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アサナト

 クララさんは真剣な面持ちで言った。

「クラリスさんですが、襲撃に巻き込まれてしまって……。今は国立ロマリオ中央病院

に入院しています」

「……えっ!?」

クラリスさんが入院? にわかには信じ難い。この前までは元気にしていたのに……。

 自分ではわからないが、私の表情が暗くなっていたのだろう。クララさんは取り繕う

ように言った。

「でも手術は成功しましたし、峠も超えましたから。もう大丈夫ですよ」

「そんなに酷かったんですか!?」

「はい。腕が折れていたのと、脇腹が裂かれた様になっていました。でも今朝には意識

が戻っていましたよ」

「……そうですか」

意識が戻ったなら良かった。と、言いたいところだが、流石に自分の目で確かめない限

り安心できない。いや、実際見てしまったら、余計心配になるかもしれない。それでも

やはり――。

「後でお見舞いに行きますね」

クララさんは笑顔に戻った。

「はい。きっと喜んでくれますよ。さぁ、こちらの客室へどうぞ」

 クララさんはそう言うと、客室のドアを開けた。そしてクララさんに促され、私とカ

ンヤさんは客室の中へ入る。

 客室の中は前回泊った客室とほぼ同じ。三人掛けのソファーが二台に、それを挟むよ

うに置かれた長テーブル。天井には豪華なシャンデリア。窓からはルーフバルコニーへ

出れるし、バスルームも付いている。唯一前回と違ったのが、天蓋付きのベッドが二台

になっていることだ。

 クララさんが言う。

「こちら、この部屋の鍵になっています。外出の際にお使いください」

クララさんはそう言うと、鍵を取り出す。私はそれを受け取った。

クララさんは更に、「紅茶でもお淹れしましょうか」と言うが、私は「これから少し外

出します」と、断った。

「了解しました。御用の際は、いつでもお声をかけてください」

「はい。ありがとうございます」

私とカンヤさんは頭を下げた。

 クララさんが客室を後にする。クララさんがドアを閉め終わると、カンヤさんは言っ

た。

「外出するんですか?」

 今は昼間を少し過ぎた辺り。私たちはまだ昼食をとっていなかった。

 前回来た時はここでサンドイッチをごちそうになったが、サンドイッチも美味しかっ

たが、私はそれよりも行きたい場所があった。

「昼食にしませんか? 私、いい所知ってますよ」

「本当ですか? それは楽しみです」

 カンヤさんがロマリオに来たのは、初めてだろう。私が行きたい所は、きっとカンヤ

さんも気に入ってくれるはずだ。

 それに、そろそろ私の肩辺りがうるさくなり始める頃合いだった。


 城を出て私とカンヤさんが向かったのは、以前ロマリオに来た時にイザベラさんと朝

食を食べたカフェだ。

 ここは表通りではないのだが、白と赤のレンガと周りの花壇がとてもおしゃれで、

オープンテラスがあるのもおしゃれでわかりやすい。

 店内にも席はあるが、今日は天気がいいのでオープンテラスを選択。

 カンヤさんは、「いい雰囲気のお店ですね」と目を輝かせている。どうやら気に入っ

てくれたようだ。

 前回はイザベラさんが頼んだサンドイッチと珈琲をいただいた。今回は何をいただこ

うか。

 白いワイシャツに黒いベストとズボン、エプロンを着た男性がメニューを持って、

やって来た。エプロンには『アサナト』と刺繍がしてある。店名だろうか。そういえば

店名を知らなかった。

「いらっしゃいませ。こちらメニューになります」

「ありがとうございます」

 私とカンヤさんはそれぞれメニューを受け取った。すると肩で寝ていたアデルが目を

覚ました。

「肉だ。肉食わせろ」

「はいはい」

私は気のない返事をした。アデルはいつもの肉料理をご所望とのこと。メニューを見る

と、丁度『ステーキ』という文字が目に入ったので、それを頼むことにした。

 私は……鶏肉と野菜のスパゲッティにすることにした。

 私も結局スパゲッティ。アデルのこと言えないかも……。でも最近はテント泊ばかり

で、パンとスープばかりだったから、しょうがないよね。

 カンヤさんに「決まりましたか?」と訊くと、「はい」と返事がきたので、ウェイ

ターさん呼んだ。

 ウェイターさんが来たので、私は注文を伝えた。カンヤさんはサンドイッチとサラダ

を注文した。ウェイターさんは「かしこまりました」と言うと、店内へ向かって行った。

 サンドイッチにサラダ入ってるんじゃ……。

 カンヤさんが言う。

「昼食を食べた後はどうしますか」

「そうですね。襲撃を受けた北門を見ておきたいのと、クラリスさんのお見舞いですね。

お見舞いの前にどこかでお見舞いの品を買いましょう」

「はい」

 その後、たわいない話しをしていると注文した料理が運ばれてきた。

 私が注文したスパゲッティはとても美味しく。アデルが注文したステーキも少し失敬

したが、とてもジューシー且つ柔らかくて美味しかった。

 昼食を食べ、珈琲をいただき、少しのんびりした後、私たちは北門を目指した。

 北門に近づくに連れ、その悲惨さが見えて来る。

 そこは最早北門ではない。北門があった、ただの瓦礫の山だった。

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