(3)銃弾
『こっち』でなくてよかった。
その日行った『あっち』から数日が経った。だが未だにあの感覚は忘れられていない。一瞬の爆音、大きく重い何かに胸を強く押された感覚、一瞬の激しい痛み。赤く濡れていく自分。こんなにも鮮明で、忘れられない物なのかと思った。
今回は、初めて拳銃が夢に出てきた話である。
僕には好きなグループYouTuberがいる(以下グループA)。僕は彼らと遊んでいた。鬼ごっこをしていて、最高に楽しかった。Aリーダーは、「こいつは~~で、こいつは○○で~」と、メンバーについて誇らしげに語っていた。
その後、別の2人組のYouTuber(以下グループB)が僕らに合流した。しかしそこで事件は起きる。Bの1人がAの1人に、食べていたアイスをおすそ分けをするフリをして、隠し持っていた銃で撃ったのである。「あ…」と倒れていく撃たれたAメンバーと、状況を飲み込むのに時間がかかっている他Aメンバー。それに気を取られていると、今度はBのもう片方が別のAメンバーを狙って追いかけまわしていた。
僕はその場にいたはずだったが、いつの間にかその様子を自宅リビングのテレビで見ていた。
その時僕の体が、勝手に動いた。
全身に響く爆音と銃声。強くて深い、なんて言葉では表せないほどの衝撃が胸の真ん中に勢いよく突っ込んできた。服に生暖かい物が広がる。僕は、自分で自分の胸を、拳銃で撃ったのだ。救急車を呼ぶが、いくら待っても来なかった。埋もれている銃弾の表面が見えた。
例の現場にまた戻ってきていた。体に埋もれていたはずの銃弾はない。別のAメンバーを助ける目線になり、その人を助けようとしていた。だがAのもう1人は背中側からBの協力者らしき誰かに撃たれ、倒れた。
覚えているのはここまでだ。『こっち』でなくて本当によかった。のちに銃の意味を調べると『拳銃を向けた相手に敵意を抱いている』とのことだった。つまり僕は、僕自身に敵意を向けていたわけだ。その前日、『こっち』の僕は自己嫌悪に陥っていたんで、納得した。
胸に打ち込まれたその衝撃を、僕はきっと死んでも覚えているだろう。
自己嫌悪って怖い。