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動く絵画

 階段を上り、ドアを開けると、床に敷かれたレッドカーペットの左右にメイドさんが

六人と執事さんが二人立っていた。そして「お帰りなさいませ」と皆一斉に頭を下げる。

 ウェインさんが答える。

「ただいま。早速だが……グラン」

「はい」

銀髪で若い執事さんが返事をした。ウェインさんは私とカンヤさんを指して言う。

「こちら、セレスティア様とカンヤ様だ。帰り道で魔物に襲われたところを助けてくだ

さったんだ。昼食前に客室まで案内してくれないか」

「了解しました。こちらへどうぞ」

 私とカンヤさんはグランさんの案内で客室へ向かった。

「荷物お持ちしましょうか?」と聞かれたが、ショルダーバッグしかないのでお断りし

た。

 客室は入り口正面の左右にある階段を上がり、左側の通路を進んでさらに左へ。そし

て右へ曲がったら左の部屋が客間だ。

 グランさんに促され室内へ。装飾された木のドアを開けると床には高価そうなダーク

ブラウンの絨毯。天井にはシャンデリア。戸棚の中には高そうなコップやポットなど、

いかにも貴族のお屋敷といった高級感がある客間だ。

 部屋を入ってすぐ目の前にテーブルがあり、それを挟むように左右にソファーがある。

正面奥は窓があり、カーテンが掛かっている。色はやはりダークブラウン。窓の左右に

ベッド。そのさらに左右の奥には小さな棚と机が置いてある。

 絵画が飾られてある壁の色はやっぱりダークブラウン。つまり、全体的にシックな雰

囲気の部屋だ。

 グランさんが言う。

「どうぞお寛ぎください。今、紅茶を淹れますね」

「ありがとうございます」

 客室入ってすぐ左に腰位の高さの棚があるのだが、その上にランプの様な物が置いて

ある。これは魔道具のひとつで、中に火の魔導石を入れてお湯を沸かしたりできる。わ

かりやすく言うと、キャンプ用のシングルバーナーだ。グランさんはそれを使い、お湯

を沸かす。水は水の魔術石から出したものだ。

 私は入り口から入って右側にある帽子掛けに魔女帽子を掛け、右側のベッドにショル

ダーバッグを置いた。カンヤさんはソファーに座る。

 紅茶を淹れてくれている間、グランさんは簡単な自己紹介をしてくれた。

 彼、グラン・ラングレンさんはここで働き始めて二年。現在十八歳。ベネオス出身だ

そうだ。

 グランさんの話によると、ここで働いているメイドさんは六人。執事さんはグランさ

ん含めて二人。シェフが三人。御者さんが一人。庭師が一人。傭兵さんは二人いるそう

だ。庭師はローレンさん、傭兵さんはザックさんとミシェルさんのことだろう。

 グランさんは紅茶を淹れ終え「どうぞ」とテーブルの上に置いた。そして、

「昼食の用意ができましたらお呼びいたします」と部屋を出て行った。

 カンヤさんとソファーに座って紅茶を楽しむ。

「うん、美味しい」と私が言うと、私の横から声が聞こえて来た。

「うん、美味しいじゃない。なんで言われるままに招待されてんだ」

今まで黙っていたアデルは呆れるように言った。

「し、仕方がなかったのよ。まぁ、結果的にハンズ・ブランクの情報を得られそうだし、

良かったじゃない」

私がそう言うと、アデルはため息をついた。

「そういうことにしといてやろう。ガルターブとの合流はどうする?」

「ガルターブさんなら大丈夫……多分」

「お前な……」

 私とアデルが不毛な話をしていると、カンヤさんが私の背後を指差して言った。

「あの……あれは何でしょう?」

私とアデルは「ん?」と振り返り、カンヤさんが指差した方向を見た。カンヤさんが指

差した、私とアデルがいるソファーのうしろ側の壁、そこには一枚の絵画が飾られてい

た。その絵画には一人の若い綺麗な女性が椅子に座っている絵だった。黒髪で、長い髪

を三つ編みにして頭の上で纏める、クラウンブレイド(王冠編み)という髪型にしてい

る。

 服装はピンク色の可愛らしく上品なドレスを着ている。

 背景は茶色い壁。それと窓があり、外は青空と白い雲が顔を覗かせている。

 女性の横には小さな机があり、机の上にはティーポットとカップ、その下にソーサー

が置かれているのだが、ティーポットとカップ、ソーサーには絵が描かれている。しか

もかなり細かく描かれている。

 おそらくこの絵は相当高価な代物だろう。芸術に関してはあまり詳しくはないが、何

となくそう思った。

「高価そうな絵だね」

しかし、その返事はカンヤさんの期待した返事とは違ったようだ。

「いえ、違うんです。その絵さっき……動いたんです」

「動いた?」

 私は再び絵画を見る。言われてみると動いている……ような……ないような……。あ

れ? 窓の外の白い雲が動いている……ような……ないような……。

 カンヤさんの気のせいかもと思い始めた時だった。絵画の中の女性が動いた。それは

気のせいでは済まされないほどに。

 絵画の中の女性はカップを取り、飲んだ。そしてカップを戻した後、こちらを見て

ウィンクしたのである。これはいったいどういうことなのだろうか。

 カンヤさんは少し興奮気味に「ほら! 今動きましたよね!」と言った。そんな中、

私はその絵画の正体に心当たりがあった。

「これってもしかして……」

 私は立ち上がり、絵画に近づいて観察した。しかし目当てのモノは見当たらない。そ

こに昼食の知らせをしに来てくれたメイドさんがやって来た。

 ドアを二回ノックして開けたメイドさんは黒髪で長い髪を三つ編みにした、ご年配の

方だ。

「昼食の準備が整いましたので、こちらへどうぞ」と言うのを言い終わったタイミング

で、私はメイドさんに訊いた。

「すいません、ひとつ訊きたいんですけど」

「はい、何でしょう」

私は目の前に飾られてある絵画を指差して訊いた。

「この絵って、アシュレイ・サンドレアスさんの絵ですか?」

メイドさんは微笑む。

「はい。よく分かりましたね。絵、お好きなんですか」

「いえ、芸術にはあまり詳しくありません」

 ではなんで? と言いたそうな顔をメイドさんとカンヤさんにされたので、私は説明

した。

「この絵を描いたアシュレイ・サンドレアスさんという人物は五大魔導芸術家と言われ

ている人物なんです。前に一度お会いしたことがありますし、他の作品を観たことが

あったので、知っていたんです。アシュレイさんの絵は特殊な魔術により意思を持つと

言われています」

 絵を見ると女性の方は今、本を読んでいる。タイトルは……小さくてよく見えない。

 カンヤさんもメイドさんもまじまじと絵を見る。絵の中の女性は頁を捲り、読書を続

けている。

 カンヤさんが言う。

「動く絵って、初めて見ました」

「在るところには在るらしいですよ。でも、ここまで色んな動きをする絵はそうそうな

いはずです」

メイドさんが言う。

「しかし、こんなにまじまじと見られていたら、落ち着かなさそうですね」

「確かにそうですね」

しかし、絵の中の彼女は何事もないように悠然と本を読んでいる。

 私はカンヤさんとメイドさんを交互に見、「そろそろ行きましょうか」と声を掛けた。

なぜならアデルが「早くしろ」と言わんばかりに、私の肩に留まったからだ。

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