分かれ道の先へ
動いた石の壁に延びる通路を進む。
と、ここで前回の答え合わせだ。
カンヤさんが言う。
「私、思い出したんです。あの模様の入った剣の持ち主はロマリオ族の英雄、アーク
ラードの物です」
私は訊いた。
「それじゃアークラードという国の名前はそこから?」
「はい。昔この地に魔族が攻めて来て、ロマリオ族と戦争になったんです。その時武功
を立てたのがアークラード言われる人物で、後にロマリオ族の英雄として歴史に名を遺
した人物です。その後建国する時に国名をアークラード、首都をロマリオとしたんです。
それと、王家の長男をアークラードと名付ける決まりがあります」
なるほど、そんな歴史があったのか。
そこでユーリ君が訊く。
「あれ? でも、二代目国王ってクライブとかいう名前ではなかったでしたっけ?」
カンヤさんが答えた。
「二代目は次男なんです。長男が病死されたので……」
「そうだったんですね。勉強になりました」
そんなこんな話している内にまた開けた場所に出た。子どもたちと一緒に部屋の中を
見て回ると、部屋の壁には模様が入っているのが分かった。また壁には所々燭台も見ら
れる。それと部屋の左側と右側にそれぞれドアがあるのも分かった。しかしこの木造の
ドアは朽ちたのか破壊されたのか、ドアの中央部分が大きく開いていて、もはやドアと
しての機能はない。それと前のふたつの部屋のように謎解き的なものはなさそうだ。
カンヤさんが部屋の模様を見て言った。
「この模様はロマリオ族の旗の模様です。やはり、ここはロマリオ族の遺跡に違いあり
ません」
なるほど。しかしなぜこんな遺跡を? 謎解き的なものがあるのなら奥に何かを保管す
るためとか? それとも避難所? 今のところ、まったく分からない。
フーカちゃんの声がする。
「どっちに進むの~?」
どうやらルード君に訊いたようだ。ルード君は答える。
「こうゆー時はこうするんだよ」
見ると、ルード君は腰のベルト提げている木刀を抜き、剣を剣先を下にして床に立てる。
そしてそのまま手を離した。木刀が倒れる。倒れた方向は……。
「左だな。よし、左に進むぞ!」
ルード君がそう言うとユーリ君とフーカちゃんは「おー!」と言い、そのまま三人の子
どもたちは左側のドアの真ん中を跨いで行った。もちろん私とカンヤさんもその後を追
う。
ドアを跨ぐとそこは今までの道と違い坑道の様になっていた。道幅は二メートルほど
あり、道の左右と天井には抗木で支えられていた。また道は斜めではなく真っ直ぐだ。
子どもたちは横並びになり、わたしとカンヤさんはその後を歩く。暫く歩くと石の壁
が見えてきた。
ルード君は肩を落とし、落胆した。
「なんだ、行き止まりかよ……」
行き止まり? にしてはなんか違和感がある。何か人の手が加えられているように感
じる……。
私はその壁をステッキで突っついてみたり壁に耳を当ててみたいしたが、特に空洞音
が聴こえたりはしなかった。
私の様子を見て、フーカちゃんが「何してるの?」と近寄って来た。
「何か仕掛けがあるのかなと思って」
「そうなの!? 私も探す~!」
フーカちゃんはそう言うと、壁を摩ったり叩いたりし始めた。そしてそれを見ていた
ルード君が「俺たちもやるぞ!」とユーリ君とカンヤさんに向かって言い、共に壁を
ペタペタし始めた。
暫くみんなで捜索していると、フーカちゃんが言った。
「ティアお姉ちゃん、ここに何かあるよ~」
フーカちゃんの方を見ると、正面の壁の右側にある木の支柱の所に居た。近付くと
「ここ~」と指を差す。
見た目は普通の支柱だが、フーカちゃんが指差す支柱の下部、地面から三十センチほ
ど上の所を見ると、そこには縦横十センチほどの小さな扉があるのが分かった。
「よく分かったねフーカちゃん」
私が頭を撫でると「えへへ~っ」とフーカちゃんは照れ笑いをした。かわいい。
さて、肝心の小さな扉だが、開けて中を確認してみると、そこには小さな輝く石がは
め込まれていた。これは魔導宝石の一種で、魔力をそそぐことによって他の魔石や魔導
宝石を作動させる効果がある。おそらくこの魔導宝石に魔力をそそぎ込めば何か仕掛け
が作動するはずだ。
私は手をかざし、魔力をそそぎこんだ。すると地響きと共に石の壁は下から上へせり
上がり、奥へ進めるようになった。しかしその瞬間、ユーリ君が
「う、うわわわああああぁぁぁーーー!!」と悲鳴を発し、尻餅をつくのが見えた。
私はユーリ君たちがいる所へフーカちゃんと一緒に戻る。するとルード君は開いた口
が塞がらず、カンヤさんも口を覆い、一点を見詰めていた。
フーカちゃんが「どうしたの?」と声を掛けていると、ルード君が開いた石の壁の奥
を指差した。私とフーカちゃんはその指が差した方を見る。するとフーカちゃんも先程
のユーリ君同様、「きゃああああぁぁぁーーー!!!」と悲鳴を上げた。
皆が見たもの、悲鳴の正体は、石の壁があった所を越えたすぐ右側、そこにある白骨
死体だった。
私はその白骨死体に近づき、しゃがんでよく観察してみた。
白骨死体は鎧を着ている。そしてその鎧には先程の部屋の壁に描かれていた模様と同
じようなマークが描かれている。おそらくロマリオ族の兵士に支給される装備なのだろ
う。兜は脱げて地面に転がっている。剣は腰の鞘に収まったままだ。そしてこの白骨死
体の最も目立つ所、それは鎧の腹部に開いた大穴。つまりこの白骨死体は腹部に攻撃を
受け絶命したと思われる。剣が鞘に収まっていることを考えると、おそらく抵抗する暇
もなく亡くなったのだろう。しかし鎧を着た人の腹部を貫通するほどの攻撃……この一
撃を放った者はただ者ではないだろう。
次にこの白骨死体の横にある物なのだが、そこにはレバーがあった。おそらく石の壁
を開閉するためのレバーだろう。
最後にモノクルで魔力の流れを見てみる。流石に何百年、何千年前の魔力の残滓は
残っていないだろう。私たち以外の魔力の残滓はない。
結論、この白骨死体の方は自分を殺した何かをこの石の壁の内側に封じ込めるため、
ここでなくなったのだろう。つまりその何かはまだ内側、この奥に居るに違いない。




