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オークション出品票

 ロレーヌ家のお屋敷内は、全体的に静かな雰囲気に包まれたまま時は過ぎて行った。

 警備隊の方たちは夕方には去って行った。それと同時にいつの間にかいなくなってい

たアデルも戻って来た。

 ディナーは私とアデルとカンヤさん、それとピーター君とミアちゃんでいただいた。

もちろんウェインさんはいない。それとアテリアさんもいなかった。

 ピーター君とミアちゃんもなんとなく周りの雰囲気から大人しくしていた。ウェイン

さんが亡くなったことを理解しているのかいないのか分からないが、泣いたりはしな

かったし、誰かに何かを訊いたりしなかった。

 私とカンヤさんはなるべく明るい話題を話すことにした。学校の話や好きなお菓子の

話だ。少しは元気になってもらえただろうか……。

 そしてディナーが終わって客間に戻ったところで、アデルが言った。

「よし、現場に行くぞ」

「いや、流石に怒られるんじゃ……」

現場の書斎には立ち入らないように警備隊のアーセファーさんが言っていた。遺体は既

に運び出されているがだが、現場は保存しなければならない。

 しかし、アデルは私の心配を余所に言った。

「大丈夫だ。なんとかなる」

どこからそんな自信が湧いてくるのだろうか。そしてカンヤさんも言う。

「それでは参りましょう」

なんでカンヤさんもノリノリなのだろうか。

 私は多数決に負け、書斎へ向かうことになった。


 書斎へ向かうまで運良く誰ともすれ違わなかった。

 書斎前周辺に誰もいないのを確認すると、ドアの前でアデルが言う。

「よし。ティア、鍵を開けろ」

もうどうなっても私は知らないよ。

 私は人差し指で鍵穴を指し、魔力を発した。するとドアから鍵が開く音がした。どう

やら成功したようだ。

 私はドアノブを握り、ゆっくり回す。そして軽くドアを押し、開ける。

 室内を覗き込むと、部屋の中は真っ暗で、静まり返っていた。

 私たちは中へ、ゆっくりと歩み入れた。室内へ入るとまたゆっくりと、ドアを閉める。

 部屋の奥の窓から月明りが差しているが、月明りが差していない所は真っ暗で、やは

り何も見えない。

カンヤさんも「何も見えませんね」と言うので、私は明かりを出すことにした。

「光よ、我が道を照らせ」

小声でそう唱えると、光る玉が出た。明るさは少し弱めに調整。

 書斎の形は長方形。壁際には本棚が並べられ、部屋の奥には机と椅子が置いてある。

そして、その後方には窓があった。

 死体は既にないが、床に敷かれた絨毯にはまだ血痕が残されていた。

 さて、ここで何を調べようか。取り敢えずモノクルでも使ってみようかな。

 私はモノクルに魔力を通し、室内を見渡した。しかし魔力反応はない。つまりウェイ

ンさんの殺害には魔導は使われなかったということだ。

 次に私は机の後方にある窓を見た。窓には鍵がかけられている。ここから魔力を使わ

ず、更に音もなく侵入するのは相当手練れの泥棒さんでもほぼ不可能だろう。

 ドアも窓も閉まっていたとなると、ウェインさんが室内に招き入れた可能性が高い。

つまり犯人はウェインが知っている人物ということになる。それと時間が深夜だとなる

と、おそらく外部の人ではないだろう。しかし内部の人間といっても、お屋敷内にも十

人以上の人がいる。その中から犯人を絞り込むのはなかなか難しいだろう。

 せめて犯行時刻が分かればな~。

 私が思考がどん詰まっていると、本棚を物色していたカンヤさんが何かを発見したよ

うだ。

「ティアさん、これ」

カンヤさんは一枚の紙を私に差し出す。私はそれを受け取りながら訊いた。

「これは?」

「はい。本棚の本の隙間から出て来ました。一番上の文字を読んでみてください」

 紙は直角四つ折りにされていて、開いて見ると、一番上の行には『オークション出品

票』と書かれていた。書かれている商品には、ヴァダーの人形、フォティアの人形と書

かれている。

 他には……召喚石!? これは違法な物なのではないのだろうか。しかし昨日のオー

クションにはそんな違法な物はなかったはず……これはどういうことなのだろうか……。

 私が紙を見詰めていると、その辺を飛びながら眺めていたアデルが言う。

「どうした? 何か分かったのか?」

「う~ん、よく分かんない。この紙を見てみて」

アデルは私の肩に留まり、紙を見る。

「どれどれ……うむ、召喚石がオークションに出ているということは、これは裏オーク

ションというヤツじゃないか? それとこの人形の名前、どこかで訊いたことがあるよ

うな……う~ん、思い出せん。この紙はどこで?」

カンヤさんが答える。

「本の隙間に挟まっていました」

「そうか。本を全部調べるか?」

えっ? こんなにたくさんある本棚を? 全部? それは流石にめんどくさい。

 私は話を逸らすことにした。

「それより死亡推定時刻ってわからないかな?」

私の問にアデルが答える。

「それなら午前三時ごろと言っていたぞ」

「なんで知っているの?」

「ちょっとな」

ちょっとなって、どうせ盗み聞きでもしてたんでしょ。だから事情聴取が終わった後す

ぐにいなくなったのか。書斎の捜査をしていた警備隊の方の話を盗み聞いていたに違い

ない。

 死亡推定時刻が三時ということは……何も分からん。結局夜中まで起きてて、こっそ

り書斎へ向かい、ウェインさんを殺害したと考えると、屋敷内の人物なら誰でも犯行が

可能だろう。私が名探偵なら既に犯人を特定できているのかもしれないが、残念なこと

に私は名探偵ではない。

 本を全部調べれば何か分かるかもしれないが、残念ながら私は眠くなってきた。

「今日はこの辺にして、眠ろうか」

アデルは言う。

「そうだな」

本を一冊一冊チェックしていたカンヤさんは言う。

「えっ? あっ、はい……」

なんでカンヤさんはそんなに乗り気なのだろうか。

 取り敢えず明日はこの『オークション出品票』を詳しく調べてみよう。

 部屋を出る前になんとなく窓から外を見た。外にはロロ君がこちらを見ているのが見

えた。

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