裏オークション会場
次の日。朝起きて朝食をいただきに食堂へ行くと、アテリアさんがいた。
カンヤさんはアテリアさんが座っている椅子に駆け寄る。
「アテリアさん、おはようございます。もうよろしいんですか?」
「ええ。ごめんなさい心配かけてしまって……でも塞ぎ込んでばかりもいられないわ。
この子たちにも心配かけてしまったし……」
アテリアさんはそう言ってピーター君とミアちゃんの方を見た。二人はアテリアさんに
笑顔を見せる。
アテリアさんは手を叩く。
「さぁ、朝食をいただきましょう。子どもたちを学校に送ったら葬儀の相談もしなけ
ればならないですし」
アテリアさんと共に朝食をいただく。心なしか、今日の朝食は少し明るく感じた。
朝食後、アデルとカンヤさんと共に劇場前へ。そこでガルターブさんと落ち合うこと
になっている。
今日もお屋敷には警備隊の方々が出入りしているが、昨日と同じく外出許可は難なく
取れた。
劇場の外には柵があり、門から入場することができる。しかし現在は閉じられていて、
敷地内へ入場することはできない。
私とカンヤさんはその敷地内への入口の門前でガルターブさんを待つことにした。敷
地外は繁華街ということもあり、流石に人通りが多かった。
ガルターブさんは程なくして現れた。いや、寧ろ現れたのは私たちの方か。彼は劇場
の敷地内にある木陰にいた。
「来たか……こっちだ」
ガルターブさんは何事もないように柵飛び越えを、敷地内から出る。こんなに人通りが
多いのに誰もそのことに気がつかない。いったいどういうことなのだろうか……。
ガルターブさんはそのまま歩いて行ってしまう。私とカンヤさんは後を追った。
繁華街を抜け、人通りが少し少なくなった所にある棺桶屋の横の路地を曲がる。そう
いえばこのベネオスの街を観光した時、仮面を着けた人を見かけたのはこの辺りだった。
路地の先にはお店が並んでいるが、なんの店なのかもわからないようなお店が多い。
雰囲気も旧繁華街の様に侘しい雰囲気が漂っている。
お店の看板は出ていない所もあるが、出ている所には『賭場』とか『居酒屋』とか、
いかにも怪しい所が多かった。
人気はない。しかしそれが更なる怪しい雰囲気を醸し出している。
カンヤさんが「嫌な雰囲気の所ですね……」と言うと、ガルターブさんが振り返らず言
う。
「ただのカモフラージュだ、人を寄せ付けなためのな。実際は営業しているお店はほと
んどない」
確かに、この雰囲気の所には近寄りがたい……。
ガルターブさんは暫く歩くと、再び路地を曲がった。そこは人一人通るのがやっとと
いうくらいの、とても狭い路地だ。その路地を、先頭はガルターブさん。次にカンヤさ
ん。最後尾を私の順で進む。
左右と正面の先に建物があるからか太陽の光は遮られ、狭い路地はとても暗い。しか
し目的の場所は程なく着いた。
その場所は六畳あるかないかくらいの、とても狭い場所だった。そして、そこには二
人の男性が立っていた。見た感じ、いかにも悪いことをしていそうな怪しい二人組だ。
二人組の片方が私たちを見るなり「なんだてめぇら!」と詰め寄って来た、が……。
「グハッ……!」
ガルターブさんの右ストレートをもろにくらった。怪しい男は壁にぶつかり、そのま
ま動かなくなった。
もう一人の男が言う。
「なっ……なんだてめぇら! ここがどこだかわかってねぇのか!」
しかしそんな話など聞く気もないと言わんばかりに、ガルターブさんの肘鉄が彼の脳天
を襲う。それは見事な早業だった。怪しげな人物は地面に叩き付けられ、動かなくなっ
た。
カンヤさんが肘鉄を食らい動かなくなった怪しい人物を人差し指で突っつく。
「だ……大丈夫ですか~?」
「気絶しているだけだ、放っておけ。それよりもあれだ」
ガルターブさんが顎で差した方を見ると、そこはただの壁だった……。いや、違う。良
く見ると……窪み? 小さな窪みがある。
私は訊く。
「あの窪は……扉? あの扉が裏オークションの入口ですか?」
ガルターブさんは「そうだ」と言いながら、その窪みに手を入れて扉を開いた。扉を開
くと、そこには地下へと続く階段が現れた。
ガルターブさんが言う。
「先に俺が降りて中を確認してくる。少しここで待っててくれ」
私は「わかりました」と首を縦に振った。
カンヤさんが「気をつけてくださいね」と声をかける中、ガルターブさんは階段を下
り、暗闇の中へ消えて行った。
カンヤさんが倒れている。二人を指して言う。
「この二人はどうしましょう?」
「ほっておいて大丈夫だと思います……あっ」
私は気絶している片方に近寄り、上着の懐に手を入れた。懐の中には……。
「煙草と財布。それと魔術銃。魔術銃はマガジンを抜いておきましょう」
私は魔術銃のマガジンを抜き取り、自分の懐に入れた。
カンヤさんはもう一人の倒れている怪しい人物を見ている。丁度私から見てカンヤ
さんは背中を向けている。どうやら私と同じく懐を探っているようだ。
「こちらも同じですね。煙草と財布と魔術銃です」
「ではそちらもマガジンを抜いておいてください」
カンヤさんは「はい」と返事をし、マガジンを抜いた。
ガルターブさんが戻って来るまでの間、カンヤさんは両手を後ろで組み、左右に上半
身を動かしながら、何やらピョコピョコしていた。よくわからないが、かわいかった。
その後ガルターブさんが戻って来るのを待った。暫くは出てこないと思っていたが、
ものの五分程度で戻って来た。
ガルターブさんは戻って来るなり「こっちだ」と私たちを招き、再び階段を下って行
く。私とカンヤさんはその後を追い、階段を下った。




