アークラード四世とのディナー
セシル様とイーリス様に案内されて、私とアデルとカンヤさんは城内食堂へ向かった。
しかし、王子様と王妃様がお向かいに来るとは、思ってもいなかった。
城内食堂のドアを開けると、中央にニ、三十人くらいが座れるほどの大きな長テーブ
ルと、椅子が置かれていた。
入口から奥の上座にはアークラード四世が座っている。左奥にはイーリス様、その隣
にセシル様が座った。私はメイドさんに案内され、右奥の椅子に座り、カンヤさんはそ
の隣に座った。ちなみに、私たちのうしろにはメイドさんが一人ずつ立っていて、私の
うしろにはクララさんが立っている。
しかし、城内食堂は数百、数千の人々が入っても問題ないほど広いのかと思っていた
が、それほど広くはなかった。アークラード四世にそのことを訊いてみると、この食堂
は家族やゲストの方と食事用で、他の兵士の方やメイドの方々は、他の大きな食堂で食
事するようだ。
アークラード四世が言う。
「本日はディナーのお誘いを受けていただき、ありがとうございます。今日は我が国最
高のシェフが腕を振るいましたので、存分に堪能してください」
入口のドアが開き、料理が運ばれて来る。脇に置かれたメニュー表を見ると、前菜は
ミニトマトのカプレーゼと書いてある。それと、テーブルの上に置かれているワイング
ラスの赤ワインが注がれた。
その後、私たち談笑をしながらディナーを楽しんだ。
会話の主な内容はセシル様の話しで、アークラード四世がいかにセシル様が有能かを
熱弁していた。どうやら親バカのようだ。
私の前に出されるお皿は一口二口食べる度に、なぜか皿が空になった。それは、美味
しいからすぐになくなるのではなく、気づいたらアデルが食べてしまうからだ。あなた、
私のケーキも食べましたよね?
カンヤさんは笑顔でもりもり食べている。さっきまで落ち込んでませんでしたっけ?
アデルが私の分を食べてしまうのを見て、クララさんが「もう一人分お持ちしましょ
うか?」と言ってくれたが、今からもう一人分作ってもらうのは気が引けるので、お断
りすることした。
ディナーもほぼ終わり、最後のカフェ、珈琲と焼き菓子が出て来た。
アークラード四世は珈琲を一口飲むと、両手の指を組んで言った。
「ところで、私に話したいことがあるそうですが、何かありましたかな」
「はい。話したいことはふたつあります。ひとつは、ベネオスに住むカーネギー侯爵に
ついてです」
「カーネギー侯爵? 何かありましたかな」
私は、ベネオスであったことをアークラード四世に話した。するとアークラード四世
は「なるほど……」答え、少し考える素振りを見せた後、言った。
「わかりました。そちらの方は明日にでも対処させていただきます。お手を煩わせてし
まい、誠に申し訳ない」
「いえ、悪いのはカーネギー侯爵ですので」
「そう言っていただけると助かります。それで、もうひとつの方は……三日前の襲撃と
何か関係が?」
「はい。まず、今まであったことを説明しますね」
私は、カンヤさんのこととハンズ・ブランクのことを交え、これまであったことを説
明した。
アークラード四世は腕を組み、苦渋の表情で言った。
「では、お二人はベアボルへ向かうのですね。私も行きたいところなのですが、ここを
離れるわけにはいきません」
アークラード四世は少し考え、言った。
「……わかりました。我が国の精鋭を百人ほど付けましょう」
私は断った。
「いえ。まず調査をしないといけないので……そんなに人数がいると、目立ってしまい
ます」
「そうですか……」
アークラード四世はしょんぼりした。すると、セシル様が言った。
「それでは、私が代わりに行きましょう」
しかし、イーリス様は首を横に振った。
「それは駄目よ。危険過ぎるわ」
「大丈夫です。これでも毎日訓練に参加してますから」
「北門であんなに被害が出たのよ。危険過ぎるわ」
「百も承知です」
どうやらセシル様の意思は固いようだ。
黙って聞いていたアークラード四世が口を開く。
「わかった。セシルがベアボルへ行くことを許可しよう」
イーリス様が反論する。
「あなたまで……。もしもの事があったらどうするの」
「セレスティア様がいらっしゃれば、全く問題ない。セシルにとってもいい経験になる
だろう。それが駄目なら……精鋭百人か」
アークラード四世が「いかがですかな?」と、私に訊いてきた。
やめておいた方がいいと私は思ったが、王として何もしないわけにはいかないのだろ
う。このままだと、精鋭百人を付けられる可能性がある。それなら、セシル様を連れて
行く方がいい。
……いや、やっぱり危険だ。セシル様を連れて行くにしても、何人か護衛を付けた方
がいいかもしれない。
「流石に危険だと思います。何人か護衛を付けた方がよろしいかと……」
「では、精鋭百人を……」
「それは結構です……。二、三人ほどでよろしいかと」
「そうか。なら、エルロアを付けよう。後の人選も彼女に任せておけば、問題ないだろ
う」
「わかりました。それでお願いします」
エルロアさんなら問題ないだろう。イーリス様は渋々といった感じだが、必ずセシル
様を守ってくれるはずだ。




