(1)序章
僕だけの断片的で支離滅裂でカオスな『あっち』の世界。
(1)序章
夢を覚えている。目を覚ます直前の夢は特に。風に吹かれる感覚、恐怖の感覚、水に濡れる感覚、スローモーションな感覚…。全部。はっきりと。
こんなにはっきり覚えているもんだから、小さいころは『夢=異世界』で、夢を見ている間僕の体は『こっちの世界』(以下、『こっち』)からは無くなって、『あっちの世界』(以下、『あっち』)にいるものだと思っていた。何なら今もそう思っている。『こっち』に戻される直前まで、僕の体はここにない。そう思っている。
『こっち』は全く『あっち』とは違う。『あっち』では何でもできる。僕の背中には羽が生えて飛べるし、手から何かしらのパワーが出てきて、悪を倒すヒーローにもなれる。謝りたい人にも会える。会いたい人にも会える。何も上手くいかない『こっち』とは、180度違う。まぁ、『こっち』もそれなりに楽しくはあるが、『あっち』にもっといたい。そんなことも考える。
これは僕が覚えている『あっち』での話である。断片的で支離滅裂でカオスかもしれないが、これがこいつの『あっち』なのだと、見てほしいと思う。