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ポールの依頼

 隠れ家に到着しドアを開けると、部屋の中にはベアトリーチェが居た。しかし、それ

以外の人物は血を流して床に倒れていた。

 血を流し倒れていたのはボスを含む俺たちを拉致した三人ともう一人。負傷していた

残りの一人の姿は見えなかった。

 ベアトリーチェは何事もない様に言った。

「生ごみを捨てたいから手伝ってちょうだい」

彼女はそう言いながら隠れ家内の中を見渡す。そんなベアトリーチェにアンナが訊く。

「それより……この死体は……」

ベアトリーチェは室内にあったスコップを取りながら答えた。

「私が殺ったの。ただの復讐よ。シスターレナのね。それより手伝ってちょうだい。遺

体を埋めるから」

 ベアトリーチェはそう言うと隠れ家を出て行く。俺たちは多少困惑しながらも、その

指示に従った。そして皆で穴を掘り、遺体を運んで埋めた。

 こうして俺たちは自由になった。


 俺たちは頃合いを見て一度教会に戻ることにした。教会は俺たちが去った時から何も

変わっていなかった。ただ、シスターレナの遺体はほとんど白骨化していた。

 シスターレナの遺体は教会の裏手に埋め、墓を作った。

 シスターレナの遺体を埋めた後、俺たちは話し合った。この先どのように生きていく

かを……。

 最初は町に出て働こうということになったが、殺しの仕事しかしてこなかった俺たち

にとって今更普通に働くのは少しハードルが高い気がした。それとグラピナ王国の軍隊

に見つかると捕まるか、殺されるという恐れもあった。そして、俺たちはこの国から逃

げるか、殺し屋としてこのまま働くか、どちらかを選択することにした。

 最終的に俺たちは後者を選んだ。ここからどこか遠くに行くにしてもお金が必要だっ

たからだ。


 隠れ家に戻り、殺し屋を再開して一年が経った。

 七年も殺し屋を続けていればそれなりに顧客や噂を頼りに来る客もいた。仕事に困る

ことはなかった。

 そしてある日、大口の依頼が入った。

 その日は大雨で、皆隠れ家で暇を持て余していた。そこに突然ドアをノックする音が

した。

 掃除をしていたアンナが言う。

「どちら様ですか?」

ドアの向こうから男性の声が聞こえてきた。

「十三番をお願いします」

十三番。それは死神を意味する番号だ。つまり、ドアの向こうの人物は殺しの依頼をし

たいらしい。

 アンナが「どうぞ」と言うとドアが開く。現れたのは全身をフードで覆った背の高い

人物だった。

 フードを被った人物が顔を出す。その顔は少し痩せこけているが、髪はオールバック

で品のある雰囲気を醸し出している。

 アンナが椅子に座るように促すが、彼はドアを閉めて言った。

「いえ、長居すると怪しまれてしますので、ここで」

 ベアトリーチェが言う。

「それで誰を殺してほしいの?」

 彼は話始めた。彼が言うにはこうだ。

 彼の名前はポール・アルドノフ。グラピナ王国の子爵だ。そして、彼の住んでいる貴

族街の近所にはセザル・ローバーズという伯爵が住んでいる。このポール・アルドノフ

とセザル・ローバーズは犬猿の仲で、昔から何かにつけて争いをしていた。

 ある日、ポールの息子ユノが通う学校から連絡が入った。内容は息子のユノが給食を

食べて食中毒で倒れ、病院に運ばれたという内容だ。

 ポールは血相を変え、妻と共に病院へ向かった。しかし、ポールたちが病院に着くと、

既にユノは亡くなっていた。

 その後、王国から派遣された調査隊が学校の食中毒について調べたが、給食から食中

毒は発見されなかった。

 食中毒が発見されなかったのとともに、亡くなったのが息子のユノだけだったのが気

がかりだったポールは何か裏があると思い、まずユノの担任の先生に話しを訊くことに

した。しかし、先生は何も答えない。そこでポールはお金を握らせた。すると先生は、

「ユノ様はローバーズのご息女、ナナエ様にクッキーを貰っていました」と答えた。

 確かにアルドノフ家とローバーズ家は昔から何かにつけて争いをしてきた。しかし、

流石にそこまでするかと思ったポールは、今度はローバーズ家のメイドにお金を握らせ

た。するとメイドは、

「そのクッキーはナナエ様が作られた物です。私が作り方を指導しておりました。そう

いえば、途中でセザル様が様子を見に来ましたね」と答えた。

 次にポールは探偵を雇い、セザルが出入りした場所や怪しい行動などを調べてもらう

ことにした。その結果、セザルは数日前、近所の薬屋に行っていたことがわかった。

ポールはその薬屋に行き、薬師にお金を握らせた。すると、セザルはポイズンサーペン

トという魔物から採れる毒を買っていたことがわかった。

 以上のことからポールは、セザルの娘のナナエがユノにプレゼントのクッキーを作っ

ている最中に、薬屋で買ったポイズンサーペントの毒を密かにクッキーに混ぜ、ユノを

殺させたということがわかった。

 親同士は犬猿の仲だったがユノとナナエは仲が良かった。そしてそれはポールもセザ

ルも知っていた。セザルはそれを利用したのだ。

 ポールは激怒し、セザルに同じ思いをさせることを誓った。

 ポールは復讐の為再び探偵を雇い、貴族たちが裏で要人を暗殺する時に依頼する暗殺

者を探した。そして、俺たちを探し当てたという。

 話を聞き終えたベアトリーチェは言った。

「つまり、ターゲットは娘のナナエかしら?」

ポールは頷き、懐から袋を出した。

「報酬はこちらに」

俺は差し出された袋を開け中身を確認すると、中には大金貨が……五百枚と、今までの

報酬の中でもトップクラスの報酬が入っていた。

 ポールは言った。

「もし依頼を完遂くだされば、さらに五百枚出します。受けて下さいますか?」

ベアトリーチェは俺たちの顔を見た。俺とゼノは賛成。しかし、アンナだけは何とも言

えない、暗い顔をした。

 アンナは賛成とも反対とも取れる曖昧な表情だが、ベアトリーチェは賛成多数と判断

したようだ。

「わかった。受けるわ」

 ベアトリーチェが返答するとポールは「お願いします」と一礼し、足早に去って行っ

た。

 その後の話し合いで決行は明日の夜となった。

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