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準備と調査

 私はエルロアさんに頼み、イザベラさんと共にアークラード王国の城下町で一番の魔

道具屋さんに連れてってもらった。

 エルロアさんの部下兼御者のエイハムさん(男性、三十一歳、彼女募集中)が運転す

る馬車で、大通りにあるウィリアム魔道具店までやって来たのだ。

 ウィリアム魔道具店はヨーグ魔道具店の三倍程大きい。きっとここなら、目当ての物

も置いているだろう。

 馬車を大通りに横付けすると、エイハムさんを残し、エルロアさんとイザベラさんと

一緒に店内に入った。

 店内は綺麗に清掃されていて、清潔感がある。イザベラさんの所とは大違いだ。

 そんなことを思っていると、エルロアさんが言う。

「綺麗な所だな。イザベラの所とは大違いだ」

私が思っていたことを、サラッと言った。素直なのか、ただ単に失礼なのか……。

イザベラさんが反論する。

「あの時は忙しくて、掃除をする時間がなかっただけです~!」

エルロアさんは、「はいはい」と言わんばかりの表情だ。

 「そんなことより、お前に仕事を依頼した貴族が誰か、言う気になったか?」

「……言えませんよ。言ったら多分、殺されます……」

イザベラさんは、着ているローブのフードを目深に被り、店内をキョロキョロと見る。

しかし、怪しい人はいない。いや、怪しいと言えば皆怪しく見えるのだが、その心理は

皆同じで、疑い出したら切りがない。

 エルロアさんは、首を横に振ると、今度は私の方を見て言う。

「ところで、ここに何を買いに来たんだ?」

「はい。上級の悪魔や魔物を相手にする可能性があるので、準備しておこうかと」

 私はそう言って、イザベラさんの所で買うはずだった、チョークと土の魔術石三個を

取る。それと昨日使った金の魔術石三個も取った。そして最後にもうひとつ……。

 それを見て、エルロアさんが言う。

「それはなんだ?」

「これは上級封印石です。討伐が難しくても封印してしまえばいいと思って……。これ

があれば、上級モンスターを封印できます」

 エルロアは「ほう」と言うと、イザベラの方を見る。

「……わ、私だって知ってますよ。失礼な」

「そういうことにしといてやろう」

 エルロアさんとイザベラさんは、何か言い合いを始めた。もしかしたら二人は、意外

と気が合うのかもしれない。私はそんなことを思いつつ、上級封印石を念の為二つ取り、

奥のカウンターで清算を済ませることにした。


 ――再び馬車の中。

 これから私達はヨーグ魔道具店に向かう。召喚石取引の痕跡が何かないか探す為だ。

 エルロアさんとイザベラさんは、馬車で移動中、ウィリアム魔道具店での言い争いを、

未だに続けていた。

 エルロアさんは、

「そもそも優秀な魔術師なら、魔石に対する最低限の知識くらい持っているものじゃな

いか? この私の様に。そもそもあんな裏通りに店を構えたりしている時点で、平凡な

のは、疑いようがない事実なのではないか? な、セレスティアよ」と、主張している。

それに対してイザベラさんは、

「私はミスティアベル学園の出身で、実力も学力も折り紙付きなんです。しかし世の中

年功序列という悪しき風習がありまして、実力があっても端に追いやられるんですよ。

この私の様に。ね、セレスティアちゃん」、だそうだ。

 つまり、二人とも私の方が知識があると主張しているのだ。

 そこで私は、寝たふりをしている肩のアデルを指差し、二人に訊いてみた。

「それでは、この竜の種類を当ててみて下さい」

 二人は考える。最初に答えたのはエルロアさんだった。

「魔法使いが連れている竜なら、きっと……バハムートとかだろ」

「ハズレです。物語などの影響で、バハムートは竜と認識されていることが多いですが、

本来のバハムートは巨大な魚です」

「そ……そうか……」

エルロアさん脱落。

 次にイザベラさんが答えた。

「白いから、白竜でしょ?」

「それもハズレです。白竜はそもそも白蛇が大きくなった姿なので、違います」

「そ……そうなんだ……何かヒントちょうだいよ」

「ヒントですか……そうですね……普通のドラゴンより意思疎通が楽なことですね」

 私がヒントを出すと、二人は再び考える。しかし答えを言う前に、馬車は止まり、御

者のエイハムさんが言う。

「着きましたよ」


 ――ヨーグ魔道具店前。

 半壊し、所々黒く焼けた魔道具店は、昨日の内に、衛兵さん達による魔道具の撤去作

業等が行われ、一階部分は、棚以外殆ど何も残っていない。二階部分は居住空間になっ

ているみたいだが、そこも三分の一程焼けていた。

 その光景を見るなり、イザベラさんは二階に駆け上がって行った。エイハムさんの、

「一階は絶妙なバランスで立っているので、二階に上がると危ないですよー!」と言う

声も聞かずに……。

 エルロアさんもその光景を見て言う。

「改めて見ても酷いな。……さて、まずは何から調べたものか……」

 調べるのは二つ。ひとつは行商人のハンズという人物。こちらはエルロアさんが部下

の方に頼んで、アークラード城下町にある宿泊場所の名簿を調べて貰っているらしい。

 そしてもうひとつは、黒いロングコートのフードを被った男性だ。しかしこの裏通り

には、人通りが少なく、情報を聞けそうな人はいない。

 エルロアさんは近辺の家のドアを叩いている。しかし、どの家からも人の気配を感じ

られない。如何やら空き家らしい。

 私は何か手がないか考える。しかしこの近辺には人の住んでいる様子がなく、情報を

訊き出せそうにない。焼け落ちたヨーグ魔道具店のも、最早手に入る手がかりはないだ

ろう。一体、何処に手がかりがあるというのだろうか……。

 その時私の目の前に、あの時追いかけていた猫が、歩いているのが見えた。猫はその

ままヨーグ魔道具店の隣の、空き家前に置いてある樽に飛び乗り、胡坐をかいて座った。

 ……そうだ、いいこと考えた。この猫さんに話を訊いてみよう。

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