第二の関門 剣の持ち主
石の扉を過ぎ、更に奥へ進む。
洞窟を進みながらユーリ君が私に言った。
「しかし、よく分かりましたね呪文」
フーカちゃんは賛同した。
「本当。ティアお姉ちゃすご~い」
「た……たまたまだよ」
本当にたまたまだった。まさかあんな定番な呪文だったとは思いもしなかった……。
洞窟は更に斜め下へ延びている。道幅はさっきより少し広くなった。
先頭を歩く子どもたちの足取りは軽い。こんな暗くて狭い所で怖くないのだろうか。
これが若さなのか好奇心なのか、それとも両方なのか分からないが、頼もしさを感じる
ほどにその足取りは軽快だ。
暫く進むと少し開けた場所に出た。子どもたちが魔術石を使って辺りを照らす。する
とそこは少し大きな部屋だと分かった。そして……。
ルード君が部屋の奥に進みながら言う。
「なんか壁に書いてあるみたいだな。何々? 『この剣を持つに相応しい者の名を答え
よ』か……」
文字の上に剣が描かれている。それは何も変哲もないただの剣だ。唯一普通の剣と違
う所があるとすれば、鍔の部分に図柄というか、模様が入っている所だろう。その図柄
は『つ』という字を縦にみっつ並べた様な字だ。
ルード君はその剣を見て言った。
「う~ん……どこかで見たことあるような~……」
皆がルード君の所に集まると、フーカちゃんが「はいっ! はいっ!」と大きな声で、
手を上げて言った。
「私分かったよ! 『つ』がみっつでミッツさんよ!」
ルード君は振り返って怒り出した。
「いや、誰だよ!」
「家の近所の八百屋さんのおばあさんだよ」
「なんで八百屋のおばあさんが剣持ってんだよ! 元冒険者か何かかよ!」
「きっとそうだよ。ルード君頭いいね」
フーカちゃんは何やら感心している。
「そんなわけあるかー!」
ルード君がゼェゼェ肩で息をしている中、ユーリ君が言った。
「そうですよフーカちゃん。この洞窟が出来たのはおそらくその八百屋のおばあさんが
生まれる前の事でしょうから、八百屋のおばあさんではありません。きっと答えは名の
ある英雄だと思います。そこから導き出される答えは……」
ルード君とフーカちゃんは息を飲んだ。
「答えは……?」
ユーリ君の眼鏡が光輝く。
「その答えは……ヒデオですよ。英雄と書いてヒデオって読むでしょ?」
ルード君とフーカちゃんは言った。
「しょうもな」
この流れだと次はルード君かな……と私は思っていたが、違った。話始めたのはアデ
ルだった。
「いいかお前ら、ここはおそらくロマリオ族の遺跡か何かだ。そうだとすると、この剣
の持ち主はロマリオ族の族長のことだ」
ユーリ君は納得した。
「なるほど、確かにそうですね。して、その族長の名前は……?」
「その名前はな……」
「その名前は……?」
子どもたちは息を飲む。だがこの流れも前にやった。
「知らん。ロマリオ族なんてさっきカンヤが話してたので初めて知ったし」
子どもたちはズコッった。やっぱりね。
フーカちゃんは立ち上がり、言う。
「ちょっとアデルちゃん……あっ……ということは、カンヤお姉ちゃんなら分かるん
じゃ……!」
ルード君は起き上がり、フーカちゃんに賛同した。
「た、確かに……!」
ユーリ君も立ち上がり、賛同する。
「なるほど、確かにそうですね!」
カンヤさんは期待の眼差しを子どもたちから向けられる。しかし、カンヤは否定した。
「いえ、さすがに私もそこまでは知らなくて……この剣も初めて見ましたし……」
ルード君が怒り出した。
「なんでそこで諦めるんだよ! 諦めんなよ! お米食べろ!」
「え? あっ……え? お米? わ……分かりました、頑張ってみます……」
カンヤさんはよく分からない激励に困惑しつつも、剣の持ち主ついて思考した。そし
て導き出された答えは……。
「分かりました! シュウゾウ! シュウゾウですよ!
今頭にビビッと来たんです!」
カンヤさんはドヤ顔で、なぜかとても自信満々に言った。そんなカンヤさんにルード君
は言った。
「あっ、もういいっす」
カンヤさんは隅っこで泣き始めた。カンヤさんは悪くないよ。良く頑張ったよ。
フーカちゃんは私に向かって言った。
「ティアお姉ちゃんは分かる~?」
「う~ん、何かな~。私が思いつくのだと『ラティーア・ロンドベルト』とか……後は
『ハールトマン・ヴェラトリウス』とかしか思いつかないな~」
フーカちゃんはきょとんとした表情をした。
「誰それ~?」
私の代わりにユーリ君が答えた。
「『ラティーア・ロンドベルト』は世界で初めて箒で世界一周し、世界地図を作った大
魔法使いですね。最強の魔法剣を持っていたとか。『ハールトマン・ヴェラトリウス』
は吸血鬼族の王で、彼が持つ剣で切られると体中の血を吸い尽くすっていう伝説がある
んですよ」
「へ~。ユーリ君もティアお姉ちゃんも物知りさんだね~」
しかし、どうやら不正解のようだ。
そこでどこからともなく「フッフッフッ……」と言う声が聞えてきた。
声の主は……ルード君だ。
「分かった……分かってしまった。やはり俺は天才なのかもしれない」
皆はルード君の方を向いた。カンヤさんもいつの間にか戻って来た。
フーカちゃんが「本当?」と訊くと、ルード君は言った。
「ああっ。いいかお前ら。ここはアークラードという国の……」
石の壁の一部が重い音と共に動き、通路が現れた。
「今俺が喋ってたじゃん!」




