またまたロマリオ
白壁の広い部屋の中央に台座があった。
台座は円形で、あちらこちらに模様が彫られている。模様は魔導的で、何かしらの魔
導回路としての働きがあるのだろう。そして、その台座の上には人の頭ほどの大きさの
宝石が置かれている。その宝石は淡い光を放っていた。
台座前には不気味な人形たちが立っている。
部屋の傍らに二人の人間が立っている。一人は白いスーツに白いハット、丸グラサン
を掛け、金色のステッキを床に突いている。もう一人は七三分けで眼鏡を掛けて白衣を
着た、科学者の様な男性。資料の挟まったバインダーを持っている。
白いスーツを着た人物が言う。
「首尾はどうかな」
科学者の様な格好をした男性が答える。
「はい。まったく問題ございません。先日の実験でも問題なく稼働していました。この
魔導宝石ならフル充電で一週間は稼働できるでしょう」
「そうか。それなら、後は待つだけかな」
科学者の様な格好をした人物は少し怪訝な顔をしたが、白いスーツを着た男性はそのま
ま踵を返し、部屋を出て行った。
――首都ロマリオ。
首都に到着した私とアデルとカンヤさんは、王城を目指していた。
ガルターブさんは中に入れないので、先行してベアボルへ向かって行った。
私はアークラード王にベネオスでの出来事を話さなければならないので、ガルターブ
さんとは再び別行動することにした。
首都ロマリオに入って王城を目指して歩いている内に、私は少し違和感を感じ始めて
いた。それは、以前来た時よりも街に少し活気が足りないように感じたからだ。それと、
行き交う人々にも笑顔が少ないと言うか……不安のような表情が見て取れた。
カンヤさんも何か察して、言う。、
「初めて首都に来ましたけど、人が多いにしては元気がないと言うか……」
「うん。何かあったのかな……」
王城へ到着し待合室へ。
待合室に来ると、以前来た時に会ったアークラード王国第二魔導部隊の副隊長アクリ
アーデ・シンこと、アーデさんがいるのが見えた。アーデさんは騎士の方何人かと立ち
話をしていた。
私は当初の目的通り、アークラード王に謁見するために受付へ向かったが、前回と同
じく茶髪の女性に「セ、セレスティア様!」と、気づかれてしまった。
「すいません。アークラード王と謁見したいんですけど……」
「はい! ただいま!」
茶髪の女性はそう言うと、猛スピードでどこかへ行ってしまった。
取り敢えず、椅子に座って待っていようとカンヤさんを椅子へ促すが、座る直前に
「すいません」と声をかけられた。声の主は騎士の方たちと立ち話をしていたアーデさ
んだ。
「やはりセレスティアさまでしたか。ようこそいらっっしゃいました」
「こんにちは。何やら忙しそうですね」
アーデさんにそう言うと、彼女は少し険しい顔をした。
「それが……襲撃を受けたんです」
「襲撃……! もしかして街中の活気がなかったのも……」
「はい。襲撃は二日前でしたので多少は落ち着きましたが、死者も出ていますし……み
んな不安なのでしょう」
「そうですか。犯人はわかっているんですか」
「それがですね。犯人はオートマトンなんですよ」
オートマトン。つまり自動人形だ。自動人形といえば裏オークションでハンズ・ブラ
ンクが落札した魔導機兵。おそらくもう完成したのだろう。
アーデさんに何機いたか訊くと、オートマトンは僅か三機。北門から攻めてきたとい
う情報を入手した。
アーデさんと話していると、受付にいた茶髪の女性が戻って来た。
「お待たせしました! 陛下がお会いになるそうです。案内しますので、私に付いて来
てください!」
私は返事をし、アーデさんに別れを告げて、カンヤさんと共に茶髪の女性の後を
追った。
二階に上がってすぐ正面に両開きの扉がある。前に来た時は閉まっていたが、今は開
き放たれている。
扉の中を観ると謁見の間になっているようだ。一番奥の立派な椅子にアークラード四
世が腰をかけ、周りにいるニ、三人と話しをしている。
陛下は私に気がつくと立ち上がった。
「おおっ! セレスティア様! ようこそいらっしゃいました!」
「ど、どうも……」
相変わらず陛下は私に腰が低いままだ。しかし、今回は逃げるわけにはいかない。
茶髪の女性は私たちに会釈すると、持ち場に戻って行った。
陛下と話していた臣下の方々は私に気を使ってか、一歩引いた。しかし、今は大変な
時だろう。私はできるだけ手短に話すことにした。
「忙しい時にすいません。後ほどでも構いませんので、少しお話したいのですが……」
「後で……では、今晩お食事でもいかがですかな」
陛下は察してくれたようだ。
「はい。では、詳しい話しはその時に」
私がそう言うと、陛下は近くにいたメイドさんを呼んだ。メイドさんは「はい」と返
事をする。
「一番良いゲストルームへ案内しなさい」
「了解しました」
私とカンヤさんはメイドさんの「こちらへどうぞ」と言う声に促され、謁見の間を後
にした。
私とカンヤさんはメイドさんに付いて行く。メイドさんは道すがら自己紹介をしてく
れた。
「クララと言います。よろしくお願いします」
クララさん。髪はボブカットの女性だ。真面目そうでキリッとしているが、柔らかい
笑顔をする人だ。
私とカンヤさんはクララさんに倣って、自己紹介をした。
メイドといえばクラリスさん。今日はまだ会っていない。どこかで会うかと思って、
メイドの恰好をしている人を見かける度に確認しているが、見つけられてはいない。そ
うだ。クララさんに訊いてみよう。
「クラリスさんはお元気ですか」
私は何気なく訊いてみたのだが、クララさんの顔が曇るのがわかった。それは、丁度
客室の前に着き、クララさんが足を止めた時ところだった。




