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ヨルダン侯爵のお屋敷

 ヨルダン侯爵のお屋敷に入ると、可愛い(可愛い)メイドさんが迎えてくれた。しか

し、アークラード城のメイドさんに比べ、少し疲れている様にも見える。

「ヨルダン侯爵様の所へご案内いたします」

 いつの間にか先頭に立たされた私が答える。

「お願いします」

 私とエルロアさんとイザベラさんは、メイドさんの後を付いて行く。エイハムさんは

馬車の中で待機だそうだ。

 暫く進むとメイドさんは、とあるドアの前で止まり、ノックをした。

「ヨルダン様、お客様をお連れしました」

 ドアの向こうから「どうぞ」と声が聞こえた。メイドさんはドアノブを回し、ドアを

開けた。

 「お邪魔いたします」と部屋の中に入ると、赤い派手な服を着た初老の男性が立って

いた。髪は白髪の真ん中分けで、カールがかかっている。ちなみに髭にもカールが

かかっている。この人がヨルダン侯爵のようだ。

 ヨルダン侯爵はイザベラさんが中に入った瞬間、彼女の方を一瞬睨んだ様に見えたが、

すぐに笑顔に戻った。多分イザベラさんは気付いていない。そして一緒に部屋へ入った

メイドさんに何か耳打ちをし、その後メイドさんも侯爵に耳打ちをした。それが終わる

と、メイドさんは部屋を出て行った。

 ヨルダン侯爵は笑顔で言う。特に私の方を見て。

「ようこそいらっしゃいました。ささっ、こちらの方へお掛け下さい」

「それではお言葉に甘えて」

そう言って一番最初に座ろうとしたのは、イザベラさんだった。

 イザベラさんは『殺される』とか言ってた割に、何故か気楽そうだ。

 しかし、それをエルロアさんが止めに入る。

「お前じゃない」

「え? なんで?」

 私は二人に提案する。

「三人一緒に座らせて貰いませんか?」

エルロアが同意した。

「……ですよね。三人で一緒に座りましょう」

 私とエルロアさんは、三人掛けのソファーに腰を掛けた。イザベラさんも同じ

ソファーに腰を掛ける。頭の上に『?』を浮かべながら。

 私達の目の前にテーブルがあり、その奥に同じ三人掛けのソファーがある。ヨルダン

侯爵は、そちらへ座った。

 部屋をノックする音が聞こえ、メイドさんが「失礼します」と中に入って来た。メイ

ドさんは紅茶を運びに来てくれたようだ。

 ヨルダン侯爵は言う。手を擦り合わせて、私の方を向きながら。

「ところで……皇帝位竜神大勲章をお持ちだとお伺いしたのですが、一度拝見させて頂

いてもよろしいでしょうか……」

「ええ。構いませんよ」

 私はショルダーバッグから勲章を取り出し、手の平に乗せてヨルダン侯爵へ見せた。

ヨルダン侯爵はそれを、マジマジと見詰める。紅茶を運びに来たメイドさんも同様に、

見詰める。穴が開きそうだ。

 ヨルダン侯爵は勲章を見詰めながら言う。

「これは間違いなく本物……。まさか……盗品ではあるまいな」

それに対し反論したのは、私ではなくエルロアさんだった。

「侯爵はロンドベルト帝国を敵に回したいと?」

「いやいや、冗談ですよ冗談。はははっ……」

 ヨルダン侯爵は、乾い笑いをした。そんな中、一人だけキョトンとした顔の人物がい

た。その人物、イザベラ・ヨーグは、私の手の平から勲章を取ると、サラッと言った。

「何これ? 何か凄い物なの?」

 エルロアさんがイザベラさんから、勲章を奪い取る。

「馬鹿かお前は! これが何かも分らんのか!」

 知らなくても無理はない。知っている人は知っている(特に貴族や王族と、その周り

の人)が、知らない人は全く分からない物なのだから。

 エルロアさんがイザベラさんに説明する。

「この皇帝位竜神大勲章は、この世界で一番の武力と領土を誇るロンドベルト帝国の皇

帝エンディヴァル様が、自分と肩を並べることを許した者だけに送る勲章で、これを持

つ者は皇帝と同位の権力を持ち、これを持つ者に逆らうことはロンドベルト帝国を敵に

回すことと同意だと言われている、史上七人しか授かったことがない、大変名誉な勲章

なんだぞ!!」

 長い説明ありがとう。それを聞いていたメイドさんが、そそくさと部屋を出て行った。

 イザベラさんはエルロアさんの勢いに、少し引き気味だ。

「つまり、どういうこと?」

「つまり、こちらにいらっしゃるセレスティア様を、エンディヴァル様と同等に扱えと

いうことだ」

 私はそれに口を挟んだ。

「いえ、出来れば今まで通りでお願いします」

しかし、エルロアは食い下がる。

「し、しかしセレスティア様……」

「私は権力を行使して、誰かを従える気はありませんので。取り敢えず、『様』は辞め

て下さい」

「わ……分かりました……」

エルロアは納得した様だ。そしてイザベラさんは……。

「皇帝のお友達が出来た! 私超ラッキー!」

 イザベラさんはなかなか図太い方の様だ。この図太い感じ、

誰かに似ているような……。

 そして、もうひとり図太い人がいた。それは、ヨルダン侯爵である。

「それでは私もお友達ということで……」

「貴方は駄目です」

 そう。ここに来た目的を忘れてはいけない。私はエルロアさんの方を見て、召喚石の

ことを訊くように促す。

「ヨルダン侯爵。貴方に召喚石所持の容疑がかけられています。身に覚えはありません

か?」

「いや、そのような記憶はございませんな」

「しかし、こちらのセレスティアが……あれ? ところでセレスティア、『ヨルダン侯

爵』という証言は何処から……?」

 エルロアさんは何か思い出したように訊いてきた。私は正直に答えた。

「猫さんに聞きました。古代魔法で」

「ね……猫ですか?」

私の発言を聞いて、イザベラさんが言う。

「聞いたことがあるわ。遥か昔にエルファタ族という人達がいて、その人達が使ってい

た言語には奇跡を起こす力があったそうよ。そして、その言語を話すことによって得ら

れる効果のことを、古代魔術や古代魔法というらしいわ」

 説明ありがとう。しかし、それに対してヨルダン侯爵が反論した。

「いやいや。幾ら何でも猫の証言で容疑者扱いはないでしょう」

 エルロアはそれを聞いて、「では、部屋の中を改めさせて頂いても?」と言う。

「ええ。構いませんよ」

ヨルダン侯爵は、笑顔でそう答えた。その余裕の表情が、私は何か引っ掛かった。

 エルロアは持っていた皇帝位竜神大勲章を、「あっ、これお返しします」と私に渡す

と立ち上がり、部屋の中を物色し始めた。

 私も部屋の中を少し調べさせてもらおう。

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