カーネギー侯爵邸
私とカンヤさんとグランさん、そして警備隊のアーセファーさんと共にカーネギー侯
爵のお屋敷へとやって来た。
カーネギー侯爵のお屋敷はベネオスの最奥、海岸沿いにあった。広さはロレーヌ家の
二、三倍ほどだろうか。
敷地外の柵は私の身長の三倍ほど高く、柵の上部は槍の様に尖り、簡単には侵入でき
ないようになっている。
敷地内への入口には門番の人が二人、門の左右に立っている。服装はスーツを着た、
がたいの良い男性だ。
私は勲章を取り出し、左の門番をしている男性に話かけた。
「すいません。私こういう者なんですけど。カーネギー侯爵にお会いしたいのですが」
門番をしている方は勲章をマジマジと見、やがてギョっとした目をした。
「し、少々お待ちください!」
門番さんはそう言うとお屋敷の方へ駆けて行った。最近似たような場面に遭遇したよう
な気がする。
アーセファーさんが言う。
「いったい何をしたの?」
「これを見せたんです」
私は手に持つ勲章、皇帝位竜神大勲章をアーセファーさんに見せた。アーセファーさん
はそれを見ても何かわからないような顔をした。
「これは何かの勲章?」
「はい。見る人が見たら恐怖する、お守りみたいな物です」
アーセファーさんは怪訝な顔をした。無理もない。なぜならわからない人にはまったく
わからない代物なのだから。
暫くするとお屋敷から何人かの人が出て来た。それと、先頭にはカーネギー侯爵の姿
も見えた。それ以外の人物は鎧を着た、兵士の様に見えた。数は四人。
カーネギー侯爵は私の前に立つと言う。
「皇帝位竜神大勲章を持っているのは君か?」
私は「はい」と答え、勲章を見せた。カーネギー侯爵はそれをジッと見ると、言った。
「此奴らを捕らえよ!」
おっと、これは以外な反応。
鎧を着た人たちが私たちに迫って来る。さて、どうしたものかと思案していると、私
の肩から大きな音と共に火花が飛んだ。鎧を着た人物はその火花を受け、吹き飛び、地
面に叩き付けられた。火花を飛ばしたのはもちろんアデルだ。
「なかなかカーネギーとかいうやつは単細胞の様だ。ちょっと懲らしめてやろう」
なんでもいいけど、急に私の肩で口から火花を出さないでほしい。ビックリするから。
降り懸かる火の粉は振り払わないとならぬ。私は魔術銃を抜いた。マガジンは衝撃弾
を挿入。鎧を着ててもまともにくらえばそこそこ痛いはずだ。
カーネギー侯爵は一旦無視して鎧を着た手前の方を撃つ。アデルが放つ火花と合わせ
て鎧を着た方々は全員倒れてた。しかし、衝撃弾と火花の音でカーネギー侯爵のお屋敷
から次々と鎧を着た方々が出て来る。それと、私の左耳がうるさいから、アデルには肩
から降りてほしい。
後方からカンヤさんの「キャ!」という声が聞こえた。見るといつの間にか鎧を着た
方々が回り込んでいたようだ。しかしその鎧を着た方々は次の瞬間宙を舞った。
一瞬何か起こったかわからなかったが、見るとアーセファーさんがカンヤさんの前に立
ちふさがる。
アーセファーさんは杖や魔術銃を手に持っておらず、詠唱すらしていない。しかし鎧
を着た方が目に前に来ると、彼女は手を薙いだ。すると鎧を着た方々は再び宙を舞った。
おそらくこれが彼女の持つ、特異魔導体質者としての能力なのだろう。なんと便利な能
力なのだろうか。
鎧を着た護衛さんたちを粗方片づけ、辺りを見ると、カーネギー侯爵が尻餅を付いて
いるのが見えた。
「お……お前たち! ただではすまんぞ!」
私はカーネギー侯爵の肩に手を置いた。
「アークラード王には私から報告しておきますね」
そして、カーネギー侯爵は警備隊員に連れられて行った。
その後、アーセファーさんの指示で、いつの間にか現れた警備隊たちによるカーネ
ギー侯爵邸内の捜索が始めった。グランさんも捜索に参加する。
私とカンヤさんもカーネギー侯爵邸の中へ入る。
カーネギー侯爵邸は三階建てで、外装はロレーヌ家のお屋敷とそんなに変わりはない
が、規模はおよそ二倍ほどあるだろう。
エントランスに入ると吹き抜けになっていて、天井からは豪華なシャンデリアが並ん
でいる。床は赤色の絨毯が敷いてあった。
私とカンヤさんはエントランス内を一通り見て回った。銀色の甲冑が置いてあったり、
カーネギー侯爵の自画像があったり、謎のオブジェクトがあったりと、相当高価そうな
品が置いてあるのがわかった。それと自画像は結構大きく、自己顕示欲の塊みたいな絵
だった。
一通りエントランス内を観終えて入口付近にいるアーセファーさんの所に戻って来る
と、警備隊の一人がアーセファーさんの所に来て言った。
「違法物は見つかりませんでした。それと奴隷と思われる人物も発見できません」
アーセファーさんは反論した。
「そんなはずはない! もう一度よく探せ!」
そこにもう一人の警備隊が来た。
「使用人は口を割りません。全員黙秘しています」
確かにエントランス内には何人かのメイドさんや執事さんが居る。しかし、皆不安そ
うな表情で床に座り、何も話そうとはしない。もしかしたら口止めされているのかもし
れない。
違法な物や奴隷として落札された人はいない。それとメイドさんや執事さんは口を割
らない。しかし私は、カーネギー侯爵の様な狡猾な人物が違法な物をどのように隠すか、
すでに知っていた。
私はアーセファーさんに言った。
「おそらく隠し部屋でもあるのでしょう」
「隠し部屋か。よし、もう一度邸内を捜索だ」
警備隊たちが「了解しました!」と駆けて行く。アネモネさんや違法な品々が見つかる
のは最早時間の問題だろう。




