう。だめだなあだめだなあ、でも仕方ないよね。だって私はこうなるようにプログラミングされてきたのだもの。どんなに綺麗でいようとしたって私は私だもの。どうすることもできない。

愛されたい愛されたと嘆いてばかりで、誰のことも愛せない。誰のことも気にかけれない。そう、私は自己愛の塊なのだ。自己愛が強すぎて、そんな自分を受け入れられないために、そんな自分を愛してくれる人も受け入れられない。


 なんて醜悪なんだろう。だがこれも仕方ない、だってこれは呪いだから。私にはどうすることもできない。八日前にタバコをふかしながら、ふとそれを自分の腕に押し付けてしまった時もそこに感情なんかなかった。皮膚が焼ける痛みに声を上げることもなく、そうするのが当然のように黙って押し当て続けた。



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