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ヨルダン侯爵の隠し部屋

 改めて、ヨルダン侯爵様の部屋を見回してみる。部屋に入ってすぐ目の前に、

ソファー(私達が座っていたソファー)があり、その奥にテーブルとヨルダン侯爵様が

座っているソファーがある。ヨルダン侯爵様が座っているソファーの後ろには、ドアが

ある。おそらく寝室だろう。右側は壁になっていて、本棚が何台か置いてある。左側を

見ると、机と椅子が置いてあり、執務を行う所だろう。その奥は窓になっている。

 机の位置からテーブルを見た時、左右の壁(入口と寝室のドアがある壁)にも本棚が

何台か並んでいる。天井にはシャンデリア。床は緑の絨毯。部屋は横長になっている。

 侯爵の部屋という割に、意外と質素な部屋に気がする。目立つ物といえば、その本の

数だろうか……。

 その中で上級召喚石がありそうな場所といえば、机の中だろう。しかし、エルロアさ

んが先程から物色しているが、一向に見付かる様子はない。

 そこで使うのが、私の右目に付いているモノクルである。実は、このモノクルは魔法

具になっていて、魔力を帯びた物を追跡したり、発見したりできる。

 私がモノクルを発動すると、この部屋にいる三人から魔力の流れを見ることが出来た。

ひとりはイザベラさん。彼女は魔術師なので、当然である。次にエルロアさん。彼女は

火の魔法石が付いた剣と、魔法無効の魔法石が付いた鎧を着ている。その魔法石の魔力

の流れが見えているのだろう。

 残ったヨルダン侯爵様だが、微量な魔力の流れを感じ取ることが出来た。そしてその

魔力の流れは、右側の壁に向かって伸びている。

 私はソファーを立ち上がり、そちらの壁側に並べられている本棚の前に立った。

 怪しい所は一見見えないが、魔力の残滓は壁の奥側に伸びている。もう少しよく見て

みよう。

 並べられている本や、本棚の隙間を見ていると、後ろからイザベラさんの声が聞こえ

てきた。

「ヨルダン侯爵様、顔色が優れない様ですが、どうかなさいました?」

「い……いや、何もないよ……何も……」

「そうですか? 本棚に何かあるんじゃないんですか?」

「そそそ、そんなことあるはずがないだろう! 何を根拠に!」

「根拠とかはないですけど~……あれ? 今、本棚の下を見ましたか?」

「そそそ、そんな!みみみ、見てない見てない!」

 なんて分かりやすいのだろう。

 私はしゃがみ、本棚の下の僅かな隙間に手を入れた。すると、何かが手に当たった。

テキトーにそれを触っていると、床に向かって押せた。

 本棚が左右に動き、壁が開いて、隠し部屋へと進めるようになった。

 私はヨルダン侯爵様の方を見る。

「ヨルダン侯爵様、これは……」

 顔の引きつったヨルダン侯爵様は急に立ち上がり、隠し部屋へ駆けて行った。それは

それは脱兎の如く。


 ――少し薄暗い隠し部屋の中に入ると、そこには棚に並べられたアンティークや宝石、

希少価値がありそうな魔法道具などが置かれていた。

 そして隠し部屋の一番奥、ヨルダン侯爵様はそこにいた。

 エルロアさんが声を掛けると、顔が引きつったヨルダン侯爵がこちらを見て言う。

「く、来るなー! この部屋にあるものは、私のコレクションだ!」

 どうやらヨルダン侯爵様は色々な珍しい物を、この隠し部屋にコレクションとして、

置いている様だ。

 ヨルダン侯爵様は、大きな紫色に淡く光る石を抱いている。おそらく上級召喚石で間

違いないだろう。

 エルロアは部屋の中を見渡しながら言う。

「なるほど、コレクションか……しかし、違法な物もあるようだが?」

 そう言ってエルロアさんは背の低い棚の上にある、紫色の刺繍入りの布を剥がした。

そこには、鳥籠があった。しかし入っていたのは鳥ではなかった。

「これは妖精だな。しかもかなり衰弱している。妖精を飼うことは禁止されているはず

だが、ヨルダン侯爵様はご存じなかったのかな?」

「そんなこと、私の知ったことか! それも私のコレクションだ!触るな!」

 そこで私はある物に気付いた。エルロアさんにそれを指差し、教えた。それを見たエ

ルロアさんの顔色が変わる。そこにあったのは、妖精の標本だった。

「なるほど。ヨルダン侯爵、お前はそういう人間か。もう容赦はいらないらしいな!」 

後ろからイザベラさんの「ヤッベ、ヒッド……」と言う声が聞こえてきた。

 エルロアさんはヨルダン侯爵様に詰め寄る。

「さぁ、その召喚石を渡せ! お前を拘束し、アークラード国王の前に突き出してや

る!」

「や、やめろ! こっちへ来るなー!」

 エルロアはヨルダン侯爵様の持っている上級召喚石に手を伸ばす。しかしヨルダン侯

爵様はそれをかわした。

 あれ? なんだろう……凄く嫌な予感がする。そして私の予感は、大体当たる。

 ヨルダン侯爵様から「あっ!」と言うのが聞えた。ヨルダン侯爵様が持っていた上級

召喚石は、手が滑ったのか宙を舞い、壁にぶつかって割れた。

 何処からともなく「あっ」という声が聞えた。おそらくエルロアさんとイザベラさん

だろう。

 私はこの時、学んだ。『人は怒りに身を任せると、ろくなことにならない』というこ

とを……。

 イザベラさんの顔が青くなっていく。

「え? どうすんの? え? どうすんの? え!? どうすんの!?」

 割れた召喚石から紫色の光が溢れ、煙が立ち込め、巨大な赤字の魔法陣が出現した。

 エルロアさんが言う。

「取り敢えず逃げるぞ! 侯爵、お前も来い!」

エルロアさんはヨルダン侯爵様の首根っこ掴み、引っ張る。

「グゲッ、ひ、引っ張っ……グホッ……!」

 私達は隠し部屋を出た。このまま部屋を出て屋敷の入口を目指すと、良くない予感が

する……。

 私はコートの内側から魔術銃と土の魔術石を加工したマガジンを取り出し、マガジン

を魔術銃に装着すると、机の奥の窓に向かって発砲し、窓ガラスを割った。そしてそこに

向かって飛び込んだ。

 後ろからイザベラさんの声が聞こえてくる。

「え? ここ、三階だよ? え? ここ、三階だよ? え!? ここ、三階だよ!?」

エルロアさんの「いいから早く行け!」と言う声が聞こえ、二人と、首根っこ掴まれた

ヨルダン侯爵様が飛び降りた。

 丁度その時だった。私が地面に着地する直前、物凄い衝撃が私達を襲った。そして、何

が何だか分からぬまま、吹き飛ばされてしまった。


 ――風の魔法石が付いた靴で衝撃を和らげ、無事に庭へ着地できた私は、辺りを見渡

した。

 お屋敷はヨルダン侯爵の隠し部屋を中心に、四分の一程が吹き飛び、何かに抉り取ら

れた様になっていた。

 怒号と叫び声が聞こえ始め、負傷したお屋敷の執事さんやメイドさんを、近所にいた

衛兵さんやお屋敷の守衛さんが駆け付け、助け始めている。

 エルロアさん、イザベラさん、ヨルダン侯爵様は、お屋敷の庭に植えてあった木に

引っ掛かり、無事な様だ。

 今私がやるべきことは、避難が完了するまで、『あれ』を引き付けることだろう。

 私は魔術銃を構え、『それ』に銃口を向けた。

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