ディナーはフルコース
夕食はコース料理で、場所はリビング入って掃き出し窓とは逆方向の右側のドアから
行ける食堂だ。
食堂内は長方形型の部屋で、部屋の中心に長テーブルが置いてある。長テーブルには
白色のテーブルクロスが敷かれていて、中央に一定間隔で花瓶が置かれている。
長テーブルの左右に椅子が並べられている。数はおそらく左右合わせて四十席はある
だろう。
奥の壁には暖炉があり、左側の壁は窓が一定間隔であるが、今はカーテンで閉じられ
ている。そして、右の壁側にはドアが見える。
ロレーヌ一家の方々は長テーブルの左側の椅子に、奥からウェインさん、アテリアさ
ん、ピーター君、ミアちゃんの順で座ってる。マコナスさん、セリカさん、グランさん
の姿も見える。
ウェインさんの向かい側の椅子とその隣の椅子をマコナスさんとセリカさんが引いた。
マコナスさんが「こちらへどうぞ」と言うので、私はウェインさんの前、カンヤさんは
アテリアの前に座った。
ウェインさんが言う。
「ディナーはコース料理にしました。我が家自慢のシェフが作る料理をぜひお楽しみ下
さい」
私は「ありがとうございます」とお礼を言った。果たしてどんな料理が出て来るのだろ
うか楽しみだ。
テーブルの上を見るとメニュー表、ナプキン、ワイングラス、お皿、それとカトラ
リーが置かれてあった。メニュー表には八品の料理名が書いてある。ちなみに、カトラ
リーはナイフやフォークのことで、初めから置かれているお皿はアンダープレートまた
はサービスプレートと言われ、座る位置を定めるためのお皿となっている。
ちなみにコース料理はフォーマルで八品。少なくて七品。一番格式が高いと十一品出
て来る。最初に出て来るのは突き出しやお通しと言われる『アミューズ』。次に前菜の
『オードブル』。三品目が『ポタージュ』。『スープ』と表記される場合もある。四品
目は海鮮や魚を使った料理『ポワソン』。五品目は口直しの『ソルベ』。主にシャー
ベットが出て来る。六品目がメインディッシュになることが多い肉料理の『アントレ』。
七品目は『サラダ』。八品目は『チーズ』。九品目は甘いお菓子『アントルメ』。十品
目は『フルーツ』。最後の十一品目は珈琲と小菓子の『カフェ・ブティフール』だ。ま
た全七品の時と全八品の時は『アントルメ』と『フルーツ』がなく、代わりにデザート
『デセール』。それと全七品の時は『アミューズ』がない。
近くに居たグランさんが言う。
「セレスティア様はお酒はお強いですか?」
私は「いえ、あんまり……」と手を振った。
「では、軽めの白ワインにしましょう」
グランさんは後方に置かれているワゴンの上から白ワインを持って来て、私の目の前に
置かれているワイングラスに片手で注いだ。私はウェインさんがナプキンを膝に置いた
ので、私も膝の上にナプキンをふたつ折りにして置いた。
皆白ワインを一口。すっきりとしていてフルーティーな味わいだ。ピーター君とミア
ちゃんはブドウジュースを飲んでいる。
全員の目の前に一品目の皿が置かれた。
「カイラニオ産白身魚のカルパッチョ ホワイトヴァルサミコの香草ジュレ添えでござ
います」
出された料理をナイフで切りフォークで口に運ぶと、白身魚の塩気とジュレの甘酸っ
ぱさと香草の香りが絶妙にマッチしていて、とても美味しい。きっと舌鼓を打つという
表現はこういう料理のためにあるのだろう。
ウェインさんとアテリアさんは普通に食事をしている。ピーター君とミアちゃんも上
手にナイフとフォークを使い、食事をしている。きっとウェインさんやアテリアさん、
メイドさんや執事さんなどから教わったのだろう。それとアデルなのだが、有難いこと
に料理はアデルの分も用意されていた。彼は私のふたつ隣の席で、テーブルマナーなど
無視で食事をしている。そもそも神龍の体でテーブルマナーも何もないのだが。しかし
そうはいかない人が一人。
左側を見ると脂汗を流しているカンヤさんが視界に入った。私は小声で言った。
「カンヤさん、ナプキンは折り目が自分側です」
「えっ! あっ、はい……すいません、私こういうの初めてで……」
私はカンヤさんに小声で説明した。カトラリーは外側から。ナプキンで直接口を拭か
ず、外側ではなく内側を使う。それだけ分かっていればなんとかなる、と。
食事は進み、ウェインさんが言う。
「先程劇場の関係者の方が見えたのですが、明日オークションが開催されるそうです。
お二人の都合がよろしければ、明日劇場へお二人を招待しようと思うのですが、いかが
でしょうか」
私は問題ないのだが、カンヤさんの方を見る。あっ、いけない。カンヤさんは満面の笑
みでメインの牛フィレ肉の赤ワイン煮込みに夢中だ。
私はウェインさんに返事をした。
「だ……大丈夫です」
「ではそのように進めるとしましょう。しかしカンヤ様は美味しそうに食べますな。喜
んでいただいてなによりです。シェフにもお伝えしておきます」
ウェインさんがそう言うが、カンヤさんは聞いていない。最早牛フィレ肉の赤ワイン煮
込みの虜だ。
ディナーの後はバスタイムだ。私とカンヤさんとミアちゃんに案内されてバスルーム
へ。浴槽自体はそんなに広くない――いや、一般家庭からしてみたら十分広いのだが。
しかし浴槽よりも洗い場の方が広い。もちろんシャワー付きだ。しかも何十台も。こん
なにいるかなと思いつつ、ミアちゃんの背中を洗ってあげた。ちなみにメイドさんたち
に着替えのお手伝いを申し込まれたが、丁重にお断りした。
……あれ? アデルがいない……。
その後客間に戻り、ベッドに横になった。動く絵画の中の綺麗な女性は、今はいない。
もう寝たのかな……。
明かりを消しベッドに横になって少し経ったころ、何者かの気配を感じた。私は目を
開け何者かの姿を確認しようと体を起こした。その瞬間、窓を軽くノックする音が聞こ
えた。敵意はなさそうに感じる。
念の為、私は魔術銃を構えてカーテンを開けた。するとそこにいたのは、ガルターブ
さんだった。




