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ベアボルへ

 ディナーも終わり、客室に戻って入浴を済ませた私とアデルとカンヤさんは、翌日に

備えて早めに休むことにした。

 翌日、私たちはベアボルへ出発する。

 ベアボルへ向かうメンバーは私とアデル、カンヤさんの他に、アークラード四世の王

命により、セシル様とエルロアさん。そして、エルロアさんに指名されたイザベラさん

と、アーデさんだ。

 集合場所は、いまだ瓦礫の撤去が行われている北門は避け、西門に集合することに

なった。といっても、みんなアークラード城のエントランスで鉢合わせしたのだが。

 私たちは西門へ向かい、そこに用意してあった屋根付き馬車に乗り込んだ。手綱はエ

ルロアさんが握ってくれるそうだ。私は乗馬の心得がないので、とても助かる。

 私たちは西門から出発し、首都ロマリオから北側の山岳地帯を抜けた先にある、ベア

ボルへと出発した。

 西門を抜けて少し経ったころ、外から何かの鳴き声が聞こえてきた。屋根付き馬車か

ら顔を出して観てみると、石造りの大きな建物の周りに百体ほどのドラゴンの姿見えた。

そんな私を見て、エルロアさんが言った。

「あれは、我がアークラードの飛竜隊の宿舎です。手懐けたドラゴンは、非番の時は割

と野放しなのですが、今は襲撃のせいでいつでも出撃できるように、頭絡と鞍が着けら

れています」

エルロアさんの話しを聞いて、カンヤさんが言う。

「では、いつオートマトンが出て来ても安心ですね」

 確かに、飛竜の武力は一体で千の兵を越えると云われている。いくらオートマトンが

強大な力を持っているとしても、飛竜には敵わないだろう。しかし、エルロアさんは真

面目な表情で言った。

「飛竜隊が出撃するということは、それだけ国が追い詰められているということです。

できれば、その前に脅威を取り除かなければなりません」

そう言ったカンヤさんから、なんとなく決意のようなものを感じた。

 馬車は平原を北に抜け、飛竜隊の宿舎が遠のいていく。飛竜隊がベアボルへ来ないよ

うに私も尽力しよう。


 山岳地帯の山間を抜け、ベアボルを目指して一週間が経とうとしていた。

 旅中、セシル君に、「自分に気を使わないでほしい」と、名前を呼び捨てに言われた。

私は、セシル君と呼ぶことにした。どちらかというと周りに女性だらけで、逆に気を使

わせているかもしれない。でも、少しは仲良くなれた気がする。いや、私よりアデルの

方が仲良くなっていた。

 山間を抜け、馬車で草もあんまり生えていないような荒地の道を進んでいると、エル

ロアさんの「見えてきたぞ」と言う声に、皆身を乗り出し、外を見た。

 荒地の道の先にベアボルの街が見える。見た感じ普通の街だ。特徴がある所とすれば、

私たちから見て大きな建物が町の左右に建っていることだろうか。左に見える建物は、

まるで高層ビルの様に縦長の建物だ。そして右に見える建物は、まるでお城の様に見え

た。

 物珍しく見ていると、エルロアさんが言う。

「よろしければ、ベアボルの町を簡単に紹介しましょうか」

「はい。お願いします」

 エルロアさんは指を差しながら、簡潔で丁寧な説明をしてくれた。

「ベアボルの町は、大きく分けて五つのエリアがあります。ひとつは商業区と一般居住

区。もうひとつは富裕層が住む高級住宅街と、その富裕層が住む高級商業区。そして、

サラソナ商会とブランクグループが囲っているエリア。最後のひとつは採掘場です」

「採掘場?」

「はい。このベアボルでは、魔石の鉱脈があります。魔道具や魔石を商いにしているサ

ラソナ商会とブランクグループが本社を構えているのは、それが理由です。二社は何か

につけて小競り合いをしています」

「つまり、カンヤさんはそれに巻き込まれたということですね」

「はい。間違いないでしょう」

 私はカンヤさんの方を見た。カンヤさんは、少し不安そうな表情をしている。その心

中は私にわかりそうもないが、楽しいものではないのはわかった。


 馬車でベアボルの町へ入る。

 街の入口に衛兵さんがいたが、エルロアさんが「お疲れ様です」と敬礼したら、顔パ

スで通してくれた。

 入口をそのまま馬車で通過すると、エルロアさんは言った。

「このままベアボルの警備隊支部へ向かいましょう」

私たちは、了承した。

 ベアボルの町の中は、木製や赤レンガの建物が多い。人も多く、活気がある。が、な

んというか……鬱蒼とした森にいる様な、薄暗い雰囲気をなんとなく感じた。そしてそ

の正体は、建物の隙間にいる髪や髭は伸ばしっぱなしで、まるでただの布切れを巻き、

骨格が浮き出るくらいに痩せている人を見てわかった。

 私の視線に気づいたカンヤさんが言った。

「あの先はスラムになっています……」

「スラムですか……。魔石の採掘所があるなら、求人も多そうですけど……」

「そうですね。でも、魔石の採掘業者はサラソナ商会とブランクグループの系列以外は

ないんですよ。噂では、ブランクグループが裏で潰しているらしいです」

 なるほど。つまり、ブランクグループの狙いは採掘場の独占。カンヤさんのことも、

サラソナ商会への牽制のようなものなのだろう。

 

 馬車はやがてベアボルの警備隊支部に到着した。

 ベアボルの警備隊支部は、高い石造の塀に囲まれていた。

 入口に衛兵さんがいたが、街の入口と同じくエルロアさんが「お疲れ様です」と敬礼

したら、顔パスで通してくれた。

 警備隊支部の敷地内に馬車を停めると、アーデさんが馬車を降り、伸びをした。

「ようやく着きましたね。小さい部屋ですが、泊まれる所もあるので、取り敢えずそち

らまで案内してもらいましょう」

続けてエルロアさんが言う。

「長旅で疲れたろう。今日は各自、体を休めることにしよう」

 私たちは、各自自分の荷物を持ち、警備隊支部の入口へ向かった。

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