表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
66/94

怪獣王の水墨画

 壇上のオークショニアがハンマーを叩く。どうやら落札者が決まったようだ。

 最高落札価格が決まるとオークショニアがハンマーを叩く。このことから最高落札金

額のことをハンマープライスという。また、そのハンマーのことをガベルといい、叩く

丸くて平たい小さな板をベースという。

 壇上のオークショニアが紙に落札価格を書く。そしてその紙を他のオークショニアの

方が落札者の方に渡した。

 あの渡した紙は引換券で、オークションが終了後に引換券と書かれた金額を渡すと、

商品と交換できる。書かれている値段は落札価格の他に手数料が含まれている。

 オークションは進み、最後の商品になった。壇上のオークショニアが最後の商品を紹

介する。

「本日最後の商品はこちら。シラユリ・カゲノエの水墨画、『怪獣王』です。こちらの

商品は一口金貨百枚。金貨一万枚から開始します」

 皆、我先にと手を上げる。

 このシラユリ・カゲノエという人物なのだが、カタログによるとロレーヌ家に飾られ

ていた動く絵を描いたアシュレイ・サンドレアスと同じく五大魔導芸術家の一人だそう

だ。そしてその絵『怪獣王』という絵なのだが、絵はなかなかの大きさで、高さは二

メートルほど。横幅は三メートルほどとなっている。そして、その絵に描かれている怪

獣王なのだが、怪獣王というのはベヒーモスのことだ。

 水墨画なので白黒のみの絵だが、そこには力強くてパッと見獰猛そうだが、凛々しい

強大で屈強そうなベヒーモスの絵が描かれている。

 ちなみにこの絵に描かれているベヒーモスなのだが、世界に一体しか存在しないとい

う本体が描かれている。見た目は何となくトラの様に見え、頭から二本の角が生えてい

る。

 このベヒーモスの本体は子どもを産むことができる。そして本体以外のベヒーモスは

子どもを産むことができない。

 子どもの大きさはそれこそロレーヌ家のお屋敷ほどあり、成長して成体になるとこの

ベネオスの街ほどのサイズになる。そして本体は大きな山の様な大きさだ。

 子どもたちの見た目はそれぞれ違いがあり、サイの様な見た目のものから象の様な見

た目のものもいる。

 ベヒーモスの寿命はおよそ千年と言われている。寿命を迎えると百年ほどで転生する。

その時のサイズは成体などから比べれば本当に小さく、全長二メートルくらいしかない。

 転生後は成体になったベヒーモスたちに守られながら百年ほどで元のサイズになり、

再び子どもを産むという。

 そんなこんな解説している間にも次々と手が上がる。今まで手を上げていなかった人

も手を上げている。ウェインさんも手を上げる。しかし金貨二万枚を超えた辺りから

徐々に手を上げる人が減り始め、ウェインさんも手を上げなくなった。しかしそんな中、

手を上げ続けている人が何人かいる。その中で一番余裕そうなのは、やはりカーネギー

侯爵だろう。

 最高金額がカーネギー侯爵の金貨三万五百枚になった時、全員の手が止まった。壇上

のオークショニアが言う。

「三万五百! 三万五百! 他はいらっしゃいませんか!?」

誰も手を上げない……と思ったが、意外な人物が手を上げた。しかも私の左側から。

「カンヤさん……?」

私はドヤ顔で手を上げているカンヤさんに声をかけた。しかも五口も。カンヤさんは言

う。

「一度やってみたかったんですよね」

「三万千! 他いないですか!?」

 セリカさんとライラさんはノリノリで煽る。このまま落札したらどうするつもりなの

だろうか。

 ウェインさんとアテリアさんは驚いている。ピーター君は寝ている。ミアちゃんもア

デルを抱っこしながら寝ている。アデルも寝ている。そして周りの席からは、「どこの

お家の方なのかしら」とか、「きっといいお家の方なのね」とかザワザワ声が聞こえて

くる。

 違います。我々はただの一般人です。それに金貨三万千枚なんて大金、もちろん持っ

ていないです。誰か他に手を上げてくれませんかね。

 戸惑う私に救世主が現れた。カーネギー侯爵だ。

「三万千五百! 三万千五百! 他いませんか!?」

 ありがとうございますカーネギー侯爵。これで取り立て屋に苦しまされる日々を回避

できました。しかし残念ながらカンヤさんは再び手を上げるのだった。

「三万二千! 三万二千がでました!」

こんにちは取り立て屋さん。しかしそんな私に再びメシアが舞い降りた。もちろんカー

ネギー侯爵だ。

「三万二千五百! 三万二千五百!」

 ありがとうございますカーネギー侯爵。これで地下労働に勤しむ毎日を回避できまし

た。しかし残念ながらカンヤさんは再び手を上げるのだった。だが甘い。私がその手を

抑え……。

「三万三千! 三万三千!」

残念ながら右手を抑えたら左手を上げられてしまった。こんにちは班長。しかしそんな

私に再びソテルが出た。もちろんカーネギー侯爵だ。

「三万三千五百! 三万三千五百!」

 ありがとうございますカーネギー侯爵。これで奴隷市場で売られずに済みます。しか

し残念ながらカンヤさんは再び手を上げようとしていた。

 こうなったら最後の手段。私は小声で唱えた。

「エゼフェー」

これは古代魔法のひとつで、対象の動きを止める効果がある。

 カンヤさんは口以外微動だにせず言った。

「う……動けない……」

そう、そのまま暫く動かないでおくれ。

 こうして『怪獣王』の水墨画は金貨三万三千五百枚でハンマープライスとなった。


 オークションが終わり、会場を出た。。

 カンヤさんは会場を出るなり言った。

「どうして急に金縛りになったんでしょう……?」

「さぁ、なんででしょうね」

私がやりました。もちろん言わない。

 オークション会場を出ると引換券を持った貴族たちが商品の代金を払っている。カー

ネギー侯爵の隣にいる執事さんが大量の大金貨を積んでいる。恐ろしや~。

 ちなみに大硬貨はその硬貨の十倍の価値である。つまり大銅貨は銅貨十枚分。大銀貨

は銀貨十枚分。大金貨は金貨十枚分である。

 ウェインさんが言う。

「そろそろ遅いですし、帰りましょうか」

 夜も大分深い時間になっている。それに少し眠くなってきた。

 私とカンヤさんはウェインさんの提案を了承した。

 劇場から出て皆迎えに来た馬車に乗る。しかし私は「すいません、お手洗い行っても

よろしいですか?」と言い、一旦引き返した。

 劇場の中へ引き返した私はお手洗いには行かず、入場券売り場へ向かった。そして入

場券売り場の係員に声をかける。

「すいません、ちょっとお聞きしたいんですけど」

「はい、なんでしょうか」

「ここ一週間以内にハンズ・ブランクって方見えませんでしたか」

係員の方は名簿を確認することもなく答えた。

「ハンズ・ブランク様ってブランクグループの代表の方ですよね? ここ最近は来てい

ませんね~」

どうやら係員さんと面識があるようだ。

「そうですか。ありがとうございました」

私はその場を後にした。

 面識のある人物が来ていないと言うのなら本当に来ていないのだろう。口止めされて

いる可能性もあるが、そんな感じにも見えなかった。しかしハンズ・ブランクの目的は

オークションに参加することだったはず。もしかしたらまだこのベネオスに滞在してい

るのだろうか……。後でアデルに相談することにしよう。

 外に出るとハバスさん以外は既に馬車へ乗り込んでいた。

「すいません、お待たせしました」

「いえ、構いませんよ。さぁお手をどうぞ」

私は差し出されたハバスさんの手を取り、馬車に乗り込む。

 私が馬車に乗り込むとハバスさんが「皆様よろしいでしょうか」と言った。ウェイン

さんが答える。

「大丈夫だ。出してくれ」

 こうして私たちは帰路に着いた。

 劇場から帰ってからドレスを脱ぎ、入浴して客間に戻る頃には深夜十二時を回ってい

た。

 暴れ回っていたカンヤさんもいつの間にか眠っている。アデルも既に眠っているし、

私も今日はもう休むことにした。

 明日からまた情報収集をしようと考えていた。しかし、次の日の朝、ある事件が起きた

のである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ