我こそは召喚魔術師 クラスで一番の美少女を幼馴染みのよしみで助手として従えている!
貴様等凡百な有象無象の烏合の衆とは根本的にたぶんなにかがチト違う。
……とか言ってるうちに、中学校二年生になってた。
世間の風当たりが若干肌寒く感じられる気もしてる。
だが、諦められない。
自宅の薄暗い屋根裏部屋で、幼馴染みの美少女とコッソリ続けてるのは、祖父より受け継いだ(古本に書いてあった)悪魔召喚の儀式だ。
獲得した能力は、今のところ狸寝入りぐらい ――
「また失敗か! Exorcizo t e ぇ ?」
「ねぇ。まだするの?」
俺の呪文詠唱を、助手をしている幼馴染みの美少女が遮った。
少々クセっ毛、そこがカワイイ、クラスで一番と言われてる。
だが「クラスで一番」は適切ではない、世界一が妥当だろう。
控え目に言って人間離れしてる。
屋根裏部屋で御一緒できる幸せ。
「ねぇって」
「なんだよ」
「も~!なぁんにも出てこないよ。こんなことやめようよ」
「そんなわけあるか。祖父から受け継いだ魔導書に載ってた悪魔召喚の魔法陣と、意味わかんない呪文、この図のとおりにやったらボワンと煙とかが出てきたことはあった、それをなんも出てこないとか!じゃなにか?マナも手伝ってくれるって、ありゃ嘘か?嘘だったのか!」
「嘘じゃないよ。こうして付き合ってるじゃない」
付 き 合 っ て る ?
あぁ!
悪魔召喚に付き合わされてるってことか。
幼馴染みってだけで良くしてくれてる、裏を返せば周囲から完全にシカトされて孤立してるんだ。勝手に恥ずかしい誤解して、勘違いで恋の告白なんてした日にゃ精神的ダメージは被害甚大、明日から登校できなくなっちまうところだった。
大きく深呼吸 ―― よ し !
「だな!」
「も~8年もやってる」
「……そんなになる?」
だって。
これぐらいしか接点が無いんだ。
絶対に辞めてたまるか、絶対だ!
「も~悪魔なんて出て来っこないよ」
「静かにしてくれ、集中できない!」
◆
「あ~寝落ちしてる」
当時6歳だった彼の試した、奇妙奇天烈な召喚儀式。
引っ繰り返って後頭部を強打、一部、記憶を失った。
以来、こうして付き合っている。
理由は単純明快、目覚めた彼に「なんとしても悪魔を召喚したいんだ、手伝ってくれ!」と熱心に頼まれたから。感情ばかり先走っていてサッパリ意味不明だったけど、おじいちゃんを生き返らせるとかナントカ。
「蝋燭が危ないなぁ。片付けちゃお」
擦り切れ、かすれてしまった魔法陣もキチンと畳む。
これは2人の大切なもの。
「2人ってのは変かな?」
1枚につき、1体だけ召喚できる。
私達の記念すべき魔法陣。
だから、もう悪魔を呼び出せない。
「あ~ぁ、変身疲れた、羽がゴッキゴキ、いくら召喚主っても頑張りすぎ。さて、労働条件の向上を求めて……毛布持ってくる前にチューしとこ♡」
◆
よ~し 御 褒 美 ゲ ッ ト !
あれから8年か ――
俺は正真正銘の召喚魔術師。
この娘より先に目覚めて覚醒した能力は狸寝入り。
明日こそ、超かわいい悪魔を守る力を我が手にッ!