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屋敷の不気味な人形

 総指揮官室を後にした俺は、その足のまま大将室へ向かった。

 大将というのは、グラザールのおっさんが言っていた坊主のこと。そしてその坊主の

正体は、エンディヴァル皇帝の息子。つまり、ラーテル皇子のことだ。

 大将室に到着。グラザールのおっさんはもう現場に向かっていると言っていたが、念

の為にもう出発したのか確認しておこう。

 ノックをして「失礼します」とドアを開けようとしたが、鍵がかかっていて開かな

かった。すると丁度通りかかった水色の髪の女性が言う。

「ラーテル様ならお出掛けされましたよ」

「いつ頃出られましたか?」

「三時間ほど前です」

「そうですか。ありがとうございました」

 俺は水色の髪の女性にお礼を言うと、足早に現地へ向かった。

 城を後にし、廃村付近まで行ける魔導列車の切符を買い、乗車する。最寄りの町に到

着したころには夕方になっていた。そこから廃村を通る馬車を探したが見つからず、馬

を借りることにした。

 馬で休み休み走ること四時間が経過し、辺りはすっかり暗くなってきたころ、漸く廃

村が見えてきた。

 廃村の入口まで来ると、そこには馬車が停まっていた。おそらくラーテル様が乗って

来た馬車だろう。俺も乗って来た馬を停めさせてもらおう。

 馬を降り、グラザールのおっさんが言っていた屋敷を探す。廃村の建物は黒ずんでい

て、焼け焦げたようになっているものがほとんどだ。中には本半壊しているものもあり、

戦争の爪痕が見て取れた。

 一番奥の少し高い丘に一際大きな屋敷が見える。おそらくその屋敷が目的地だろう。

俺は丘を登り、その屋敷へ向かった。

 屋敷前に到着。そんなに大きな屋敷ではないが、この小さな村にはそぐわないほどに

は大きな屋敷だ。

 屋敷の前に噴水があった形跡がある。暗くてよく見えないが、その噴水跡の前に二人

の人物が立っているのがわかった。一人は黒髪で軍服を着た男性。腰には刀と魔法銃が

見える。

 この人がロンドベルト帝国の第一部隊隊長で皇子のラーテル様だ。性格は寡黙で事務

的な会話以外はあまりしない、仕事人間みたいな人だ。

 もう一人はエルフの女性。髪は金髪で、やはり軍服を着ている。腰には小剣と魔術銃

が見えた。

 このエルフの女性は副隊長で、ラーテル様の副官でもあるミリエラ様だ。性格はお淑

やかで気の利く人だ。

 ラーテル様は俺に気がつくと言った。

「遅い」

第一声がこれか。心はないのか。それに比べてミリエラ様は「長旅ご苦労様です」と頭

を下げる。取り敢えず「すいません」とだけ返しといた。

 ラーテル様は早速「入るぞ」と屋敷の入口に手を掛ける。本当に無駄がないな。もし

かしたら魔導兵器か何かなんじゃないだろうか。

 ラーテル様に続いてミリエラ様が屋敷の中に入る。俺はその後に続いた。

 屋敷の中に入ると、埃臭さと少し焦げ臭さが鼻を突く。俺は鼻をつまんだ。ミリエラ

様も「臭いますね……」と鼻をつまむ。ラーテル様も……つまんでいない。しかもどん

どん進んで行く。だからといってまったく警戒していないかというと、そうではない。

右手は刀の鞘を握っている。これは何かあった時に応戦しやすようにしている。それと

膝が少し曲がっているし、足先は左右どちらか同じ方向を向いている。これは何かあっ

た時に避けやすいようにしているのだ。それとラーテル様とミリエラ様、二人共ほとん

ど足音がしない。まるで忍者の様だ。

 それほど広くないエントランスを抜け、そのまま廊下を進む。しかし、戦争の被害に

遭ったにしては、この屋敷は十分綺麗な方だろう。焦げ臭いのも今は鼻が慣れたのか、

あまり気にならない。

 少し進むと二股道に差し掛かる。ラーテル様はその前で止まった。そして少し足元を

見る。

「……女か」

そう言うと、左へ曲がった。どういうことだろうとラーテル様が見ていた所を見ると、

埃が被った床に足跡が残っていた。確かに、その足跡の大きさからして女性の可能性が

高いだろう。そして足跡は左の道に延びていた。

 左の廊下を進むとドアが見えた。足跡もそこへ伸びている。

 ラーテル様は魔法銃を抜いた。ミリエラ様も魔術銃を抜く。俺は刀に手をかけた。

 ラーテル様がドアノブを回し、ドアを開ける。そして魔法銃を構えながら部屋へ入っ

た。そのままラーテル様は部屋内に進行して行く。俺もミリエラ様に続いて部屋の内に

入った。

 室内は正方形で倉庫の様に見える。部屋の端には木箱や家具や美術品が布と埃を

被って置かれている。しかし、この部屋で一番目を引くのが、部屋の中央の椅子に座っ

ている人形だ。

 人形の身長は百五十センチくらい。髪は白髪で、瞳の色は金色。そう、この人形はア

リスだ。しかし、この時はまだそれがアリスどころか、生きた人間だということにも俺

は気がついていなかった。

 人形には不思議な魅力があった。しかし、その人形は呼吸をせず、生きている気配を

感じなかった。だからこそ余計に不気味さを感じた。

 ミリエラ様が人形を見て言う。

「まるで生きているみたい。少し不気味ね」

「確かに」

 俺とミリエラ様は人形を見ていた。しかしその間、ラーテル様は部屋を確認していた。

 一通り見て回り、私たちは部屋を後にすることにした。しかし、ラーテル様が部屋の

ドアノブに手を掛けた時、動きが止まった。すぐ後ろにいるミリエラ様が

「どうしたの?」と訊くと、ラーテル様が振り返り、言った。

「あの人形に触ったか?」

ミリエラ様は首を振った。

「いいえ。少し不気味で……触れなかったわ」

それを聞いたラーテルは人形の前に戻った。人形は今にも動き出しそうだ。しかし、飽

く迄も人形。動くはずがない。そう思っていた。

 ラーテル様が手を伸ばし、人形の腕を掴もうとした瞬間、人形が一瞬の内に消えた。

いや、違う。飛んだのだ。しかもその速度は以上なほどに早く、動くはずがないと思っ

ていた人形が動いたことと、その速さに俺は一瞬呆気に取られ、気づいたころには膝窩

を蹴られ膝を付かされた。そして、あっという間に俺は人形だと思っていたアリスに拘

束されていた。

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