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アークラードからの手紙

 ホテルの入口前に到着し、箒をショルダーバッグに仕舞う。するとホテルの中から警

備隊の人たちが出て来て、私とカンヤさんは囲まれてしまった。その中には、アルクさ

んと副団長のエドガーさんも見えた。

 エドガーさんは葉巻に火を点け、煙を吐いた。

「只者ではないと思ってはいたが、まさか指名手配犯を匿っているとわな」

続けてアルクさんが言う。

「セレスティアさん、すいません。指名手配犯は逮捕。そして指名手配犯を匿っていた

罪でセレスティアさんも逮捕しなきゃいけないんです。大人しく付いて来てくれません

か?」

げっ、ばれた。なんとかしなければ……。

 相手の数はおよそ二十人ほど。私は大きく息を吸った。

 エドガーさんの「確保!」という声を合図に、二十人の警備隊が一斉に襲い掛かって

来た。

 私は魔銃を抜き、ステッキを構えた。

「カンヤさん伏せて!」

「え!? あ、はい!」

私は体を横に回転させながら魔銃とステッキから魔術を放った。放った魔術は――。

「地よ! 絡み付け!」

この魔術は魔人狼と戦った時にも使った、泥の魔術だ。

 ステッキから四発、魔銃から三発。一発で三人拘束できる計算だ。これで全員拘束で

きるはず……。しかし、一人だけ回避した人物がいた。その人物は警備隊の副隊長、エ

ドガーさんだった。

 エドガーさんは跳躍し泥を回避すると、私の目の前に着地した。そして腰の剣を鞘を

抜かずに振り被る。

「悪いが、眠ってもらうぜ!」

「我に加護を!」

剣が振り下ろされる。私はそれをステッキで受け止めた。

「チッ! 強化魔術か!」

そう、これは強化魔術。しかしなんという馬鹿力だ。気絶どころか、危うくぺちゃんこ

になるところだった。

 エドガーさんはバックステップ。距離を取った。葉巻の灰が落ちる。

「……やはり只者じゃねーな」

彼は剣を構える。

 周りの警備隊たちから「なんだこりゃ!?」とか「う、動けん!」とか聞こえる中、

私は考えた。やはりここは隙を見て逃げるしかない。

 私はステッキと魔銃を構える。エドガーさん息を吸った。そしてエドガーさんが今、

正に向かって来ようとした時、何処からか彼を呼ぶ声が聞こえてきた。

「副隊長ー! 副隊長ー!」

エドガーさんは横目にその方向を見た。

「シンディーか。なんだこんな時に」

そこに居たのは金髪で長い髪の女の人。サニードリーの警備隊本部で記録係をしていた

女性だ。シンディーという名前らしい。

 彼女は駆け付けて来るなり手に持っていた手紙をエドガーさんに見せた。

「副隊長大変です! これを……」

「あ? なんだよ……」

エドガーさんは手紙を取り、読んだ。そして少しすると肩を震わせ、手紙を地面に叩き

付け、シンディーさんを睨んだ。

「ふざけんな! こりゃーどーゆーことだ!」

シンディーさんは両手を振り、困った顔をした。

「いえ、私に言われましても……」

 カンヤさんが私に耳打ちした。

「何があったんでしょう?」

私は「さぁ……」とだけ答えた。

 その直後、何かが地面を強く打つ音が響き、地面が少し揺れた。すると周りの警備隊

に向かって放った泥が粉々になり、動けなくなった警備員たちは解放された。音のした

方向を見ると、そこには一人の人物が立っていた。

「人通りが少ない路地とはいえ、こんな道の真ん中で騒動を起こすとは感心しないな」

エドガーさんがその人物を見て言った。

「隊長!?」

隊長……つまりあの人がサニードリー警備隊のトップ。

 隊長さんは甚平の上に浴衣を着ていて、左手を浴衣の中に突っ込んでいる。右手には

刀を持っている。先程の音の正体はその刀だろう。髪は長く顔は整った、いわゆるイケ

メンさんだ。

 隊長さんは私に向かって言った。

「初めまして。私はサニードリー警備隊の隊長、ラカンという者だ。部下達がすまない

ことをしたね」

「あ、いえ……」

何があったか訊こうと思ったが、エドガーさんがそれを遮る。

「隊長! こりゃどーゆーことだ!」

「そこに書いている通りだよ。上からの御達しだ。分かったらとっとと引き上げるぞ」

「いやいや、何も分からねーよ!」

 事態が今一呑み込めない。私は「ちょっと失礼」とエドガーさんが叩き付けた手紙を

拾い上げた。そこにはこう書かれていた。


 カンヤ・カゲイノエ


 以上の者の指名手配を取り消す。


                    ――エルロア・シャーロット


 手紙にはそれだけ書かれていた。どうやら私の手紙は無事にエルロアさんの所に届い

たようだ。

 私はエルロアさんに手紙を送っていた。それはカンヤさんがこのまま指名手配を受け

ているのが可哀そうだったからだ。それとこのままだと動きづらいのも理由の一つだ。

 私が手紙を読み終わるのを見て、ラカンさんが言う。

「実はもう一枚手紙を預かっていてね」

彼はそう言い懐から一枚の手紙を出して私に差し出した。手紙を受け取り差出人を見て

みると、エルロアさんの名前が書いてあった。宛先は私だ。封を開けて中を確認してみ

る。


 セレスティアへ


 手紙有難う。カンヤ・カゲイノエに関しては指名手配を一時的に取り消すことにした。

しかしガルターブは元殺し屋。指名手配を解くことはできない。

 すまないが後のことは任せる。何かあったら私を訪ねて来てくれ。


                    ――エルロア・シャーロット


 手紙にはそう書いてあった。なんとも簡素な文章だ。しかしエルロアさんらしい。

 私が手紙を読み終えると、ラカンさんが言った。

「では、私たちはこれで失礼させてもらうよ。帰るぞお前たち」

しかしエドガーさんが食ってかかる。

「待ってくれよ隊長! 納得するように説明してくれ!」

「帰ったら説明するよ。それともこのまま彼女と戦うかい? 間違いなくキミは負ける

と思うがね」

「何っ!」

エドガーさんはまるで「そんなはずがない」と言いたそうな雰囲気だ。しかしラカンさ

んは言った。

「お前、『星渡りの魔女』を知ってるか?」

「? なんだそりゃ」

「二年前に魔王を倒した魔女のことだ」

「魔王を倒した魔女がいるのは聞いたことはあるが……」

ラカンさんは私を見た。

「彼女が『星渡りの魔女』だ」

エドガーさんは両手を広げて反論した。

「いやいやいや、魔王を倒した魔女がこんなガキなはずないだろうが!」

ラカンさんは平然と言った。

「彼女は自分で力を抑えている。そんなことにも気がつかないお前じゃ勝てるはずがな

い。分かったらとっとと帰るぞ」

 ラカンさんは私を再び見て言った。

「それでは失礼いたします。良い旅を」

ラカンさんは立ち去ろうとし、背を向けた。私は頭を下げた。

「お手紙、届けてくださってありがとうございました」

 警備隊の方々は立ち去って行った。エドガーさん渋い顔をしていたが……。

 エドガーさんは『良い旅を』と言った。つまりもうサニードリーから旅立ってもいい

ということだろう。ガルターブさんが待っている。私とカンヤさんは次の日、早速ベネ

オスへと出発することにした。

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