最初の関門 石の扉
「光よ、我が道を照らせ」
私は魔術を唱えた。光の玉が頭上に現れ辺りを照らす。
洞窟は斜面になって延びている。道幅は大人二人分くらいと中々狭い。
暫く進むと少し開けた場所に着いた。そして目の前には石で出来た扉が見えた。
先頭を歩いていたルード君が扉を観察する。
「なんか書いてあるな。『ここを通りたくば呪文を唱えよ』か……」
フーカちゃんがルード君に訊く。
「ジュモンってな~に?」
ルード君はフーカちゃんの方に振り向き、答えた。
「合言葉みたいなものさ。それが鍵になるんだよ」
「合言葉? 合言葉……合言葉……分かった!」
「おお! 本当か!?」
フーカちゃんは言った。
「『今日も綺麗だよ』」
……え? もしかしてそれが合言葉? どちらかと言うと愛言葉なのでは?
ドヤ顔で言ったフーカちゃんは、他全員の固まった顔を見て言った。
「違うの~? パパがよくママに言ってるよ?」
ルード君は怒り始めた。
「ちげーよ! 合言葉っていうのはそーゆーのじゃないの! 誰がお前んちの夫婦仲の
話を呪文にするんだよ!」
ルード君とは対照的に、冷静にユーリ君が言う。
「そうですよフーカちゃん。こういうのは分かりやすく、且つ他の人には分かりづらい
ものなんです。つまり正しい呪文は……」
ユーリ君は掛けている眼鏡をクイッとして言った。
「『タンスの下から三段目の引き出しの中』です」
……シーン。
「あれ? おかしいですね……」
ルード君は再び怒り出した。
「ちげぇっつーの! 誰がお前の父ちゃんのへそくりの場所を呪文にするんだよ!」
「母ですが」
「どっちでもいいわ! いいか! 呪文っていうのは脈絡もない仲間内でしか分からな
いもんなの! つまり正しい呪文は……」
ルード君は扉に向かって唱えた。
「トクレセンタボービ!」
最近の若い子、分かんないよそれ。
「あれ? 何も起きない……」
フーカちゃんとユーリ君は怒り出した。
「人ことばっかり文句言って!」
「自分だって分かんないじゃないですか!」
「俺だって頑張ったんだよ! 少しは褒めて伸ばせよ!」
三人が言い争うする中、アデルが言った。
「しょうがない奴らだな。ここはこの俺がビシッと決めてやろう」
フーカちゃんは抱っこしていたアデルを見る。
「アデルちゃん分かるの?」
「ちゃん? ……まぁいい。いいかお前ら、ここはアークラードという国の
サニードリーという町だ。つまり合言葉はこの国や地名の伝承とか伝説になっているも
のが関係している可能性が高い」
ユーリ君が眼鏡をクイる。
「なるほど、一理ありますね。それでそこから導き出される呪文は?」
「それはな……」
「はい……」
「それはな……」
子どもたちは一斉に、唾を飲んだ。
「……知らん」
子どもたちは一斉にコケた。
フーカちゃんがコケながら空をパタパタ飛んでいるアデルに言う。
「ちょっとアデルちゃん、期待してたのに~!」
「俺、アークラード出身じゃないし、知らね」
アデルは悪びれることもなくそう言った。
ここでカンヤさんが参戦だ。彼女は軽く手を上げながら言う。
「よろしいでしょうか? 私はサニードリーではないですけどアークラード国内の出身
ですので、アークラードの歴史もそこそこ知っています」
ルード君は拳を握って言う。
「おおっと! ここで真打登場か!?」
「そんなに期待されると困ってしまいますが……アークラードというのは元々ロマリオ
族という部族が集まって出来た国だそうです。ここがロマリオ族の遺跡か何かだとする
ならば、きっとロマリオ族に関係した呪文だと思います」
アデルが言う。
「ほう。して、その呪文とは?」
「はい、ロマリオ族は独自の言語を話していたそうです。それを加味すると、呪文はお
そらく……」
「おそらく……?」
「おそらく……『コデウウアン』です」
もちろん、扉は微動だにしない。
「あれ? おかしいですね。ロマリオ族に言葉で呪文って意味なんですが……」
アデルは再びフーカちゃんの腕の中に納まりながら言った。
「流石に単純過ぎたな……」
ルード君は項垂れた。
「期待してたのに……ガクッ。ティアさんは何か分からないんですか?」
全員の目が私に向いた。と、言われても私には見当もつかない。
呪文……呪文ねぇ~……。
「開け~ゴマ……なんちゃって」
石の扉は大きな音を立て、開き出した。そんな馬鹿な。




