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グレリア王国物語

 馬車に乗って劇場へ。

 劇場前の道には馬車が三台並んでいた。私たちが乗っている馬車はその後ろに並んで

いる。

 外を見るとスーツやドレスに身を包んだ人がたくさんいる。

「凄い人ですね」

ウェインさんが答える。

「そうですね。ですが出発が少し遅れたので、これでも少ない方です。劇場内にはもっ

とたくさんの人がいますよ」

人が多い所はそんなに得意ではないのだが、大丈夫だろうか。

 やがて前方に並んでいた三台の馬車がいなくなり、私たちが降りる番になった。

 ハバスさんが馬車のドアを開ける。最初に降りたのはウェインさん。次にアテリアさ

ん。そしてピーター君とミアちゃん。最後に私。

 ハバスさんが手を差し出してくれた。

「足元にご注意ください」

「ありがとうございます」

私はハバスさんの手を取り、馬車を降りた。

 グランさんが言う。

「それでは十一時ころにお迎えに上がりますので」

彼はそう言うと馬車を走らせ、去って行った。

 次にカンヤさんたちが乗った馬車が停まる。

 先に降りたのはライラさんとセリカさん。二人はカンヤさんに手を差し出した。カン

ヤさんは二人の手を取り、馬車を降りた。

「苦しゅうない」

カンヤさんはすっかり雰囲気に呑まれているようだ。

 セリカさんとライラさんがクロイツさんに言う。

「十一時に迎えに来て」

「来なかったら、分かってるよね?」

「ひ、ひぃ!」

クロイツさんは大急ぎで去って行った。

 周りから囁く様な声が聞こえる。もちろん渦中の人物はカンヤさんだ。と、いうのも

ロングトレーンのドレスの長さは、長ければ長いほど格式が高いとされているからだ。

つまり周りの人たちからカンヤさんは、どこぞの貴族の令嬢だと思われているというわ

けだ。しかもかなり高貴な。私は、なんというか……カンヤさんと少し距離をとろうか

な……。

 ウェインさんの「行きましょう」という声に、皆で劇場の中へ。ウェインさんが

言った通り劇場内はたくさんの人がいた。しかし劇場のロビーはとても広く、ギュウ

ギュウ詰めというわけではない。

 最初は皆で入場券売り場へ向かう。入場券売り場はロビー奥の中央にある。

 ウェインさんが黒髪でボブカットのロビーの係員さんに言う。

「劇場二階のチケットを人数分。ハバスも観るかい?」

ウェインさんは振り返り、ハバスさんの方を見た。しかしハバスさんは首を振った。

「いえ、私はロビーで待機しております」

「そうかい。ライラとセリカは……」

次はライラさんたちの方を見た。

「当然見ます!」

「そうでないと裾を持てません!」

ウェインさんは少し気圧された様子で「そ……そうかい」と答えた。

 係員さんが言う。

「それでは金貨十六枚枚になります」

金貨十六枚。つまり一人金貨二枚……火の魔術石が四、五十個は買える。恐ろしや。

 ウェインさんはハバスさんからバッグを受け取り、金貨十六枚を係員さんに渡した。

そこでカンヤさんが「セレスティアさん」と言った。何か変なことでも言うのかと思っ

たが、違った。

「あの入場券売り場の横に居る人……髪が光ってません?」

 そこには白い軽鎧を着て、スリットのスカートを履いた女性が腕を組んで、壁にもた

れかかっていた。彼女は長い緑色に輝く髪をリボンで束ねているそしてその緑色に輝く

髪はとても目立っていた。

 彼女の髪の色だが、基本的に生まれた時の一般的な髪の色は黒、茶、金、赤、白のど

れかの色が多く、特に黒と茶と金の色が多い。しかし例外も存在する。

 私はカンヤさんに説明した。

「あれは『特異魔導体質者』ですね」

「特異魔導体質者?」

「はい。生まれながらにして特殊な魔導体質を持つ人のことです。その体質は多くは髪

か目に現れます。火なら赤髪や赤目。水なら青髪や青目などです。彼女は緑髪なので風

の特性を持っています」

「どんな特性なんですか?」

「普通の魔導士が使えない魔術や魔法を使ったりできます。しかも魔力をほとんど使わ

ずに」

「そうなんですね。しかしあんな所で何をしているんでしょう。警備の方なんでしょう

かね?」

「はい。服装から考えて間違いないでしょう」

 しかしそうだとしたら、彼女なぜ目を閉じているんだろう……。


 入場券売り場のすぐ横にある入場受付で券を渡し、半券を受け取る。半券と一緒にパ

ンフレットも貰った。

 そのままロビーの階段を上がってホールの二階へやって来た。ホール内は半円の様な

形になっていて、客席は三階まである。ウェインさんが言うには一階は一般席。それで

も銀貨八枚らしい。二階以上は貴族しかチケットが買えず、三階に至っては王族や大公

や侯爵しかチケットを買えない。しかも大金貨二枚というアホみたいな価格らしい。

 遅く着いたので席は大体埋まっていた。仕方ないので二階後方の端っこの席に私たち

は座ることにした。

 受付さんから半券と一緒に貰ったパンフレットを見ると、演目はグレリア王国物語だ。

 遅く着いたこともあり、席に着いて少し経ったころに劇が始まった。

 劇場内は暗くなり、緞帳が上がり、劇が始まる。

 グレリア王国というのはかつて北西に実在した王国で、そこにはグレリア王、アレン

ティン・サンドラ・フォン・グレリアと十二人の優秀な配下が存在した。その十二人の

優秀な配下のことをグレリアピラーズという。

 グレリア王国は隣国のエラトマ王国に宣戦布告をされ、戦争をしていた。結果として

はグレリア王国が勝利するのだが、エラトマ王国の国王は呪術に長けた人物だった。

 エラトマ王国の王、ノーゼン・マールス・フォン・エラトマ王は死の間際に言った。

「呪いあれ……」

呪いは発動された。発動された呪いはエラトマ王を討った人物、グレリア王からの信頼

も厚く、剣に長け、戦争の貢献度が最も高かった、グレリアピラーズのシタン・マー

ホールという人物だった。

 劇は進み、シタン役の人が次々にグレリアピラーズを殺害していく。しかしグレリア

ピラーズは誰が殺害しているか、それどころかシタンが呪いを受けていることも知らな

い。

 実はこのグレリア王国とエラトマ王国なのだが、史実ではシタンは誰も殺さず、呪い

に打ち勝ち、グレリア王国は更なる繁栄の道を進んで行くのだが、この世界エムアース

にグレリア王国とエラトマ王国という国は存在しないらしい。そこで新たに流れた説が

この『シタン、呪いに打ち勝てなかったエンド』だ。つまりグレリア王国はとうの昔に

滅んでいたというのが今最も有力な説とされている。ちなみにグレリア王国とエラトマ

王国があった場所は分かっていない。

 私は悲劇より喜劇の方が好きだな――とか思っていると、劇はクライマックスを迎え

た。

 グレリアピラーズは疑心暗鬼になっていき、やがて柱は全て折れていく。柱をなくし

たグレリア王国は崩壊し始め、最終的にグレリア王はシタンに殺されてしまった。しか

しグレリア王はその命と引き換えにシタンの呪いを解く。だがシタンは自分のしたこと

の重圧に耐えきれず、自害する。

 劇はそこで終わった。

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