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吸血蜘蛛と馬車

 そこはとあるお屋敷の一室。広い部屋にある机に初老の男性が向かい、ペンを走らせ

ている。

 初老の男性が執筆している後ろには窓があり、その窓の閉められているカーテンの外

にひとつの影が現れた。それに気がづいた初老の男性は手を止め、声をかける。

「お前か。首尾はどうだ?」

「無事に届け終わった」

「そうか。近い内に報酬を送ろう。いつもの方法でな」

「分かった……」

影はそう言うと、消えていった。

 初老の男性は頭を抱えた。

「私はいったいどうすれば……」

彼はそう呟き、再びペンを走らせ始めた。


 サニードリーを発って四日ほど経ったころ、私とカンヤさん、そして、いつの間にか

戻って来たアデルは箒に乗って、ベネオスへ向かい飛んでいた。

 現在の時刻は朝十時。このままのペースで行けばお昼ごろにはベネオスに到着するだ

ろう。

 途中街道が見えたので、その道に沿って飛んでいると、何かが街道にいるのが見えた。

更に近づいてみると、馬車が一台街道にいるのが分かった。そしてその馬車の近くには

武装した人が二人、剣を構えて立っている。対峙しているのは……。

 カンヤさんが私に言った。

「襲われているみたいですよ。あれは……蜘蛛ですかね……」

私は飛ぶ速度を落としながら答えた。

「あれはブラッドスパイダーといって。別名、吸血蜘蛛という魔物です。人の血を吸う

んですよ。それと足が鋭く尖っていて、大変危険です。全部で……四体いますね。加勢

しましょう」

 私は剣を構えている二人の後ろ側、馬車の前に降り、箒から降りた。

 剣を構えている一人は髭を生やした屈強そうな男性で、鎧を着ている。もう一人は若

い男性で鎧を着ているが、鎧で守られていない肩の所から流血をしている。ブラッドス

パイダーにやられたのだろう。

 ブラッドスパイダーの八本の足は全て尖っていて、大きさは人間と同じくらいと、な

かなかの大きさだ。しかし、四体の内一体は既に瀕死状態だ。

 私が「加勢します」と屈強そうな男性に伝えると、「た……助かる」と返事が聞こえ

た。

 私は魔銃を取り出しマガジンを挿入。挿入したマガジンは火の魔術石を加工したマガ

ジンだ。虫系の魔物は大概火に弱い。

 私はショルダーバッグから救急箱を取り出し、カンヤさんに渡た。そして、流血して

いる男性と一緒に後方へ下がってもらった。

 私はブラッドスパイダーに銃口を向け、三回引き金を引いた。魔銃から放たれた三発

の火の玉がブラッドスパイダーに向かって飛んで行き、直撃。ブラッドスパイダーは火

だるまになり、燃える。しかし、それでもブラッドスパイダーは私目掛けて向かって来

た。

 ブラッドスパイダーは私の目の前まで来ると、その鋭く尖った足を振り上げ、振り下

ろしてきた。私はその足をステッキで払う。そして、体勢を崩したブラッドスパイダー

にステッキの仕込み刀を抜き、一閃。顔面を真っ二つにされたブラッドスパイダーは、

そのまま崩れ落ち、動かなくなった。

 私はそのままもう一体の方のブラッドスパイダーを確認する。すると、もう一体のブ

ラッドスパイダーは既にアデルの白炎に燃やされ、体の半分は溶けていた。

 屈強そうな男性の方はまだブラッドスパイダーと戦っている。手に持つ剣でうまいこ

とブラッドスパイダーの足を捌いている。

 屈強そうな男性は後方に飛び、ブラッドスパイダーと距離をとった。援護するならこ

のタイミングだろう。私は魔術銃を構え、引き金を引いた。

 ……あっ。弾が出ない。どうやら弾切れのようだ。

 私はステッキの方を構え、「火玉よ! 舞い踊れ!」と唱える。ステッキから放たれ

た火の玉がブラッドスパイダーを包み込み、激しく燃え上がる。やがてブラッドスパイ

ダーは真っ黒い炭となり、完全に動かなくなった。

 最後の一体、瀕死のブラッドスパイダーはまだ息があるが、胴体に剣で刺したような

傷が二か所あり、脅威にはならないだろう。

私はその最後の一体にファイアーボールを飛ばし、死体の処理をした。また、私が最初

に仕込み刀で真っ二つにしたブラッドスパイダーにもファイアーボールを飛ばして、同

じく死体の処理をした。これで脅威はなくなったようだ。

 屈強そうな男性が剣を収めてこちらに向かって来る。

「助かったぜ。お嬢さん。強いな」

「いえ、ご無事で何よりです。それより……」

 私はカンヤさんの方を見た。カンヤさんは肩をケガした若い男性の手当をしている。

 近づいて状況を訊いてみた。

「傷の具合はどうですか?」

「はい。傷が深いせいか、血が止まらなくて……」

「分かりました。治癒魔術を試してみましょう」

私はステッキを構え、唱える。

「彼の者に癒しを」

若い男性の傷口が淡い光に包まる。しかし、傷は完全に塞がることはなかった。だが止

血はどうやらできたようだ。顔色も悪くないし、おそらく大丈夫だろう。若い男性は

「ありがとうございます」と私にお礼を言った。

 私が治癒魔術をしている間、屈強そうな男性は馬車の中の誰かと話をしていた。そし

て、馬車の中から一人の男性が出て来た。その人物は白いスーツを着ていて、髪は七三

分けにした男性。左手の薬指と中指に高価そうな指輪をしている。おそらく貴族だろう。

鼻の下から伸びたちょび髭がちょっと気になる。

 白いスーツを着た男性は右手をお腹の前に、左手を背中へやり、いかにも貴族らしい

お辞儀をした。ちなみに、このお辞儀の仕方をボウ・アンド・スクレープと言うらしい。

「危ないところを助けていただき、有難う御座います。して、彼の容体は?」

傷の手当をしているカンヤさんの代わりに私は答えた。

「はい。止血はしましたので問題ないでしょう。応急処置はしていますが、念の為に病

院へ行かれた方がいいでしょう」

「そうですか。何から何まで有難う御座います。ところで旅の方、これからどちらへ向

かわれるご予定で?」

「ベネオスへ向かっている途中です」

「そうでしたか。実は我々もベネオスへ帰る途中なのです。よろしければご一緒しませ

んか? 今回のお礼にぜひ我が家へ」

 有難い話だが、ガルターブさんと宿屋で合流することになっている。丁重にお断りす

ることにしよう。

「申し訳ありません。私たちにはどうしても急ぎ行かなければならない事情が御座いま

すので、これで失礼……」

 その瞬間、右手と左手がすこし重くなった。見ると右手に男の子、左手には女の子が

私の手を両手で握っていた。

「え~、来ないの~?」

「おいでよおいでよ~」

 私は察した。これは逃げられないや~つだと……。

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