魔導のお勉強
ベネオスを発って二週間ほど経ったころ。アークラードの首都ロマリオを目指す私た
ちは、途中ガルターブさんと合流した。
今は夜。私たちはカイラニオの少し北の森の中でテントを張り、夕食に野菜スープを
作って食べ、そしてお片づけをし、今に至る。
焚火の燃える音が聞こえて来る中、皆各々体を休めている。
アデルは木の上で寝ている。いや、目は瞑っているが、おそらくまだ起きているだろ
う。
ガルターブさんは木を背もたれにして座り、寝ている。いや、これはアデルと同じく
目を瞑っているだけで、起きてはいるだろう。
カンヤさんは倒木に座りながら紅茶を飲んでいる。
私もカンヤさんと同じく倒木に座りながら紅茶を飲んでいたが、魔術銃の火のマガジ
ンが切れたことを思い出し、新たに火のマガジンを作ることにした。
ショルダーバッグから火のマガジンを作る為に必要な物を取り出しす。必要な物はま
ずマガジン用に加工された魔術原石。次に魔法陣が描かれている土製で壷型の鍋と、木
製のお玉。壷は縦、横、高さ、十五センチほどしかない小型の物だ。
次に素材だ。素材は火竜の鱗の粉末と魔力とマナをため込む特性を持つ魔導草を乾燥
させて粉末にした物。以上の二種類だ。
私の目の前にある焚火にはお湯を沸かす為のスタンドがセットしてある。そこに壷を
置く。次に、壷の中に水、魔術原石、火竜の鱗の粉末、魔導草の粉末を入れ、お玉に魔
力を流しながらゆっくりかき混ぜる。十分ほどかき混ぜていれば魔術原石に火の魔力が
込められるだろう。
私の様子を見ていたカンヤさんが「何をされているんですか?」と声をかけてきた。
「魔術銃用の火の魔術石を作っています」
「そうなんですね……。それって誰でもできるものなんですか?」
「いえ、それなりの知識がないとできないと思います」
「そうなんですね。それでは、私にはできないですね……」
もしかして、やってみたいのだろうか。
「よかったら少し教えましょうか?」
私がそう言うと、カンヤさんは「本当ですか? よろしくお願いします」と答えた。
まず、カンヤさんの魔導知識がどの程度のものなのかわからないので、基本的な質問
をしてみた。
「カンヤさんは魔術、魔法、魔導の違いは知っていますか?」
カンヤさんは少し恥ずかしそうに答えた。
「それが……まったくわからないんです」
「なるほど。ではまずそこから説明しましょう」
魔術とは、体内の魔力と自然エネルギーのマナを使って様々現象や効果を起こすこと。
魔法とは、体内の魔力と自然エネルギーのマナを使って様々現象や効果を起こすこと。
カンヤさんは言った。
「同じじゃないですか?」
「そうですが、簡単に言うと規模ですね。魔術を使用するのに必要な魔力とマナの量が
一とすると、魔法に使う魔力とマナの量は十位です。威力や効果もそれに比例します」
カンヤさんは「なるほど」と手の平を拳で叩いた。
最後に魔導だが、魔術と魔法全般のことだ。また、対象を攻撃できる魔導を黒魔導、
補助や回復する魔導を白魔導と言う。ちなみに、人間で魔法を使える人は一握りくらい
しかいない。
カンヤさんが言う。
「なぜ人間に魔法を使える人が少ないんですか?」
「それについては魔力変換力、魔力容量、魔導出力が関係しています」
魔力変換力とは一度に魔力とマナを魔導に変換できる力のこと。魔力容量はその名の
通り、魔力を保有できる最大容量のこと。魔導出力は魔導を放てる最大値のことだ。人
間に魔法使いが少ないのはこのみっつが値が少ないからだ。
カンヤさんは言った。
「そのみっつは成長するものなんですか?」
「訓練すれば魔力容量は成長しますが、魔力変換力と魔導出力はそんなに成長しないん
ですよね。人間で魔法が使えるほどの変換力と出力を持っているのは先天的に魔力の才
能に恵まれている人か、先祖に魔力の高い種族がいるかです」
しかし、魔法を使える魔力容量になっているころには、人間の寿命は尽きてしまう。
「魔力が高い……エルフとかですか?」
「そうですね。エルフは生まれた時から魔力が高く、寿命が長いので、魔法使いがたく
さんいると言われています。それと、最も魔力が高いと言われているのが魔族で、子ど
もでも魔法を扱えるそうです」
「魔族ですか……昔人間と戦争していたという知識しか私は知らないですね」
「そうですね。それと魔族の中で最も魔力が高い者を魔王と言います。それと魔族は古
代魔導の使い手が多いそうです」
「古代魔導?」
古代魔導とは、この世界に知的生命体が生まれる前に神々が地上に降り立ち、動物を
進化させて知的生命体を造ったとされている。その神々が地上に降り立つ際に連れて来
た使いの者、エルファタ人が使用していた魔導を古代魔導という。
古代魔導には人間が作った魔導とは違い、攻撃や回復、補助以外の効果がある魔導が
多く存在する。
カンヤさんは言う。
「例えばどんな効果があるんですか?」
「そうですね。犬や猫と話せます」
突然カンヤさんの目が光った。
「そそそそれっ、ぜひ覚えたいです!」
その気持ち、わかります。しかし。
「古代魔術は難しいので……まずは基本からやってみましょうか」
「頑張ります!」
カンヤさんは両手で拳を作り、やる気を見せる。
ちなみに古代魔法を使える人は魔族でも少なく、一部の古代魔法は禁術と言われ、使
用を禁止している国もある。
私はショルダーバッグから鍋を出し、ロングコートの内ポケットから水の魔術石を取
り出した。水の魔術石を使い、鍋に水を出す。そして火にかけていた壷の中から火の魔
術石をお玉ですくい上げ、水で満たされた鍋の中に落とした。
蒸気を上げ、温度が下がった火の魔術石を私は手に取る。
「次は魔石について話ましょうか」




